第3話
「バツイチかぁ…………」
部屋へ帰るとスーツの上着を脱ぎ、そのままベッドに寝転がった。真っ白い天井をボーッと見上げていたら無意識に口にしていた。
別にバツイチだからどうのこうのとは思わない。ただ、六歳という年齢差に加えて元人妻ということで、人生経験の差がありすぎるのだ。
そもそもバツイチってことは旦那といろいろあったわけで、酸いも甘いも経験しているはず。そして六歳差。
彼女から見たら、俺なんてションベン臭いガキにしか見えないだろう。
もうため息しか出てこなかった。
それにしてもあんなに素敵なひとなのに何で離婚したんだろうか?
浮気? DV?
子供はいるのかな?
彼女の胸の膨らみと細い背中を思い出す。
彼女と何度も何度も愛し合った男がいる。そう考えただけで僕は嫉妬に狂いそうだ。
彼女の笑顔が脳裏に浮かぶ。胸がきゅーっと締めつけられる。
――こんなに好きなのに……
『やめとけ。お前にどうこうできる相手じゃない』
成田の言葉が頭をよぎる。
――そうだよなぁ。無理だよなぁ。どう考えても俺なんて相手にならないよなぁ。…………よし、諦めよう。
両手でももをパチンと叩き、スクっと立ち上がった。
脱ぎ散らかした上着を整え、ハンガーに掛ける。内ポケットの名刺入れと手帳を取り出したときに一枚のメモがヒラヒラと床に落ちた。
『千葉さんへ
鳥居課長よりTELがありました
休憩のタイミングで連絡ほしいとのことです
15:45 松本』
打ち合わせ中の僕に、松本さんが届けてくれたメモだった。
事務的な内容が可愛らしい文字で綺麗に書かれていた。
そしてメモ紙の一番下に、
『打ち合わせ頑張ってくださいね
(๑•̀ㅂ•́)و✧』
と、メッセージと簡単なイラストが添えられていた。
こういうちょっとした心遣いが胸を打つ。
「駄目だ。諦めるなんてできない。やっぱり好きだ」
一目惚れの恋の辛さをひとり噛みしめる僕であった。
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