第9話 ケーキバイキングは誘惑がたくさん②

 ケーキを腹いっぱい食べた正輝と真帆はしばらくその場から動くことができなかった。


「ふぅ〜。お腹いっぱい。大満足!」

「美味しすぎて、僕も食べ過ぎてしまいました」

「だよね〜。私も食べ過ぎちゃった!」


 後ろ頭に手を当てて、テヘッとおどける真帆。

 (食べ過ぎていう量じゃなかったですけどね)

 

「それにしても、本当によく入りましたね」

「ケーキは別腹だからね」

「それって、ご飯を食べた時にいう言葉じゃないですか?」

「細かいことはいいの! とにかく、美味しかったね〜」


 たしかに、来てよかったと正輝は思っていた。こんな高級そうな場所に来ることは金輪際ないのではないかとすら思っている。

 

「今日はありがとうございました。いい経験ができました」


 正輝は真帆に向かって頭を下げた。

 そんな、正輝の様子をきょとんとした瞳で真帆は見ていた。


「何言ってるの?」

「え・・・・・・」

「もしかして、これで終わりだと思ってる?」


 真帆は小悪魔的な笑みを浮かべて正輝のことを見た。なにかよくないことを考えていそうだ、と正輝は身構えた。

 そして、正輝のその予想は当たってしまう。


「正輝君のこと、これからいろんなところに連れ回すつもりだから、覚悟しといてね!」

「それは、拒否権あるんですか?」

「あるけど、私と一緒にいるの嫌?」


 今度は上目遣いで見つめてくる真帆。

 コロコロと表情が変化する真帆に正輝の心臓はドキドキと鳴っていた。


「嫌、というわけでは・・・・・・」

「私じゃ正輝君に見合わないか〜」

「そ、そんなことないです。むしろ、逆です・・・・・・。僕なんかが椎名さんと一緒にいていいのかなって・・・・・・」

「いいに決まってじゃん! 私がそうしたいんだから、いいの!」


 真帆は正輝の右手を両手で包み込んだ。

 長い指。すべすべとした手のひら。真っ白な肌。とても魅力的な手を握られている正輝は真帆のことを見ることができず、顔を窓に向けた。


「・・・・・・高いですね」

「だよね〜。屋上にはプールがついてるみたいだよ〜」

「そ、そうなんですね」


(いつになったら、手を離してくれるのだろうか。心臓が爆発しそうなんですが!?)

 正輝は上手く会話を続けることができず、黙り込んだ。


「さて、そろそろ帰ろっか」

「・・・・・・はい」

「じゃあ、ちょっと会計してくるから入り口で待ってて」


 真帆はそう言うと、レジに向かいお会計を済ませた。

 一人、入り口で待たされた正輝は最後に店内をもう一度見渡した。

(ここ、どのくらいするんだろう・・・・・・)

 正輝は値段のことが気になったが、聞かないようにした。聞くのが怖かった。


「お待たせ〜」


 じゃあ、帰ろっか、と真帆は来た時みたいに腕をするっと絡ませてきた。

(うん。なんとなく、そんな気はしてた・・・・・・)

 正輝は来た時とは違い、しっかりとした足取りで歩いてケーキバイキングのお店があるホテルを後にした。

 外に出ると、日が沈みかけていて、空はオレンジ色に染まっていた。

 真帆の豊満な胸が常に正輝の腕に当たっていたが、言ってもしかないな、と正輝は諦めていた。


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