第23話 襲撃
「これじゃあ見つからない訳だ」
暗殺者の襲撃の後。
アーリィの情報からその本拠地の場所を聞いた私達は、速攻でクエストを終わらせてそこへと向かう。
当然、その目的は悪党退治である。
ガルザスより遥か南に位置する毒蛇の森。
その森を断ち切るかの様に、そこに聳え立つ断崖絶壁。
その壁の奥こそが、暗殺組織凶兆の拠点らしい。
森には毒蛇の魔物が多数生息しているため、人が立ち入る事はまずない。
更に絶壁の一部に施された魔法によるカモフラージュ。
なるほど見つからないわけだ
流石暗殺組織の本拠地だけはあると言える。
まあその命運も、今日ここで尽きるんだけどね。
「幻影の向こうに見張りがいるわね」
此方から向こうが見えない様に、向こうからも此方は見えないのだろう。
私達は魔力をソナー代わりに使って位置をばっちり把握しているが、向こうはまだ此方に気づいていない様だ。
「私が先に入る。私なら相手も油断するだろう」
アーリィが自分が先行して見張りを始末するという。
因みにアーリィというのは、前回仲間になった獣人の女暗殺者の名だ。
「耳が無いから、貴方の事分からないんじゃないの?」
彼女の耳と尻尾は、私の魔法による処置で普通の人間の様な状態になっている。
まあ尻尾に関しては短く、普段からズボンの中にしまってあったようだから無くなっても周りは気づかないかもしれないが、トレードマークの耳が無ければ彼女と気づいて貰えない可能性は高いだろう。
「耳だけで人を認識する程、暗殺者達も馬鹿では無いだろう。お前じゃあるまいし」
「んだとチビ!!」
あっ、やべ。
やらかした。
腹が立って大声を出したせいで、暗殺者達が動き出してしまった。
2人共奥へ向かっている。
仲間に知らせる気だ。
……まいっか。
隠れ家の出入り口は2か所しかない。
その内一つはお嬢様が向かっているので、まず逃走は不可能だ。
どうせ攻め込めば遅かれ早かれ敵にはバレるのだ。
ならもうこのまま、何も考えず攻め込めばいいだろう。
ちょび髭の情報――捉えた幹部――だと、アーリィより腕の経つ相手はいないらしいし。まあ大丈夫だろう。
因みにそいつはお嬢様の地獄のフルコース(拷問)を受けて、地獄の苦しみの中でもがき苦しんで死んでいった。
あの時の絶叫ときたら、私は耳を塞いでいたのに、未だにそれが脳裏に焼き付いて離れない程だ。
素直に話せば楽に死ねたでしょうに、頑張り屋さんも考え物だわ。
やっぱ人生適当が一番ね。
「やれやれ、しょうがない。このまま殲滅しながら進むぞ。もうミスするなよ、ミア」
むう、小五月蠅い爺だ。
文句を言ってやろうかとも思ったが、今回は大目に見てやろう。
ミスしちゃったのは事実だし。
ペイルがカモフラージュされている壁に突っ込む。
あたしとアーリィもそれに続いた。
壁の中の長い通路を抜けると。
幾つもの建物が目に入ってきた。
そしてその前に待ち受ける暗殺者達の姿。
「恩をあだで返すか!この裏切者め!」
「黙れ!!よくも騙してくれたな!」
壮年風の暗殺者の言葉に、アーリィは怒りの言葉を叩きつける。
それと同時に、彼女は待ち受ける暗殺者の中へと突っ込んだ。
うん、脳筋すぎ。
仕方がないので私もそれに続く。
ペイルはその場に留まっている。
逃げ出そうとする相手を仕留めるつもりなのだろう。
もしくは腰が痛くて動きたくないか。
まあどっちでもいいけどね。
「おおおおおぉぉぉぉぉ!!」
アーリィは雄叫びと共に大剣を振り回し、暗殺者達を薙ぎ払う。
うん、やっぱ彼女強いわ。
この様子だと、一人で殲滅できそうだ。
私は彼女の邪魔にならない程度に、アーリィの背後に回ろうとする奴らを始末する。
必要はないんだろうが、多少でも仕事をした振りをしておかないと、後でお嬢さまに怒られてしまうからね。
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