第38話 決行

「3人ですか?」


私はお嬢様に問う。

本当に3人で行くのかと?


「ええ、この3人で行くわ」


……


「本当に3人で行くんですか?」


聞き間違いかも知れないから、もう一度聞きなおしておく。


「くどいぞ、ミア」


私はお嬢様に問いかけているのに、ちびっ子が横から口を挟んできた。

どんだけ自己主張が激しいのよ。

こいつは。


「心配しなくっても、今回は魔法を使っていいわ」


「え!?本当ですか?じゃあ楽勝ですね!」


これから私達は襲撃を駆ける予定だ。


え?何処かって?


勿論レイゲン国の王宮によ。

それも正面から。


レイゲンの首都は相次ぐ有力貴族暗殺で殺気立っている。

街には普段の何倍もの衛兵たちが巡回し、異変に目を光らせていた。

これは裏を返せば、本来王宮に駐在する兵士達も街に出払っている事を意味する。


普通王族も狙われると思って宮殿の守りを固めそうな物だが、王族は自分達が襲撃されているとは夢にも思っていないのだろう。

お陰で宮殿の兵士の数は本来の半分程度しかいない。


とは言え、それでも軽く100は超える数ではあるが。

まあ只の兵士なら100人いても私達3人ならどうにでもなるだろう。


お嬢様がいるし。


問題は親衛隊だ。

彼らはかなりの腕利き揃いと聞く。

革命軍のリーダーの筋肉達磨が親衛隊上がりで、その腕前には太鼓判を押す程だからね。


彼らに一斉に掛かられたら、流石のお嬢様でもきついはず。


まあそれはあくまでも魔法無しの話ではあるが。

魔法有りなら、不殺と言うハンデを含めても大天才の私とお嬢様の敵ではない。


「ミア。魔法が使えるからと言って、調子に乗って人死にを出しては駄目よ。ちゃんと加減なさい」


「了解っす!」


私がそんなへまをやらかすわけがない。

お嬢様の心配性にも困ったものだ。


「それと、建物の破壊は出来るだけ控えなさい。良いわね?」


「えぇ~」


折角魔法を解禁されているのに、建物に気を使ったのでは思い切った魔法がぶっぱできない。

不殺と合わせ考えると、かなりの魔法が制限されてしまう。


「俺達の目的はコウライ王子に王位を移行する事だ。無駄な殺戮や破壊ではない」


「へいへい」


そんな事は一々ペイルに言われなくともわかっている。

城を滅茶苦茶にしてしまったのでは、補修や何やらで無駄にお金がかかってしまう。これから国を大きく変えて行かなければならないのに、無駄な事に国庫は費やすのは避けなければならない。


革命とは銘打ってはいても、私達は王家を完全に転覆させるつもりはなかった。

完全に王家を打倒して国を一から作り直そうとすると、相当リスクが高くなるからだ


タカ派の貴族の多くを粛清したとはいえ、完全な国家転覆となれば、他の貴族達が黙ってはいないだろう。

場合によっては、武装蜂起による内乱状態に陥ってしまう可能性は高い。

そうなってしまうと、この国は滅茶苦茶になってしまう。


だから貴族制度に否定的で、革命軍に理解のあるコウライ王子を旗印に上げるのだ。タカ派は暗殺で事前に潰しておき。

貴族制度は最低限維持しつつ、ジワジワと時間をかけて弱らせていく。


それが今回の革命の概略だ。


因みに革命軍の面々もこの場にはいる。

王宮で異変が起これば、街を巡回している兵が押し寄せてくるのは目に見えていた。

それを抑えるのが彼らの役目だった。


私達が魔法を使うとなると、下手な人員は逆に足手纏いになり兼ねない。

そうお嬢様は判断したのだろう。


「嬢ちゃん達、準備はいいか?」


「問題ありませんわ」


どうやらついに始まるみたいだ。


革命が。


私は覚悟を決めて、大きく深呼吸した。

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