第24話 デザート

「ふぁて、こりぇふぁふぇたふぁぼうふぇんふぁふぃるどふぇいふぉっふぁ」


「何言ってるのかさっぱりわからん。話すのは食べ終わってからにしてくれ」


この世知辛いご時世、時短のために同時に2つの事を済ませるべきだろうに。

我儘な奴だ。

だが寛容な私はアーリィの頼みを聞いて、先にデザートを完食してあげた。


何せ、私は彼女の先輩なのだから。


先輩……ああなんといい響きだ事か。


「食べ終わったら、冒険者ギルドへ行くわよ!」


私達の旅に同行する以上、彼女にも冒険者うんこに登録してもらう事になる。

今はそこへ向かう途中の、ちょっとした買い食いの最中だった。


「アーリィ、食べないの?いらないなら、私が貰ってあげるわよ」


「意地汚い奴だ。とても名門貴族に使える人間には見えないな。あんただけは」


「冒険者として活動しているから、それっぽくふるまってるだけよ!」


決して私が意地汚い訳では無い。

そう、これは演技なのだ。

私はアーリィの返事を待たず、彼女の皿からケーキの残りを奪い取る。


これも冒険者としての演技の為だ。

私の本意ではない。

許せ。


「別に構わないけど。しかしあんたと二人で冒険者ギルドに行かせるとか、あたしが逃げるとか考えないのかねぇ?」


「何?あんた逃げんの?」


「逃げやしないよ。私は自分の罪を償わなきゃならないからな」


「ならいいんじゃない」


彼女は決して逃げない。

お嬢様でなくとも、それ位私にも分かる。

私が付いて来ているのは、慣れていないだろうからという理由でしかなった。

別に彼女の監視の為ではない。


まあ仮に逃げたとして。

お嬢様の地獄の追撃がある以上、彼女が逃げ切ることなど不可能な事だ。


ああ因みに、あの後暗殺組織はサクッと壊滅させている。

情報道理、アーリィ以上の実力者はおらず。

それ所か全員足元にも及ばない小物ばかりだったので、ほぼアーリィ一人で楽勝だった。


生き残りをふん縛ってベラドンナ家に送り――魔法の許可が出た――1件落着だ。

もう襲われる心配は無いだろう。


「しかし、実の妹の命を狙う……か。貴族ってのは本当にどうしようもない生き物だな」


お嬢様の兄上の事を、アーリィは言っている。

暗殺者の首領が、依頼主はその方だとゲロったのだ。

まあお嬢様はそれを追求する気は無いっぽかったが、貴族の世界はドロドロしてると改めて思わされる1件だった。


「お嬢様は違うわよ」


「わあってるよ。あの人が特別だって事は。なんせあたしなんかにチャンスをくれた人だからな」


分かっていれば宜しい。

お嬢様は理不尽だが、その行動には必ず何かしらの正義が存在している。

私利私欲でやりたい放題やっている他の貴族とは違うのだ。


「んじゃ、行きましょうか!」


デザートも平らげた事だし、もうここに要は無い。

アーリィを引き連れて私は冒険者ギルドへと向かうのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る