第62話 幸せに向かって

 「というわけで、美也たち3人で凛さんの大事な情報をゲットしつつ、ちょっとだけ弄っておきました〜〜〜!パチパチパチ!!」


 「それ以外にも何枚か暴露できる情報があったからまとめておいたよ。明後日が楽しみだね、くくくくく…」


 「スマホは円二の言う通り、凛さんの親戚夫婦に渡したよ。作戦当日になるまで凛さんがスマホを確認できないよう、理由をつけて没収しておくって」


 早朝の空き教室で、俺は3人の報告を聞く。


 げっそりしてる俺とは対照的にみんな元気そうだ。

 ようやく復讐できる喜びと期待感に満ち溢れている。


 「大丈夫?円二、朝から元気ないよ」


 流石に結愛が気づいており、心配そうに覗き込んだ。


 「…あいつには完全に愛想が尽きた。あいつがどんな末路を迎えようと同情はしない。それだけさ」


 観覧車での対話を思い出し、心がすり減っていくのを感じる。


 凛があそこまで話の通じない人間だとは正直思わなかった。

 あいつは俺の予想を超えている。


 絶対に自らの行動を反省することはないだろう。


 だからー、




 今回で徹底的に報復しなければならない。


 「あたしがよしよししたら、元気になってくれる?」


 「ああ。元気100倍だ」


 「じゃあ…よし、よし」


 遠慮がちな義妹の小さな手に髪を触られ、少しだけ気持ちが晴れる。

 

 今日は早退して、結愛と一緒に過ごすのもいいかな…




 「ぶーぶー、また円二さんが結愛ちゃんと青春してるー。原田さんからも何かいってよー」


 「くくくくく…」


 「いやそんだけ!?原田さんが厨二病キャラみたいになってるよー!」


 「…特に思いつかなかった」


 「もー!こうなったら美也も真似するからね!くくくくくく…」


 「「くくくくく…」」


 やれやれ。


 復讐のために集まった仲間を置いていくわけにはいかないな。


 これは、俺が始めたことでもあるのだから。


 「ごほん!パワーが回復した。ありがとう結愛」


 「うん。また、いつでも言ってよ」


 義妹からそっと離れ、改めて作戦会議に入る。


 「美也!今日の報告を!」


 「はいっ!全部手筈通りですっ!前夜祭は、学園祭の出し物の準備が終わった夜20時、体育館に集合して行われます!司会は円二さんと、怪我から復帰した凛さん!凛さんはここで結愛ちゃんの浮気や恥ずかしい写真を暴露しようと考えていますが、逆に円二さんが凛さんの秘密をぜーんぶバラしちゃう予定です!」


 「千恵美!」


 「くくくくく…!暴露の準備はばっちりさ!円二くんの合図で、凛さんの秘密が全てプロジェクターを通じて全校生徒に暴露される!彼女の音声記録も30分以上公開できるから言い逃れは不可能さ!みんなネットにも情報を流すだろうねぇ!」


 「結愛!」


 「えーと、あたしはその、円二が合図をしたら…」


 「やっぱり言わなくていい!」


 「なんで!?」


 「それはその時が来るまでのお楽しみだ!」


 「そ、そうなんだ…」


 「以上、これで会議は終わりだ」


 俺は立ち上がり全員を見渡す。


 美也。

 千恵美。

 結愛。


 合図したわけでもないが、みんなもゆっくりと立ち上がった。


 「みんな、ここまで良く頑張ってくれた。みんな、あいつに因縁がある。あいつに苦しめられたこともある。元はと言えば、あいつの本性を築けなかった俺の責任だ…それなのに、みんな、文句ひとつも言わずに協力してくれて、感謝しかない」


 「感謝なんて大袈裟だよ。美也は、正しいと思ったことをするだけ」


 「ぼくも、勘違いで円二くんのことを恨んだことがあった。でも、円二くんのおかげで、それが間違っていることに気づけたんだ。あとは、復讐を成し遂げるだけ!」


 「あたしも逃げないよ、円二。最後まで、みんなで、やり遂げよう!」


 全員で手を重ねて、みんなで叫ぶ。




 「「「俺たちの復讐は…これからだ!!!」」」


 凛が身勝手な復讐を夢見ている間、被害者達による真の復讐は着々と進んでいた。



  ****



 【side:凛】


 「そっち抑えて!」

  

 「看板ちょっとずれてない?」


 「ちょっと男子!はしゃいでないで手伝ってよ!」


 「明日はいよいよ前夜祭かぁ。最後の学園祭、楽しみのような、寂しいような…」


 学園祭を目前に控え、私たちの教室もにわかに盛り上がりを見せている。

 

 私も楽しみだ。




 ここにいる全員があのアバズレを叩くようになる瞬間が。

 私と円二君がキスをする場面なんて、みんな拍手で出迎えるに違いない。


 学園祭の前夜祭は、私と円二君のハッピーエンドの前夜祭となる。


 「どうした?」


 「…ううん。なんでもない。楽しいことを考えていたの」


 傍で話しかけてくる円二君に向き直り、今一度作戦を説明した。


 「本当に、スマホを取り戻してくれるのね?あの役立たず、急にスマホも没収するなんて言い出して困ってたの」


 「ああ。がくえんさいとうじつ、がっこうをこっそりぬけだして、おまえのいえですまほをぬすみだす。そして、ほんばんになっておまえにわたす」


 「役立たずの1人は絶対見張りについてるはずだわ。できるの?」


 「おまえのともだちをなのり、わすれものをとりにきたとごまかせばいい」


 「それは良かったわ!頼りになるわねぇ。じゃあ、手筈通り…」


 「ああ。みんなのまえで、すべてをあかす」


 「ええ…ふふふふふふふふふふ…」


 教室でなければ、鼻歌を歌ってしまいそうだ。




 全てが上手くいっている。


 


 私と、円二君の幸せに向かって。



 ****



  相変わらず癖の強い作品ですが、もし気に入れば応援や☆、フォローを頂けると嬉しいです!遅ればせながら第7回カクヨムWeb小説コンテストにも応募いたします。


 新たに「☆1000で電子書籍化」という目標を掲げることにしました!今後もコンスタントに更新しますので、よろしくお願いします! 

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