主人公は花街にいた。遊女を買うためではなく、薄雲と呼ばれる花魁にあることを相談するためだ。何でも、主人公の尊敬する先輩同心が、過去に起きた難事件を薄雲に解いてもらったというのである。花魁と言えば廓の奥の女。その女が現場に入ってもいないのに、事件を解くとは、一体――?
主人公は薄雲に出会い、事件のあらましを語る。小料理屋の娘が、器屋の丁稚の少年を見なくなった。器屋はそんな者は初めからいないと言い張り、何だか何かを隠しているようで怪しい。小料理屋の娘はその少年を探してほしいと言うのだ。主人公が語るも、薄雲は訳の分からないことばかり言うので、いったん引き上げ、先輩に相談する。
すると先輩は、薄雲が過去に解き明かした事件について教えてくれた。旗本の名家で、ある男が毒を盛られて死んだ。疑われたのは遊郭の女性。しかし、そこに薄雲花魁が現れ、残された文を見て、筆跡が容疑者の誰の者とも違うと言い放つ。そして薄雲花魁が見つけた真犯人は、意外な人物だった。
薄雲の神がかりな事件解決を耳にした主人公は、器屋へ赴き、器屋で出会った老人の口から、器屋が隠してきたことを知らされる。実は、この秘密を知ってしまった丁稚の少年は、何と――。
事件は、薄雲の匂わした形で解決したのだった。
まさに、江戸の安楽椅子探偵。
ミステリー好きな方も、時代物が好きな方も、
是非、御一読下さい。