第19話 獣人
「此処にターゲットがいるのかい?」
遠くに見える城塞都市ガルザスを睨み。
赤毛の女が、隣にたっている黒のローブを身に纏った男に問いかける。
「ああ、そうだ」
男は顎髭を生やし、その顔つきは精悍だ。
女の方は褐色の肌に赤毛。
女性にしては筋肉質な体つきではあるが、出る所はしっかり出ている。
だが何よりも特徴的なのは、その耳だった。
彼女の耳は頭頂部付近から生えており、まるでネコ科の生き物を思わせる形をしていた。
亜人。
人間よりも遥かに高い身体能力と、感覚を有すると言われる種族。
但しその数は少なく。
人間社会において、迫害とまではいかないが冷遇されている存在だ。
「そいつは本当に悪人なんだろうね?」
女性の鋭い眼差しが男を射抜く。
だが男は眉一つ動かさずに嘘を付いた。
「ああ。正式な罪にこそ問われてはいないが、間違いなく大罪人だ」
「そうか、ならいい」
返事を聞いて女は自らの両手へと視線を落とす。
血に塗れた自らの手へと。
「決行は明日。奴らは此処から西の森へと向かう。俺達はそこに先回りして待ち伏せする。いいな」
男の言葉に女は黙って頷いた。
「ミア・カースト。ペイル・セバース。それにティア・ミャウハーゼン」
彼女は目を瞑り、名前を小さく呟いた。
ターゲット達の名を。
それは祈りに近い儀式。
これから手にかける者達の名をその胸に刻み込む。
自らの罪を決して忘れる事の無い様に……
ゆっくりと開かれた彼女のその眼には、自らの運命を受け入れるしかない悲しみの色が湛えられていた。
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