第6話 回復
ふぁーーーー!! よく寝た!!
洞窟の隙間から光が差し込んできている。
清々しい朝だ!!
意外とぐっすり眠れたなー。
あれ?どうやら竈の火は消えてしまっているようだ。
確かトーマを見張りを交代して火は絶やさないように言ってあったはずだけどな。
グーーグーー
……
マジかコイツ……
煙草の吸殻が3本。
少し粘ったらしいが何かあったらどうするつもりだったのやら……
さて、こんなやつはほっといて竈に火をつけて昨日の残りの肉を食べるとするか。
[異袋]に保存した火のついた枯れ木を取り出して竈に放り新たに薪を投入して火を起こす。
その間にレイピアに一人分だけ肉を刺して竈に置く。
朝から肉は重たいけど食べれるときに食べとかないとな。
それにしてもこいつは起きないな。
朝飯食べ終わっても寝てたらどうしてくれようか。
シンプルに水をぶっかけてもいいし、このまま置いていくのもありだな。
いや、でもこいつは大事な肉壁だ。
いい刀も持ってるし街を見つけるまでは大事な相棒としてここは大目に見てやろう。
肉も食べ終わって片付けが終わったが、まだトーマは起きない。
水は水筒に入れた分しか持ってこれなかったから早く調達しに行きたいのに。
とりあえず普通に起こしてやるか。
「トーマ、朝だ。起きろ。」
肩を揺らしながら話しかけてみた。
「ああ、もう朝かい。えらい早起きなんやな」
もしかしてこいつは一旦寝て俺より先に起きる作戦だったのでは……?
不可抗力なら許せたがわざとなら話が違うな。
いや、朝からイライラしてたら嫌な一日になってしまう。
ここは大人の余裕で受け流そう。
「そうだよ、見張り頼んでたはずだけど。寝ちゃったの? 次から気を付けてね」
「ああ、すまんな……」
意外とあっさり謝ったな。
うーん、悪いと思ってるのだろうか。
「まあいいよ、とりあえず水が無くなったからまたあの場所に汲みに行きたいんだけどさ。俺は朝飯に肉食べたんだけど、どうする? 何か食べるか?」
「ああ、朝は食べない派や。別にええで」
「じゃあ、寝起きで悪いんだけど、さっそく出発しよう!」
「ああ、その前に一服だけええか」
「……いいけど」
トーマの一服を待って出発した。
目的地は取り合えず昨日の湧き水の場所だ。
また水を飲みに来た魔物が居なければいいんだけどな。
念入りに[感知]で周囲を探りながら進む。
途中で気になる木が視界に入った。
[感知]でよく探ってみると明らかに周囲の木よりエネルギーが多い。
もしかしてあれは……
「トーマ、あの木。なんか変じゃないか?」
「ああ? 木やな。どうみてもただの木や」
こいつは鋭いのか鈍いのかわからんな。
とにかく近づいてみよう。
やっぱりそうだこいつはトレントってやつだな。
「おい、あんまり近づくなよ。コイツはたぶんトレントーー」
バチーン!!
不用意に近づいたトーマがトレントの枝に叩かれてしまった。
トレントが目を開けてギラリと俺たちを睨んだ。
「いてて、やんやコイツ生きとるやんけ」
「だから言ったじゃん、トレントだって」
「ああ、どうでもええけど。こいつはぶった切る」
「ええ、なんでだよ。見に来ただけだしこのまま引き下がれば見逃してくれそうだよ」
「はあ? なんでや! コイツが先に手だしたんや。落とし前はつけさしたるわ」
「落とし前って……、何言ってんだーー」
「ごらぁぁぁしばいたるわぁぁぁ」
有無を言わさず枝を切り落としながら幹に突撃して切りつけた。
トレントも負けじと枝を振るいトーマを弾き飛ばす。
バチーン!!
「いってええな」
切りつけた部分が即座に塞がってしまった。
「なんや、こいつ。全然効いとらんのか?」
「いや、良く見ろ。切り付けた幹はすぐに回復したけど切り落とした枝の部分は生えて来てない」
「ああ、ほんまや」
「まず枝をできるだけ切り落とそう」
「なんや、逃げるんちゃうかったか?」
「いや、今ので気が変わった。こいつは必ず倒す」
「ああ、そうかい。じゃあワイはこっち側の枝をぶったぎるで」
「じゃあ俺はこっちだな」
珍しく意気投合してトレントの攻撃をかわしながら一心不乱で切り落とせる太さの枝を落としていく。
「こいつはちょっと可哀想になってきたな」
「なにいっとんねん。こいつが先に手だしてきたんや。自業自得ってやつや」
「よし、粗方攻撃に使ってくる枝は落としたな」
「ああ、あとは本体だけや!!」
トーマは反撃出来なくなったトレントに切りかかる。
だが先程と同じように傷は瞬く間に塞がっていく。
「おい、どうなっとんねん。すぐ元に戻ってまう!」
「見たら判るよ。今考えてる」
トーマの刀でも傷をいれるだけか……
一太刀で真っ二つに出来れば倒せると思うんだけどな。
でもまあシンプルにあれだな、木には火だ。
「トーマ、一旦下がって。ちょっと燃やしてみよう」
トーマが悪い顔をしてこっちを向いた。
「おお、ええな。ほとんど動けん木を燃やすなんて自分悪いこと考えるやん」
「うるせー、いいから燃やすぞ」
枯れ木を集めてトレントの周囲に集める。
[異袋]から火の付いた枝を取り出してトレントでキャンプファイヤーだ。
火が大きくなってきたから追加でどんどん周囲の枯れ枝をトレントに投げつけていく。
刀の届かない上のほうの葉っぱと細い枝もすべて燃えている。
ここまでやらないと倒せないのか。
そもそもトレントって倒していいのかな。
話しかけてこないし別にいいか。
近づいただけで攻撃してきたし。
やっぱり上位のトレントは足が生えて歩けたりするのかな。
そうなると現状倒し方がわからないな。
むむ、意外としぶといな。
そろそろスキル獲得するかと思ったんだけど……
火が弱まってきてトレントの姿がはっきりと見えてきた。
どうやら燃えてるそばから回復してるみたいだ。
これじゃ火力が足りないみたいだな。
「おい、元に戻ってくぞ。全然ダメやないか」
「うん、見たらわかるよ。今考えてるから」
さてどうしたものか……
こいつのスキルは多分この異常な回復力に関係あると思うから絶対欲しいんだよな。
でもこっちの決定力に欠けるんだよな。
スキルも攻撃系の物はないし……
ああ、そうた、あれがあるじゃん!!
「トーマ、[吸収]だよ。トレントに触れてエネルギーを搾り取ってやろう」
「ああ、それや!!」
二人でトレントに触れて全力で[吸収]をした。
みるみるうちにトレントが枯れていきトレントは朽ち果てた。
そして予想通り[回復]のスキルを獲得した。
「ふう、最後はあっさりだったね。多分ダメージが蓄積しててあと一歩だったのかも。おかげで体力も完全に回復したよ」
「ああ、ほんまやな」
「やっぱり、予想通り[回復]のスキルだったね。これで多少のケガはすぐに治りそうだ。切り落とした枝が再生されてなかったから多分切断されて欠損したら回復しないから気負付けてよね、切断されてすぐにくっつければ治るとは思うけど絶対じゃないし」
「ほう、そら便利やな。この木みたいに回復するんかい」
「とにかく寄り道しちゃったけど、いいスキルが手に入ってよかった。さっさと水を汲みに行こう」
「ああ、せやな」
再び湧き水の場所に向かった。
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