第8話


 今日は父さんと一緒に騎士団に向かう。父さんも母さんもいつでも遠征に出る準備は出来たって言ってたから、今日は一旦いつも通り仕事をするんだって。父さんは騎士だから、遠征があるんだけど、母さんも遠征にはついて行ったりするんだ。後方部隊として、お医者さんとかの役割も担うんだよ。もちろんお医者さんじゃないから、母さんはお薬担当だけどね。薬が足りない時なんかはその場で薬草を調達して、回復薬や気付薬とか作るから行かないといけないって言ってた。騎士の遠征って魔物の間引きだったり、盗賊の討伐だったりするから怪我がないとは言い切れないしね。


 「父さん、今日はすごくざわついてない?」


 お城に着いてから騎士団の詰所の方がなんだかざわざわしてる。すごく慌ただしい感じ。


 「そうだな。父さんはこのまま話を聞いてくるから、ユリアンはエアーリス様の所に行きなさい。部屋は覚えてるな?」


 「うん。大丈夫。ちゃんと覚えてるよ。じゃあ行ってくるね」


 「ああ。頑張ってこい」


 父さんと分かれて、エアーリス様が滞在されている部屋へと向かう。離れに滞在されているからちょっと緊張しちゃう。もしかしたら奥様とかお嬢様に会うことがあるかもしれないから、気を付けないと。離れにいらっしゃる護衛の方達には昨日のうちに、ナータン様とご挨拶してるから大丈夫。


 僕はエリーアス様の部屋をノックし、中からの返事を確認してから入る。


 「おはようございます。今日からよろしくお願いします」


 中にはエリーアス様とナータン様がもう仕事をされていた。


 「ああ、ユリアン。おはよう。今日からよろしく」


 エリーアス様が僕に声をかけてくださる。ナータン様も「おはよう」と声をかけてくれた。


 「エリーアス様、監察で来られてますけど事務仕事なんてあるんですね」


 僕は騎士のアエリーアス様に事務仕事があることが不思議で聞いてみた。文官としてなら分かるんだけど、エリーアス様は騎士で今回は道中の護衛が中心のお仕事だって聞いてたから不思議だったんだよね。エリーアス様はそんな僕の疑問にも、丁寧に答えてくださったんだ。


 「ああ、今回は護衛として来てはいるけど、騎士の目から見たこの地の様子だとか道中の様子など報告しないといけないからね。それぞれの地でのことを忘れないように書いておいたものをまとめてるんだよ。王都に戻ったら国王と騎士団長への報告も必要になるからね。こういったことは全て記録として残しておくんだよ」


 「ユリアンもこれからまとめる時にこの地の特色などわかる部分について聞くこともありと思うから、後でこのメモを見てわかる内容のところを言ってくれるかい」


 エリーアス様の言葉に続いて、ナータン様からも言われたので「わかりました」と返す。父さんは家でそんなことをしたことがなかったので、記録を残しておくのも騎士の仕事のひとつなんだ、ってちょっとびっくりしちゃった。でもよく考えたら、家でそんなことしないよね。僕が知らないだけで、父さんも遠征の後はこうして記録していたのかもしれない。


「さて、ユリアン。まずは従騎士の見習いになるわけだし、従騎士の仕事について説明しようか。そのあとにユリアンがする仕事や魔法をスキルに出すための訓練なんかについて説明していくけど、大丈夫かな?」


 ナータン様が僕に確認をしてきたので、「お願いします」って返した。手帳持ってきてよかったよ。しっかり書いておかないと。


 僕が手帳を出したのがわかったらしくて、ナータン様に頭を撫でられた。最近は父さんや母さんにも撫でられたことなかったらちょっと恥ずかしいや。


 「ではエリーアス様、ユリアンへ説明をいたしますのでお側を少し離れさせていただきます。何かございましたらお声がけください」


 「ああ。ユリアン、最初は色々と聞いてもわからないところも多いと思うからわからないことは都度聞いておくんだよ。聞かなかったことで、失敗に繋がることもあるからね」


 「はい。わかりました」


 エリーアス様から言われたことを頭に入れて、お話を聞かないとね。僕はナータン様と一緒に少し離れた席に座り、説明を聞いた。


 従騎士って騎士の身の回りのことや甲冑の運搬とか武器の手入れとかを1人でするんだって。基本的に1人の騎士に1人の従騎士がつくらしい。僕は見習いだから、ナータン様の補助をすることになるって言われたんだ。まだ体も小さいし何より騎士に正式につく年齢ではないからだって。確かに僕まだ8歳だもんね。エリーアス様の甲冑なんてきっと篭手くらいしか持てないと思うよ。甲冑って重いもんね。武器の手入れなんかはこれから少しずつ推してくれるらしい。簡単な修理くらいは出来るようにならないとダメなんだって。戦場で武器が壊れたときに必要な技能らしい。従騎士ってやることいっぱいあるんだね。でも騎士になるためには必要な経験なんだって。


 魔法のスキルを出すための訓練も毎日することになったんだ。まずは自分の魔力を感じることから。これはまだやったことがなかったから、これからだって。魔力を感じることができたら、魔力を放出する訓練。ここで簡単な魔法を使って訓練するらしい。僕の場合はそれぞれの属性で訓練することになるから、ちょっと時間かかるかもって言われた。簡単な魔法で訓練するのはここで魔力のコントロールも兼ねるからなんだって。コントロールは基礎になるからしっかりやっておかないと魔力を暴発させたりしてしまうとか。そうすると自分だけでなく、他への被害も大きくなるかららしい。魔力を感じたり放出するためのコントロールは大事だから、見習いとしての時間よりもここに時間をとるって言われたんだ。


 「さて、ユリアン。ここまでは大丈夫ですか?」


 「はい。大丈夫です」


 手帳に色々と書きながら聞いてるから、なんとかついていけてる。


 「あ、ナータン様。僕いつも母さんと一緒に森へ薬草を採りに行ったりしてるんですけど、薬草を採りにいっても大丈夫ですか?」


 聞いておかないとって言ってたことを忘れないように聞くことにしたんだ。薬師としてのお手伝いもしてるから、大事なことだよね。


 「そうだね。すぐには無理だけど、色々なことの覚え具合で調整しようか」


 「わかりました」


 まぁ、すぐには無理だよね。覚えることいっぱいありそうだもの。僕頑張って覚えて、森へ行けるようにならないと。シリウスにも会えなくなっちゃうもんね。


 この後は他にも覚えないといけないって言われた内容を手帳に書いていった。実際に色々な作業をしながら教えてくれるんだって。僕の場合は、騎士の作法から貴族への対応とかも入ってくるって言われたんだ。エリーアス様の同僚の方は貴族も多いし、文官への伝達にしても貴族になるから。そう考えると本当に覚えることがいっぱい。まずは言われたことを忘れないように覚えることから頑張ろうっと。

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