第7話


 「ただいまー」


 僕は家に戻り、中へと入る。父さんも母さんもまだ色々と荷物を準備していた。


 「父さん、母さん。まだ準備中なの?」


 「ああ、ユリアン。おかえり。もう終わるぞ。ちょっと母さんの回復薬や毒消しを入れるのに手間取ってただけだ」


 「そうなんだ。沢山必要になりそうなの?」


 「それはわからんな。けど持てるなら多めにあった方がいいからな。遠征先では何があるかわからんから、準備はしっかりしとくのが基本だぞ」


 父さんの言う通りだね。「わかった」と僕は返事を返した。あ、そうだ。父さんと母さんに言っとかないといけないんだった。


 「父さん、母さん。あのね、今日王都の騎士様に声をかけられて、期間限定なんだけどお仕えさせて貰うことになったんだ」


 「まぁ。それは本当なの?」


 「うん。エリーアス様っていう騎士様なんだけどね。王都に戻るまでの期間になっちゃうけど、どうだっておっしゃってくださったの。辺境伯様や騎士団長様の許可もとってくださったんだよ」


 父さんも母さんもビックリしていたけど、よかったねって喜んでくれたんだ。他の見習いの子って仕えることになる騎士様みんな決まってるんだよね。期間限定でもそういった経験ができるのっていいことだよね。


 「あ、そういえば父さん。王都の騎士団の人ってみんな爵位持ちって聞いたんだけど、ここの騎士団もそうなの?王都では騎士の爵位をみんな貰うってエリーアス様言ってたんだ」


 「そうだな。ここの騎士団も一緒だぞ。ちょうどいい。ユリアン、この国の爵位教えておこう。騎士にならないのであれば、貴族と平民って括りでもよかったが一時的とはいえお仕えする方できたんだ。知らないではいけないことだからな」


 「そうね。今までちゃんと教えてはいなかったけど、これからはそうはいかないものね。いい機会だわ」


 父さんと母さんはそう言って、荷物をまとめ終えて僕と一緒に椅子に座って説明してくれた。この国は王国で、王様から大公、公爵、侯爵、辺境伯、伯爵、子爵、男爵、准男爵、騎士爵と爵位があるんだって。父さんは騎士だから騎士爵になるらしい。そうは言っても騎士から准男爵までは名誉爵のようなもので、領地もないし1代限りの爵位になるんだって。だから僕は騎士にならなければ平民らしい。父さんが生きている間は家族も騎士の家族っていうことで平民扱いにはならないんだとか。成人したら関係ないらしいけどね。


 上から順に爵位が高いから、色々と気をつけないといけないんだって。間違っても伯爵よりも先に子爵の用事を優先したりしちゃダメとか、自分より上の爵位の人には声をかけちゃいけないとか、相手から声をかけてもらわなきゃいけないとか、色々言われた。とりあえず見て爵位が分からない時は、向こうから声をかけられるのを待ちなさいって言われた。


 仕事で伝言とかを頼まれたら、直接言うのではなくて相手の従者や騎士に伝えなきゃいけないんだって。これは僕頼まれることあるかも知れないから、よく覚えておかないとダメだね。


 「これから気を付けないといけないんだね。覚えることいっぱいだ」


 「まだお前は見習い期間だから多少の失敗は見逃して貰えるが、同じ失敗を何度もしてはいけない。失敗したら何がいけなかったのか、どうすべきだったのかはちゃんと考えるんだぞ。失敗したで終わらせてたら、また同じ失敗を繰り返すからな」


 「うん。わかったよ、父さん」


 きりがいいからっていうことで、夕食を早めにとることになった。僕がエリーアス様にお仕えすることになったからお祝いだって、母さんが奮発してお肉を買ってきてくれたんだ。いつもはソーセージとかなんだけどね。母さんの肉料理は色々な具材で味付けしてて、おいしいんだよ。薬師だからハーブとかも詳しくて、母さんは料理によく使ってるんだ。僕もお手伝いするから、少しだけ知ってるんだ。覚えてる種類は物凄く少ないけどね。だって薬草覚えるのに精いっぱいなんだもん。これからもっと覚えること増えるから、薬草とか覚えるのに買ってもらった手帳を持ち歩かないと。


 「ユリアン、しばらくは森へも行けないから昨日採ってきた薬草を乾燥させる作業手伝ってちょうだい。効果は落ちちゃうけど、乾燥させて使うわ」

 「え、森に行けないの?」


 「何言ってるのよ。お仕えする方ができたんでしょう。だったら朝から行かないといけないもの。森へ薬草を取りにいくのはちゃんとエリーアス様に断ってからでないと。お休みの日は行けても毎日は許可を得てからでないと無理よ」


 「あ、そっか。お仕えするってことは今までのようには行かないってことだよね。じゃあシリウスにもちゃんと言ってあげないといけないし、明日エリーアス様に確認してみる」


 「そうしなさい。さ、早く済ませてしまいましょ。明日からはユリアンも今までのようにはいかないんだから、しっかり寝ておかないと」


 「はーい」


 僕は母さんと薬草を乾燥させるために準備をし、せっせと薬草を干していった。乾燥させると採りたての薬草よりは効果が落ちちゃうけど、日持ちするんだよね。遠征とかが入ってしまったりするとなかなか回復剤とか作れなかったりするときは、こうして乾燥させて戻ってから作るんだ。今回は僕が今までみたいに森へ行けなくなってしまうから、昨日の薬草は乾燥させるんだ。これも下処理だけは済ませておかないと行けないから、結構手間なんだよね。明日、エリーアス様に森へ行くこととか相談しておかないと。

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