庇護下に置いた少年
ユリアンの属性やスキルの判定をした後、今後の方針を決めるためにユリアンは帰宅させた。エリーアスとナータンは軽くメモしていたユリアンの属性とスキルを元に計画を立てる。
「見事に補助系統になりそうだな。弓術がスキルとして出ているから、騎士として進ませるなら斥候だろうな。称号の恩恵も上乗せさせるなら」
「そうですね。斥候でないなら後方部隊向きの属性ですしね。3属性もあるとは思いませんでしたが、相性がいい属性同士なのが幸いですね」
基本的に単一属性の方が、魔法の威力は高い。属性が複数になるとその分習得や熟練に時間がかかる。だがまれに複数の属性でもユリアンのように相性がいい場合は習得や熟練に時間がかかっても単一属性に近いレベルの威力を出すことができる。お互いの属性の相乗効果によるものだ。相性が悪いと威力は格段に下がってしまうので、複数属性持ちでもどれかひとつに絞ってスキルを上げていく。
「ユリアンの場合はそれぞれ訓練させた方がよさそうだ。まずは魔力コントロールからになるか」
「ではしばらくはそのように進めます。あとは作法もですね」
「ああ。あの様子だと敬称などは曖昧なのだろう。今はまだいいが、騎士として薬師として本人が選ぶにしろきちんとした敬称は知っておかねば」
「そうですね。辺境伯様、と呼んでいましたしね。ユリアンの場合ですと、閣下と呼ばせた方がいいでしょう。騎士団長達は卿と呼ぶよう教えます。なかなか慣れなさそうですけどね」
ナータンは苦笑混じりだ。エリーアスから見ても、ユリアンにはまだ難しい貴族の作法などはなかなか慣れないだろうと感じる。第一印象からして、おっとりした子なのだろうな、と感じたのだ。実際に言葉を交わしてみて、おっとりもしているのだろうが穏やかで真面目なのだろうと感じていた。
属性を判定して、その印象はさらに強くなった。持っている属性の影響も少なからず人格形成に影響を及ぼすからだ。火属性であれば気が強かったり、風属性であればマイペースに自由気ままに行動したり。光・水・地はどの属性も穏やかだったり、おっとりしていたりする。
「まだ少ししか言葉を交わしてはいないが、恐らくは人の悪意なども苦手そうだ。私が庇護下に一時的にとはいえ置いたことで、多少のやっかみなども受けるだろう。そのあたりのフォローも必要だろう」
「確かに他の見習い達から色々言われるかもしれませんね。わかりました。様子を見ておくようにします」
「そうしてくれ。さて、私は辺境伯の所へ行ってくる。もしかしたら斥候が戻ってきているかも知れないから、確認をしてくるよ。まぁ、我々に手を出させるようなことは、ないだろうけどね。辺境を治める者と守る者としての誇りもあるだろうし」
はぁ、と溜息を吐くアリーアスにナータンは苦笑する。
「仕方ありませんよ。彼らにしてみれば我々は王家の手の者としか見ることはできないでしょうし。ちょっとしたことで、領地に何かされてはと警戒されても仕方ありませんしね。実際、文官のほうは色々と見つけようとしているようですよ」
「あまり警戒されるようなことはして欲しくはないんだがな」
そういうとエリーアスは部屋を出ていく。残ったナータンは部屋を整えつつ、ユリアンへの指導内容の手順をメモに書き込んでいった。
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