第3話 お姉さんは何者

「あの、何か手伝ることはありますか?」

「手伝ってくれるの? じゃあ、そこの食器棚からお皿を出してテーブルの上に並べといてくれない?」

「分かりました」


 俺はそこで初めてしっかりと椎名さんのことを見た。キッチンに立って料理をしている椎名さんはピンクのかわいらしいエプロンをしていた。胸くらいまである長い茶髪も料理しやすいように後ろで一つに結んでいた。服装は上下ジェラピケのもこもこした真っ白なパジャマ。そこからモデルみたいなスラっとした足が伸びている。


 スタイルよすぎませんか!?

 もしかして、モデルさんだったりして……。顔も美人だし。

 仮に仕事がモデルだって言われても信じるぞ!!


「どうしたの?」

「あ、いえ……なんでもないです」


 俺は椎名さんに見惚れていたことがバレないように、白の食器棚から、白の食器を二人分出して、逃げるようにテーブルに向かった。

 それにしても、この部屋。ソファーとテレビ以外がほとんど白色で統一されている。服装も白だし、椎名さんは白が好きなのだろうか。俺が着ている服も白色だもんな。


「椎名さんって一体何者……?」

「ふむふむ。正輝君は私のことを知りたいのかね」

「え! 椎名さんいつの間に!?」

「ご飯ができたから持ってきたんだよ。そっか、そっか。私のことが気になるのか~」


 なんでそんなに嬉しそうなんですかね!? てか、さっきからフライパンを持った腕がぷるぷると震えいて落としそうなので置いてくれませんかね!? てか、俺が持ちますから!


「フライパン持つので貸してください」

「あ、ありがとう」


 俺は椎名さんからフライパンを受け取った。すると、椎名さんは驚いたようなちょっと照れてるようなそんな顔で俺のことを見つめていた。


「あの、見てないで早くお皿に入れてもらえませんか?」

「そ、そうだね。ごめん」


 椎名さんはあたふたとしながらフライパンの中にある美味しそうなパスタをお皿の上に綺麗に盛り付けた。

 綺麗に盛り付けるな~。椎名さんって絶対に綺麗好きだよな。うん。絶対にそうだ! 靴箱の中にも綺麗に靴が並べられてたし、部屋の中の家具も綺麗に並べられているし、ますます、椎名さんが何者なのか気になってきたぞ!


「食べるよね?」

「せっかく作ってもらったのに食べないわけないじゃないですか」

「じゃあ、食べよう!」


 白のテーブルをはさんで向かい合うように白の椅子に座った。

 

「いただきます」

「召し上がれ」


 俺は大皿に綺麗に盛られたパスタを自分の小皿に取り分けた。崩すのがもったいなかったけど、お腹が空いていたので我慢できなかった。

 こんなに美味しそうなカルボナーラが目の前にあったら、遠慮してても食べたくなる! だけど、それにしても、食べづらい……。なんでって、それは椎名さんが俺の感想を待っているかのように見つめているから……。


「あの、そんなに見られると食べづらいんですけど……」

「いいじゃない! 別に見られて減るもんじゃないでしょ?」


 いやいや、確かにカルボナーラは減らないかもですけど、俺の心臓がバクバクと音を鳴らして寿命が減ります!


「とにかく、見られると食べづらいんです……」

「むぅ~」


 椎名さんはちょっと拗ねて、大皿に乗ってるカルボナーラをフォークでクルクルとしていじけていた。


「そんなにいじけないでくさいよ……」


 それはそれで食べづらい……。


「見てていいですから、椎名さんもパスタ食べてください」

「いいの!?」


 俺がそう言うと椎名さんはバッと顔をあげた。

 だから、なんでそんなにうれしそうなんだよ!? 女心はよく分からない。

 結局、俺は椎名さんに見つめられながらカルボナーラを食べることになった。

 椎名さんの作ってくれたカルボナーラはお店顔負けの絶品だった。俺は食べる手を止めることなく、満腹になるまで食べ続けた。


「そんなに美味しそうに食べてくれると作った甲斐があるってものね!」

「凄く、美味しかったです! ごちそうさまでした」

「お粗末さま」


 椎名さんは満足そうに微笑んでお皿を流し台に運んだ。


「あ、お皿洗いくらいは僕がやりますよ?」

「そう?」

「はい。こんなにいろいろしてもらったのに、何もしないのは申し訳ないので」

「じゃあ、お願いしようかな。そろそろ仕事に行く準備をしないといけないし」

「え、これからお仕事なんですか?」

「そうよ!」


 椎名さんは妖艶な微笑みを残して自室に入っていった。

 リビングに残された俺は、とりあえずお皿洗いをすることにした。

 壁にかかっている時計を見てみると、時刻は二十時になろうとしていた。そろそろ、お母さんが戻ってくる頃かな。


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