第10話


 僕は父さんが出て行ったあと、ナータン様に付いてまずはお茶の入れ方やお茶の葉について教えて貰ったんだ。お茶って沢山種類があるんだね。びっくりしちゃった。エリーアス様は紅茶が好きなんだって。産地によって色々と違いがあるらしいんだけど、基本的にエリーアス様は決まった銘柄だけを飲まれるの。だから、そこまで覚えなくていいって言われたんだ。全部違いまで覚えないといけない、って言われたらどうしようって思ってたからちょっとほっとしたんだ。


 お茶の入れ方も細かい決まりがって、きちんとしたお茶を出せるまで練習しないといけないかも。温度とか蒸らす時間とか気にしたことがなかったからね。僕が普段飲んでいるお茶って、母さんが薬草とハーブをブレンドしたものだからちょっと違うしね。僕もブレンドの配合は教えて貰ってるから、母さんが忙しいときは僕もブレンドするんだよ。


 ナータン様はとても丁寧に教えてくださるから、手帳に書き込んでいる間も待ってくださるんだよね。さすがにお茶の淹れ方は1回では無理だから、しばらくは一緒に横で見てくれるって言ってた。一緒に出す茶菓子のこともここで教わったんだよ。人にもよるらしいんだけど、エリーアス様はお茶の味や香りを楽しまれる方だから、それを邪魔するような茶菓子は出しちゃいけないんだって。時々話に聞くようなお砂糖たっぷりなお菓子とかはダメってことだよね。基本的にはお茶だけで問題ないらしいんだけど、お昼をとる時間がないときなんかは軽食を用意することがあるか、その時は気を付けることって言われた。


 「今日はこの辺までかな。ユリアン、お茶は何回か淹れると適温や蒸らし時間も掴めると思うから明日から実践だ。一度に詰め込んでも覚えきれないしね。この後は、魔力の感じ方を教えるから一旦休憩にしよう。今日は特別にエリーアス様とお茶だよ」

 「いいんですか?」


 「ああ。これも経験のひとつだからね。たまに一緒にお茶を楽しまれることもあるから。今日は私が淹れるから、味をしっかりと覚えておくんだよ」


 「はい!」


 ナータン様に促されて、エリーアス様の元へ向かう。僕に気づいたエリーアス様は、にこやかにソファへ座るように促してくださった。


 「ユリアン、これから色々と覚えることがあるけど、今日は初日だからね。ゆっくり進めよう」


 「はい。頑張ります」


 僕の言葉に頷くことで返し、エリーアス様もソファへと移動してきた。手には数枚の書類を持っている。やっぱり、色々とまとめないといけないことあるんだなぁと思いながらぼーっと見ていた。そんな僕に気づいて、書類を見るのをやめられた。


 「ああ、ユリアンには待ってる時間が暇だったね。君が書きこんでくれた内容を確認していたんだよ。やはり、こっちに住んでいないとわからないことが多いからね」


 僕に気を遣わせてしまうなんて、失敗。僕はエリーアス様に仕える立場なんだから、次から気を付けないと。


 「すいません。お仕事なのに手を止めさせてしまって」


 「いや、構わないと。まだ初日なんだから、私も配慮が足りなかったからね。ユリアンは森へ入ってるって言っていたけど、森の奥まで行ったことは?」


 「奥まではないです。僕と母さんじゃ太刀打ちできないから。奥までいけるともっと希少な薬草が採れるらしいんですけど。そこは冒険者に依頼を出してました」


 「そうか。森の奥へは冒険者や騎士しか行ってないのかな」


 「そうですね。基本的には冒険者や騎士しかいってないです。開拓村の方はわからないですけど……」


 「開拓村は森に近いのかい?」


 「えっと確か、森の反対側にあるんです。最近は村の規模が大きくなってきているから、森に入って木を切ってるって冒険者の人から聞いたことがあります」


 僕は聞いたことがある話を伝える。確か、結構な本数を切ってるって言ってなかったかな。違ったかな。僕その辺あんまり覚えてないんだよね。開拓村の人達ってあんまり協力的じゃないって聞いたような気がする。父さんと母さん、大変な思いしないといいけど。開拓村に向かうっていってたし。騎士団で向かうから、きっと問題ないよね。


「そうか、木を伐採しているのか。もしかしたらそのせいもあるのか・・・・・・?」


 エリーアス様が小さな声で何か言ってたけど、僕にはよく聞き取れなかった。そうこうしているうちにナータン様がお茶を運んできた。エリーアス様は書類を机へと戻し、ナータン様からお茶を受け取る。


 「さぁ、ユリアンも飲みなさい。休憩が終わったら魔力の訓練だろう?少し甘いものも食べておくといい」


 「はい、ありがとうございます」


 僕はナータン様からお茶を受け取る。僕の前にはナータン様が用意してくださったクッキーがあった。エリーアス様の前にはなかったので、特別に用意してくださったみたい。エリーアス様は何も指示を出してなかったのに、用意されててびっくりしたんだ。こうやって仕える人の意向などを先回りして、色々と準備したりできるようにならないといけないんだ。僕はまだエリーアス様の好みとか把握できてないから、まずはナータン様を見て、することをしっかり覚えておかなきゃ。


 僕は出されたお茶とクッキーをしっかりと味わった。ちゃんとお茶の味を覚えないと、これからお茶を淹れるのに大事だからね。この後の訓練は魔力の感じ方だから、これもしっかりと覚えて自主練しないとね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る