第15話 はじめての友達

 春はすぐに終わり、夏がやってくる。


 ひとまず平穏な日常が訪れたが、安息の日はほとんどない。


 俺はばらばらになった家族のことや進路のことを引き続き考えなければならないし、結愛も青春を楽しむのに全力を尽くすことになる。


 個別の問題について過度に思い悩むのはやめたが、全てを諦めたわけではない。


 今後の進路については、ひとまず進学しないという方向で教師と話を進めることにした。

 

 結愛は本人が進学を望んでいないが、後で気が変わっても良いように勉強を少しずつ教え始めている。


 親父には俺や結愛の近況について毎日メールを送り、少しでも心を開いてくれるように努めた。


 親父は良い親ではないのかもしれない。それでも、親父にしかできないことはまだ残っているはずだ。

 

 詠美さんは、ひとまず探さないことにする。おそらく、今接触しても誰も得をしないだろう。


 …こう書くとさも真面目な人間のように聞こえるが、全くそうではない。


 ーんんんんんっ!…はぁ、はぁ…また、朝まで押さえつけられて、そのままなんて…円二、ちょっとパワーありすぎ。

 ーごめん。俺もちょっと、やりすぎた。

 ーいいけどさ。征服されるって、こんな感じ、なのかな…

 ーその、なんだ。

 ーえ?もう一回?ふふふ…あたしの魅力に、メロメロってこと?

 ー…

 ー冗談。いいよ、来て…


 そんな中でも、結愛とは毎日のようにセックスをした。


 避妊にはさらに気を遣うようになり、お風呂場以外ではほとんどせず、声も押し殺しながら。

 

 抱くたびに結愛は大人びていき、成熟していくように感じられる。それを名残しいと思ったことはなかった。


 …今思えば、俺が結愛に受け入れられたあの夜から、お互いの理性がはじけ飛んでしまったように思える。


 誰かに露見すれば俺たちは異常者と呼ばれたかもしれない。


 それでも、止められなかった。

 

 外では『さまざまな事情を抱えつつも仲の良い義理の兄妹』という仮面を被り、家の中では衝動に身を焦がしながら愛し合った。


 


 そんな生活にとある変化が起きたのは、6月が終わり、おそらく学生最後の夏休みが迫る7月のこと。




 俺が所属する3年3組のクラスに、1人の転校生が訪れる。





 「はい、じゃあ自己紹介を」


 「ぼ、ぼくは…原田千恵美はらだちえみ、ですっ…」


 女性教師に促されてぼそぼそとした声で喋る、短髪の少女。


 中性的な顔立ちの美少女だが、常に自信がなさそうな表情を浮かべており、あたりをキョロキョロと見回していた。


 「い、以上、です…」


 簡潔な自己紹介の後は俯き、顔を赤くして押し黙ってしまう。


 「どうしたんだろう?」


 「可愛いけど、女子なのにぼくって変わった人…」


 「僕っ娘属性は希少。守護まもらねば…」


 クラスの反応はイマイチだったが、俺は驚きを隠せない。


 その人物に見覚えがあったからだ。


 幼馴染の凛と仲良くなる前から出会い、凛が現れると入れ替わるように姿を消した同級生。


 ーぼくも、ぜひ君と友達になりたい!




 俺の、はじめての友達。



 ****



 第2章の開幕です!1月末までに10万文字めざしてどんどん更新します。円二や凛の過去に迫りつつ、ラブコメ成分多めで展開する予定です。


 相変わらず癖の強い作品ですが、もし気に入れば応援や☆、フォローを頂けると嬉しいです!遅ればせながら第7回カクヨムWeb小説コンテストにも応募いたします。


 ☆500達成でイラスト化企画を立ち上げますので、よろしくお願いしますm(__)m…って言ってたら達成してしまいました!!!応援いただき本当にありがとうございます。詳細は後ほど発表いたします。

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