第8話 ケーキバイキングは誘惑がたくさん①
十四時五十分にセットしていたアラームが鳴った。
そして、隣の家の呼び鈴を鳴らす。すぐに、インターフォンから声が聞こえてきて、「正輝です」と告げると、
数分もしないうちに真帆が家から出てきた。
「お待たせ。早朝ぶりかな? 覚えてないけど……」
あはは、と苦笑いの真帆。
そんな真帆は早朝のきらびやかなドレス姿違って、肩を出した白色のオフショルのTシャツと足のラインがはっきりと分かるジーパンを身に着けていた。足元は歩きやすいスニーカーだった。肩にはピンク色のショルダーバックを提げていた。
オフショルのTシャツからは綺麗な鎖骨があらわになってるし、豊満な胸が強調されている。
目のやり場がないな、と正輝は真帆のことを見ることができなかった。
「それじゃあ、行こう」
「は、はい」
真帆は正輝の腕にするっと自分の腕を絡めてきた。
(やっぱり、この人距離感がおかしい……)
真帆のそんな行動に正輝はドギマギするしかなかった。
ぎこちない足取りで、正輝は真帆に連れられてケーキバイキングのお店にやってきた。ホテルの最上階にあるそのお店はいかにも高級といった感じだった。
「ここのケーキバイキングずっと行きたかったんだよね~」
真帆は店内を見渡しながらそう言った。
正輝にそんな余裕はなかった。とにかく、今すぐこの状況をなんとかしたい、そればかりが頭の中をめぐってお店にいる客が女性とカップルばかりなことに気が付かなかった。
「すみません。予約していた椎名です」
真帆が店員にそう告げると、店員は笑顔で「椎名様ですね。こちらにどうぞ」と案内をした。
窓側の席に案内された二人。そこで、ようやく正輝は真帆から解放されることになった。
(やっと、離してくれた……)
正輝はホッと胸を撫でおろした。
「正輝君、ケーキ取りに行こ!」
「は、はい」
真帆がどんどんとお皿にケーキを入れていった。
初っ端からハイペースに次から次へとケーキを取っていく真帆。そんな真帆とは対称的に正輝は自分が食べたい分だけのケーキを取っていった。大好きとはいえ、食べれないかもしれない分まで取ろうとは思わなかった。自分の胃袋の大きさは自分で知っている。
それがぞれが思い思いにケーキを取ると席に戻った。
「え!? 正輝君それだけ?」
「いやいや、椎名さんが取りすぎなんですよ。何ですかそれ?」
正輝は真帆の皿を指さして言った。真帆の皿には山盛りにいろんな種類のケーキが乗せられていた。その細身のどこに入るのだろうか。と正輝は真帆の体をチラッと見た。
「ちゃんと、全部食べるから大丈夫だよぉ~!」
「それならいいんですけど」
目の前でパクパクと幸せそうな顔でケーキを口に運んでいく真帆。美味しそうに食べるな、と真帆の幸せそうな顔を見ながら正輝もケーキを口に運んだ。
(美味いな。てか、よく見たらここめっちゃ高いんじゃ?)
正輝は店内を見渡した。
(しかも、よく見るとここにいるのはカップルか女性ばかりだ。なんだか、場違いな気がする……)
「どうしたのキョロキョロして?」
「いや、なんか、場違いな気がして……」
「あー。確かに、男の人は少ないね~」
そんなことよりこのケーキ美味しいよ、と真帆はチーズケーキを口に運んだ。
(本当にここにいていいのだろうか。てか、俺持ち合わせそんなにないんだけど……。のんきにケーキ食べてていいのだろうか……)
とか思いつつもケーキが美味しすぎて食べる手を止めることができなかった。
「ん~。幸せ! 私おかわり取ってくるね!」
「え!? まだ食べるんですか!」
「当たり前じゃん。まだまだ食べないと! 正輝君も遠慮せずにたくさん食べてね。今日は私の奢りなんだから!」
満面の笑みで自分の胸をトンっと叩く真帆。そのはずみで豊満な胸が揺れる。そして、パタパタと足音を鳴らしながらケーキのもとへと向かっていた。
(奢りか……。そう言われてしまっては遠慮するわけにはいかないな)
正輝も立ち上がるとケーキを取りに向かった。
(それにしても椎名さん、目のやり場に困るからほんとにやめてください)
正輝は自分のお腹の感じを確かめながら食べれそうな分だけ目一杯にお皿にケーキを乗せていった。
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