第74話 うおおおおおおおおおおおおっ!!!

 【side:凛】


 「な…なんですって〜〜〜!!!」


 「驚くことか?俺たちはこのままじゃ全員あの世行きだ。お前らも俺に復讐するまでは死にたくないだろ」 


 「な、何か裏があるのね!そうに決まってる!!!」


 「なら勝手にしろ。どうやら高井はお前から復讐したいらしい。見物ぐらいはしてやるよ」


 「うううううううううう・・・!!!」


 俺は獣のような叫びをあげる凛を説得しながら、高井の後方、屋上につながる唯一の出入り口をちらりと見た。


 ドンドン!

 ドンドン!

 ドンドン!


 鍵のかかった扉の向こうからかすかに音が聞こえる。

 おそらく生徒か教師の誰かだろう。 


 何かをぶつけているが、まだこじ開けるには至らないようだ。

 あてにするのは危険すぎる。


 「なんだなんだ仲間割れかぁ!?先に死にたい奴がいるなら、目の前に来てもらっていいんだぜえ!?」


 高井は相変わらず柵の出入り口を塞いで出てこない。

 出てくると自分も危うくなるからだろう。


 だが、飛び出して襲いかかる可能性も十分にある。




 はぁ。


 …やっぱりこいつと手を組むしかないか。

 

 俺だって本心では死ぬほど嫌だが仕方ない。

 結愛のためだ。  


 断じて凛のためではない!


 「ぐぅぅぅぅうううううぅ…そ、それは…そうだけどぉぉぉぉぉぉおおおおおっ!」


 凛は唸り声をあげて威嚇しているが、迷いの表情を見せている。


 このまま行けば自分の目標は何も達成されない。

 そうなるよりは、俺と生き残る道を選んだ方がはるかにマシだろう。


 もちろん、高井をどうにかするまでだが。


 「ふるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ…」


 思い悩んだ末に、凛は謎のため息をついた。

 もはや人間ではない何かである。


 そしてー、







 「…ったわよ」


 「あ?なんだって。聞こえないぞ」


 「分かったわよ!!!あんたに協力する!!!少しだけよ!!!」


 「良いだろう。もちろん、お前のことは死ぬほど嫌いだし、復讐をやめるつもりはない」


 「私もよ!!!」


 言い争っていると、俺の背中からひょこりと結愛が顔を出す。


 「…凛さん」


 「…何よ」


 「私は、まだ迷ってます。もしかしたら、凛さんにも善の心が0.00001%あるんじゃないかって…」


 「…」


 「この戦いが終わったら…凛さんの心を、しっかりと見定めます。この目で」


 「…勝手になさいアバズレ」


 「決まりだな」


 あまりに脆く即席の組み合わせ。

 おそらくすぐに壊れる可能性が大。


 何にせよ話は決まった。


 ならばー、




 「とりあえず、逃げるぞ!」


 生き残るための行動を開始しよう。



 ****



 「ちっ!引きこもりかテメェら!さっさと俺のところに来い!ブッ刺してやるよ!」


 数分後。


 柵の入り口で高井は悪態をついた。

 右手に握るナイフを降りながら余裕を見せているが、実はちょっぴり悩んでいる。


 


 3人が柵の奥へと引っ込んでしまったからだ。


 ーすたこらさっさ〜〜!


 ーあ!てめえらどこへ行きやがる!


 ー高井のいないところよぉ〜〜〜!!


 ー私たちに近づかないで!


 今は円二を先頭にして凛、結愛の順番で高井と正対していた。

 突き落とすにしろナイフを使うにしろ前進するほかない。


 「「「…」」」


 柵の外側の最も奥、校舎の南端に引きこもり、押し黙ってしまう。


 「よぉぉおぉし。お前ら、そんなに死にたいなら…望み通りにしてやるぜ〜〜〜〜…!」


 無論高井も柵の入り口から押し入ろうとするのだが…


 (さ、さすがに高えな…)


 実は少し怖気ついてしまっている。


 秋空はかなり肌寒く、下から吹き荒ぶ風に思わず真身震いした。

 ここは屋上6階なので高さはかなりある。


 落ちればもちろんひとたまりもない。


 そもそもこのプランはもしもの時に凛が用意したプランで打ち合わせはほとんど起こってない。


 高井がためらっても不思議ではないと言えた。


 ダンダン!

 ダンダン!

 ダンダン!


 その間にも扉を蹴破ろうとする動きは活発化しつつある。

 

 「円二さん!返事して〜〜〜〜〜!!!」


 「円二君返事して!もし円二君に何かあったら、僕も後を追うから!」


 「原田さんそれはだめ〜〜〜〜!!!」


 呼びかける声ややり取りも活発化しており、ドアが破られるのは時間の問題。


 このままでは復讐は中途半端に終わってしまう。


 「くそ…!」


 舌打ちしながら迷っているとー、




 「やーい、腰抜け!このままチキンのまま逮捕されるつもりか?」


 「なっ!?」


 黙っていた円二が高井を挑発し始める。


 「俺をモップでボコボコにしようとして返り討ちにあった勘違い野郎〜〜〜!男ならナイフなんて捨ててかかってこーい!」


 凛とそれに同調する。


 「このフ◯ャチン野郎〜〜!!!」


 結愛も調子に乗りながら挑発しはじめた。


 「円二を殴ったこと、まだ許してないんだからね!かかってきなさい!」


 「「「やーい!!!」」」


 憎んでいる3人による挑発。





 ぷつん。

 

 高井の頭で何かがキレる音がした。


 「ざっけんじゃねえ!!やったらぁ!!!そこで待ってろぉ!!!」


 勢いよく柵を乗り越え、ナイフを持って奥へと突き進もうとする。


 その時ー、




 「「「うおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」


 3人が一斉に突っ込んできた。

 


  ****



  相変わらず癖の強い作品ですが、もし気に入れば応援や☆、フォローを頂けると嬉しいです!遅ればせながら第7回カクヨムWeb小説コンテストにも応募いたします。


 新たに「☆1000で電子書籍化」という目標を掲げることにしました!今後もコンスタントに更新しますので、よろしくお願いします!

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