第7話 勝ち組・負け組

今や定着したこの単語。勝ち組・負け組。私の大嫌いな単語だ。

でも、この単語を考えた人は頭がいいと思う。核心をついている。だから嫌いなんだ。


私なんて典型的な負け組だ。

43歳。独身。無職。貯金ゼロ。借金あり。

ヤバいという言葉をはるかに超えている。

男性の中年ニートは社会問題になっているが、私のような女性の中年ニートはなかなか取り上げられない。切実な問題だ。


今は多様性の時代だ。そんなことくらい誰しもが分かっている。

でも結局、結婚して、子供産んで、一軒家建ててたら一人前の人間で勝ち組なんだ。


地方の地元で友人は全員結婚して、子供も2,3人目だ。一軒家も当たり前。

私が東京から帰省すると集まってくれるが、もう話が合わないのはヒシヒシと10年前以上から感じている。


狭い地方都市では「どこどこの学校が今こんな状態」という話題が多い。とにかく学校の質の話や子供の習い事やそんな話ばかりなのだ。

当たり前の様に子供を連れてくる。

うん、当たり前だ。

集まってくれているだけで感謝しなくはならない。


「E美は凄いよね。東京で一人で働いているんだもん。尊敬するよ。」

本心かどうかは分からない。

そんな子たちじゃないと信じてはいるけれど、どこかでマウンティングされているような気にもなってくる。

バリバリのキャリアウーマンならまだ格好がつくだろう。

でも違う。

無職なのも隠しているし、借金があることも、貯金が全くないことも隠している。

病気のことは正直に言ったが、全く理解していないと思う。


一番大人しかった子が、物凄いイケメンで高身長、高給取りの家族思いの旦那さんと結婚して、専業主婦をしている。家事は苦手で、ご飯もあまり作らない。子供は3人。一生働く気はないそうだ。そして旦那の金で自分の好きな服を買ったと言っていた。5万円。

これぞ、まさに勝ち組だろう。

彼女とは保育園の時からの一番長い付き合いだ。

嫉妬とかそういうことを通り越して尊敬すらしている。


帰省時に集まるこの高校時代のメンバーは皆、一度は地元を出て大学進学をしている。

そしてUターンして就職した子たちだ。


別に私は都会に憧れてなんかいなかった。でも地元に戻るのは嫌だった。

知り合いにそこらじゅうで出くわすという地獄みたいな環境に耐えられなかったのだ。

ただでさえ視線恐怖症の赤面症だ。

でも社交的だった私は顔が広い。それが致命的なのだ。


偶然同級生にでも出くわそうものなら

「元気?今何してるの?」がお決まりの文句。


一から説明するもの面倒くさい。

だから人に会うのも怖い。


出来ることなら帰省なんてしたくないんだ。


私からしたらみんな勝ち組だ。


私は都会の小さな6畳の雀の巣みたいな小さな箱の中で生きている負け組なんだ。


そう、負け組。ニート。

でも、引きこもりじゃないんだ!働きたいんだ!

働く時だってあるんだ!でも、もう色々と無理なんだ。


精神疾患になった時点で負け組なのかもしれない。


一生結婚しないって決めてるし(出来ないだけだが)、一軒家も建てられない。

負け組で十分だよ。


でもね、でもね。

負け組でいいから、普通になりたいんだ。

普通に体を動かしたいんだ。

普通に日光を浴びて、普通の1日を過ごしたいんだ。


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