第3話


 今日は朝から騎士団の方へ向かう。父さんも母さんも、もしかしたら遠征に出ないといけないかもしれないらしくって、その支度をするんだって。だから今日は森へ行かないんだ。もしかしたら昨日のシリウスの様子のせいなのかな。いつ遠征にでることになってもいいように、僕たち騎士の子供は辺境伯様のお城に行くことになったんだ。これはいつもそうで、大きな遠征とかがなくても、部隊単位で魔物の間引きで不在になる時も不在になっている騎士の子供はお城に行くんだよ。父さん達がいない間は男の子は騎士団の寮で女の子は使用人棟に行くんだ。そこで稽古とか勉強とかするんだよ。


 あ、でももしかしたら今回は王都の方がいるから、王都の話とか聞くことができるかな。直接はお話できないだろうけど、メイドさんとかお話聞いてないかな。ちょっとだけ聞けることを楽しみにしてる。



 「よう、ユリアン。今日は朝からか」


 「あ、ニクラス。おはよう。うん、今日は朝からなんだ。父さんも母さんも遠征あるかもしれないから、支度するんだって」


 後ろからニクラスに声をかけられ、僕はニクラスに向き合う。2人で並んで歩きながら話すことにした。


 「へぇ、お前のとこのおじさんとおばさんが支度するって、結構大きな遠征なのかな」


 「どうなんだろう。何もないかもしれないけど、支度だけしておくって言ってたから」


 「ふーん。まぁうちの親父とちがって、お前のとこは部隊長だし前線にいく側だからなぁ。そろそろ間引きに出る部隊もあるだろうし、そっちにあたったのかもな」


 「そうだね。ニクラスのところはまた違う部隊だもんね。なら間引きにあたったのかな」


 2人で遠征内容の予想をしつつ、騎士団の詰所に向かう。僕たち見習いは遠征には連れて行って貰えないから、どんな遠征なのか想像するしかないんだよね。僕たちが12歳になるまでは見習いのまま。12歳になって初めて従騎士になれる。まぁ、仕える騎士様が見つからないと従騎士にもなれず見習いのままなんだけどね。従騎士になって20歳をすぎて一人前と認められて初めて騎士として独り立ち出来るんだけど、多分僕たちは平民だから従騎士のままだと思う。貴族だと早くに騎士になれるそうなんだけど、やっぱりそれなりの誉れが必要らしい。戦で敵の将を打ち取るとか、魔物の討伐とかで誉れを挙げるんだって。僕みたいに適正が補助とか回復だとそういった誉れは挙げにくいから、違う道を模索した方がいいんだって言ってたかな。僕はまだ8歳だし、12歳までにもう少し薬師としての知識とか力量とか上げられるように母さんについているところ。僕でも騎士様が仕えていいよ、って言ってくれれば従騎士にはなれるらしい。まぁそんな騎士様はこの騎士団にはいないんだけどね。


 ニクラスは僕よりも2つ年上だからあと2年で従騎士になれるんだけど、実はもう仕える騎士様決まってるんだ。辺境伯様の次男のアルノルト様。長男のベルント様は辺境伯様の跡継ぎだから騎士として表に立つことはないんだって。遠征とかで総大将みたいな形になることはあってもあくまで辺境伯様の代理としての位置づけらしい。アルノルト様は跡継ぎではないから、辺境騎士団をまとめるために騎士になられたんだって。ニクラスはそんなアルノルト様に気に入られていて、少しづつだけど従騎士の仕事も教わっているらしい。


 「ねぇ、ニクラス。アルノルト様は遠征の話とかしないの?もしかしたら準備されてるのかな」


 「昨日はまだそんな話されてなかったし、どうかな。これからアルノルト様のところで取次の仕方とか教えてもらうことになってるから、もしかしたら何か言われるかも」


 「そっか。あんまり大きな遠征じゃないといいよね。大きい遠征だと長期間戻ってこなかったりするし」


 「ユリウスはおじさん達帰ってこないと1人だもんなぁ。いくら辺境伯様のところでみんなといても、落ち着かないしなぁ」


 そうなんだよね。1人で待つわけじゃないから寂しくはないんだけど、子供ばっかりでまとめられちゃうから騒々しいというか、僕騒がしいの苦手だから落ち着かないんだ。ちょっとゆっくりする時間が欲しいというか……。女の子達といても色々とこき使われたりするし、おもちゃにされるんだよね。多分僕が母さん似だから、ちょっと女の子っぽくみえるせいなんだろうけど。これも僕の悩みなの。


 「じゃあ、俺はアルノルト様のところに行くから。ユリアンは騎士団の詰所の方だろ。またな」


 ニクラスが手を上げ、僕とは別の場所へと向かう。僕のニクラスに「またね」と声をかけてから詰所へと向かった。


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