スタンピード5
魔物と対峙しどのくらいの時間がたったのだろうか。すでに夜は明けようとしていた。あたりには魔物が倒れ血の匂いが漂う。騎士も冒険者も満身創痍だ。かろうじて死者は出ていないが、まだ魔物は多く残っている。挟み撃ちをするための部隊がくるまでなんとか持ちこたえようと、踏ん張ってはいるが死者が出るのも時間の問題だろう。それだけ魔物の数が多いことに加え、上位種の数が多かった。ゴブリンなどの上位種は掃討したが、まだオークが残っている。数も多く、上位種まだ残っていた。
クラウスもかなりの深手を負っていた。主だった騎士の中でもクラウスは上位種を中心に相手していたため、剣も刃こぼれを起こしていた。
「まいったな……。この剣でどこまでやれるか……」
よく見ると刃こぼれだけでなく、折れそうな箇所もあった。おそらく数度、魔物の攻撃を剣でいなそうとすると折れてしまうだろう。今から討伐しようとするのはオーガだ。間違いなく折れるだろう、とクラウスは確信していた。
その様子を村と森の間にある大きな岩陰で見ている男達がいた。
「おい、どうする。このままじゃたいした打撃を与えずに討伐されてしまうぞ」
「ここの騎士団は精鋭だからな……。壊滅できなくともしばらく活動できない程度には打撃を与えたいな」
「ああ。ここから見ていると騎士団の中心はあの男のようだ。かなり深手を負っているようだし、ここから弓で狙って倒せないか?恐らく、あの男をどうにかできればここは崩れる」
「そうだな。ここが崩れれば、あの村も壊滅状態にできる。私達の痕跡は消せるか……」
男の一人が弓を放つ。冒険者も騎士も目の前の魔物に集中しており、矢が飛んできていることに気づかなかった。そして、放たれた矢はクラウスの胸を射た。
声もなく倒れるクラウスに、側にいた同僚は駆け寄ろうとするが、オーガが迫ってきておりなかなか側へ行けない。せめて、これ以上近寄らせないようにするのが精一杯だった。そんな騎士の様子に冒険者の中でも動ける者がなんとかちかより、クラウスを戦場から引き離す。
クラウスは薄れゆく意識の中で、カサンドラとユリウスを想った。直観的に助からないだろうと分かっていた。冒険者が声をかけているが、段々と小さな声になる。己の聴覚がなくなっているのだろう。痛みがあったはずなのに、もう感じない。せめて、カサンドラの元へ連れて行ってくれ。ユリウスが望む未来を過ごせるように。そう願いながら、息を引き取った。
クラウスが倒れたことで、前線が崩れた。他の部隊の隊長がなんとか前線を元に戻そうとするが、一度崩れた前線は元に戻らない。戻すのが難しいと判断した瞬間、城からくる部隊が到着するまで持ちこたえることに切り替える。一旦、部隊を下げ編成を整えなおす必要があると判断し、クラウスが率いていた部隊と己の部隊を村まで戻しあとから前線に上がった部隊と入れ替わる。オーがの群れは村の側まで来ていた。
あと少しで完全に陽が昇る。そろそろ、城から部隊も出立したはず。そう信じてオーガを食い止めるが、すでに満身創痍の身では完全に食い止めることは難しかった。1体、また1体とオーガが村へと進む。村には負傷者と医師や薬師しかいない。非戦闘員が大半だった。騎士達は気力をふり絞り、オーガに向かう。
村へと向かうオーガに負傷を負って村にた者たちも気づいた。比較的動ける者は手に武器を持ち、オーガへ立ち向かう。魔術師たちも付与をかけたりして、攻撃魔法をオーガに打ち込むのだった。
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