第32話 革命軍
居心地が悪い。
超悪い。
私は薄暗い建物の中、厳めしい面構えの屈強な男達に囲まれていた。
別に彼らが怖いという訳ではない。
殺伐とした雰囲気のであったため、とにかく居心地が悪いのだ。
「わかった、その子達の事は俺達が面倒を見よう」
グラスを片手に、顔に傷のある渋いおじさんが口を開いた。
その体はまるで筋肉の塊かと思わせる程膨らんでおり……正直ちょっとキモイ。
「ありがとうございます」
此処は革命軍と呼ばれ人達の隠れ家である。
私はお嬢様の指示で、ここへ子供達の事を頼むためにやって来ていた。
彼らの事は引き受けてくれるら様なので、一応礼は言っておいたが……正直不安でしかない。
彼らに任せて、本当に大丈夫なのかしら?
「礼はいらんよ。子供達はこの国の未来だ。寧ろ、此方が礼を言いたいぐらいだ」
彼等も、孤児達の事は留意していた様だった。
だが革命軍が子供達を保護すれば、最悪政府に末端として処刑されかねない。
いつ狩られてもおかしくない立場上、今までは迂闊にその事には手が出せなかったのだ。
では、何故彼らがそれを承諾したのか?
それは簡単な話。
この国で、近い内にクーデターが起こるからだ。
革命さえ成されれば、子供達の安全は保障される。
「帰ったらミャウハーゼン……いや。ローズさんに礼を言っておいてくれ」
当然、裏で手を引いているのはお嬢様で間違いない。
今おもっくそミャウハーゼン家の名前出てたし。
こちとらか弱い大賢者様だ。
正直、革命とかそういう類の物にはあまり関わりたくはない。
だが事が起これば、私達も間違いなく参加する事に成るだろう。
このタイミングでここへやって来たのも、偶々偶然では無く、絶対にお嬢様の意向だろうし……そう考えると、ひょっとしたら冒険者ギルドとも繋がりがあるのかもしれない。
おかしいと思ったのよね。
急に冒険者になるとか言い出したから。
「では、よろしくお願いします」
そう言って私は席を立つ。
隠れ家である居酒屋を裏口から出て、表通りに出た。
そこで伸びをして、首を軽く傾けてコキコキと肩を鳴らす。
あー、肩凝った。
「ま、やるしかないかぁ」
気乗りはしない。
もし普段なら、革命に参加しろと言われたら迷わず辞表を提出していた事だろう。
お嬢様に恩義があるとはいえ、流石にそこまでは出来ない。
だが今回は子供達の事があった。
あの子達の為にも、この国は絶対に変える必要がある。
今回ばかりは彼らの為と割り切って、我慢して参加するとしよう。
その時、ふと恐ろしい考えが頭を過る。
まさかあの子達、私にやる気を出させるためにお嬢様が用意したエキストラじゃないわよね?
と。
「……」
まあ考え過ぎだろう。
流石のお嬢様もそこまではしない筈だ。
きっと、多分。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます