第17話 1級チーム
バジリスクは強力な魔物だ。
熊の様な大きな体躯を持った蜥蜴で、その爪や唾液には生物を石化する呪いの効果が含まれている。
まあ基本草食でこっちから襲わない限り人間を襲ったりはしないのだが、とにかくこいつがよく食べるのだ。
1匹2匹ぐらいならいいが。
今いる森にはかなりの数が入り込んでしまっている様で、あちこちに食い散らかされた木々が見える。
ほっておくと森が禿げ散らかされて無くなってしまいかねない。
だから緊急の依頼として、街から冒険者ギルドにバジリスク討伐が持ち込まれたのだ。
街の衛兵達は動かないのか?
そう、彼らは動かない。
何故なら、危険だから。
こういった危険な汚れ仕事は、大抵冒険者に押し付けられる。
しょせん冒険者など消耗品。
失っても痛くもかゆくも無い訳だからね。
「この先に大型の気配がある。多分バジリスクだ」
彼の名はハンス。
金髪ロン毛の雰囲気イケメンだ。
不細工ではないが、決してハンサムではない微妙な顔をしている。
彼は弓を背負い、ハンターを気取っている1級冒険者だ。
イケメンを気取って格好をつけてはいるが、ちらちらとお嬢様を覗き見している辺り女にはモテなさそうである。
後、私の前でも無駄にかっこつける。
正直キモイ。
ハンターを気取ってはいるが、索敵能力は正直低いと言わざるを得なかった。
私は鼻歌交じりに、とっくの昔にバジリスクには気づいていた。
それを警戒しまくりの人間が今更ドヤ顔で報告してきたのだ。
へそで茶を沸かすとは正にこの事。
「坊やは下がってなさい。おねぇさんが一発で仕留めてあげるわ」
女魔道師がペイルに下がる様に促した。
どうやら彼女はショタコンの様で、何かとペイルに色目を使っている。
中身が爺とも知らずに哀れな女だ。
まあある意味お似合いと言えなくもない。
彼女の名はパフューム。一級冒険者。
年齢は20後半ぐらいだろう。
彼女は胸元ががばっと開いた、煽情的な真っ赤なローブを身に纏い。
良い女を気取っている。
お頭の弱そうな巨乳女だ。
顔は少々ケバく、化粧を含めても中の中の顔立ちでしかない。
よくその顔で良い女ぶれる物だと感心する。
「一撃で仕留められなかった場合、俺が抑える」
ルークが前に出た。
彼は要所要所をガードする白銀のルーン入りの鎧を身に着け、ロングソードを腰から抜き放つ。
イケメン長身と合わさって、ぱっと見は聖騎士の様に見える。
それだけにおしい。
なんで彼は
「君達も万一に備えていてくれ」
「ええ、了解したわ」
神妙な顔で返事したが、万一など起きるはずもなかった。
私達は全身を皮膜の様に魔力で纏っている。
バジリスクの攻撃や、体液による石化如き物の数ではない。
「世界に満ちるマナよ。姿を変え、業火となって我が前に姿を現せ」
パフュームが詠唱を始める。
唱えているのはヘルフレイムの魔法だ。
かなり上位の魔法なので、正直驚いた。
でも絶望的に詠唱が遅い。
あとそんな魔法を使ったら火事で森が焼けてしまう訳だが……
森を守るために来て火事を起こすとか、脳みそが機能していないのだろうか?
「おいパフューム。そんな魔法を使ったら森が火事になっちまうよ」
ハンスが気づいて注意する。
どうやらこの男の脳みそは、パヒュームよりは幾分かましにできている様だ。
「そ、そうね。変えるわ」
パフュームが詠唱を中断し、別の魔法を一から唱え始めた。
今度は氷の魔法だ。
そしてやはり詠唱が遅い。
「全てを貫き凍らせ!アイシクルランス!」
彼女の手から人間サイズの巨大な氷の槍が姿を現す。
この槍は貫いた物を瞬く間に凍り付かせる氷の上級魔法。
槍は真っすぐにハンスの示した位置へと飛んでいき、バジリスクを見事に貫いた様だ。
その証拠に辺りに魔物の断末魔が響いた。
彼女はドヤ顔で振り返り、妖艶――自分ではそう思っていそう――な笑顔で微笑む。
もちろん、その視線はペイルに釘付けだ。
ペイル。
お幸せに。
そう考えているとペイルにお尻を蹴られてしまう。
どうやらまた口から漏れ出ていた様だ。
てへっ☆
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