第3話 転生ライフ②
~前回までのあらすじ~
突如、目の前に現れた真っ白な人により運命を翻弄された私は、気がつくと体が縮んでしまっていた!!白ずくめの奴の情報を掴むため転がりんだ家では2回も殺され、このままではいけないと筋トレをすることに!
小さくなっても頭脳は同じ!身体能力最底辺!真実はいつもひとつ!!
この物語は、不幸にもGになる運命を背負った少女が魔法を使える世界にて、どうにかこうにかして鑑定スキルを使えるようになるまでの話である。
「ふーっ。こんなところかしら」
自分で考えたストーリーに満足する。
こらそこ、パクリとか言わない。人生(G生)ふざけきったもん勝ちよ。
「それにしても鑑定スキルねぇ」
物語の主人公ってご都合主義じゃないの?私も鑑定したいよ。
「例えばー、炎とか水とかみたいにどんなものか分かってないとダメとか??」
自分で言って想像する。
レベルがあるならレベル表示して、魔力・攻撃力・防御力に、使える魔法とかスキルとかも。視認できるイメージとしてはやっぱり空中にウィンドウ表示かな。我ながらすごく王道なものをイメージしたと思う。
でもこういうのは使い勝手の方が大事よねうん。
「で、あとは呪文よねぇ。今までのノリで言ったら"鑑定よ"とか??」
少し期待を込めながら呟く。すると目の前に四角いウィンドウが現れる。
まじか。ご都合主義バンザイ。私も主人公の素質を秘めているんだな。というか、前フリしてた物語終わっちゃったよ。鑑定スキルを使えるようになるまでの物語とか言っちゃったよ。
驚きすぎて独り言をぶつぶつ言いながらウィンドウを眺める。
種族:ゴキブリ
レベル:2
HP:50
MP:50
攻撃力:20
防御力:10
アーッ。ついに名前が出てしまった。ずっとG表記していたのに!!モザイクかかってない?これ大丈夫??
それにしてもレベル低っ。 見える項目少なっ。
「使えないわ……」
見なかったことにしよう。心の奥底にしまっておこう。そうよ私、絶望的な数値だった気がするけれど、なんせ産まれたばかりだもの。これから成長期がきっと!
鑑定の方も、きっとレベルが上がったら色々見れるはず。だってそれこそ定番でしょ。
自分を納得させたところで筋トレ再開!ムキムキになるぞー!!
その日は昨日とは違い、平和な1日だった。殺されることもなく、死の危険を感じることもなく。
ただ、自分1人の世界で黙々と脚力を鍛えた。
「はーっ!!つかれたーっ!!!」
他にやることも思い当たらず、ひたすら走り続けた私は随分と脚力がアップした。
だがしかし、周りが暗い。時間の経過を感じられない。そして寂しい。一人ぼっち。
「と言っても、前世でも私とまともに関わってくれるのなんて妹だけだったけどね」
自虐ネタにふふっと笑う。笑い声は暗闇に飲み込まれた。虚しい。
「ここいらで、敵さんとか現れないかしら?カモンちゃん敵さんよ!」
前世で関わってくれたのは妹だけだったが、だからといって一人が好きでも一人に慣れているわけでもない。本当は妹を羨む気持ちが少しもなかったと言えば嘘になるし、同じ姉妹なのにっていう気持ちを1度も持たなかったわけでもない。
それでも妹のことが大好きだったし、嘆いたところで何も変わらないことは分かっていた。
長い人生、そのうち良いこともあるんじゃないかと漠然と夢見ながら生きてきたわけだ。
結果、Gになってしまったけれど。どんな姿形になってしまっても本質は変わらなかった。
だからこそ、この寂しい空間で誰でも何でも敵でもいいから出てきてくれないかと考えたわけである。
もちろん、言ったところで都合よく出てくるなんて思わなかったし、万が一出てきたところで多少鍛えただけの今、他の生き物に勝てる自信もなかった。
だから、出てくるわけないと思いながら言ってしまった。
言ってから後悔する間もなく、目の前がモクモクと煙で覆われていく。そしてあっという間に霧散し、かわりに大きな影が現れた。
「……ハロー、スパイダーちゃん」
Gってこんなに豊かな感情表現できたっけ?そう思うほどに自分の顔が引きつっているのがわかる。
ぎょろりとたくさんの目がこちらを見る直前に、条件反射からか一目散に駆け出す。
「ぎゃーっ!!!天敵やぁああぁあん!!!!」
やーーーん。
やーーん。
やーん。
めいっぱい叫んで辺りにこだまする声を置き去りにするがごとく、鍛え上げた脚力を発揮する。
ハァハァッ。ここまで来れば!!
無我夢中で走り回り、流石に疲れたと後ろを様子見る。
「よし!来てない!!」
よかったーと安堵からその場にへろへろと腰をおろす。荒い息を整えながら、ふと目の前に視線を移すと、ぎょろり、いくつもの瞳とこんにちは。
「っ!!!ひょえええええええええええ!!!」
情けない声を出しながらバックステップで距離をとる。
どうやら無我夢中に走り回った挙句、元の場所に戻ってきたらしい。Oh……なんという方向音痴。だかしかし、目の前に天敵がいる以上、覚悟を決めなければならない。自分の方向音痴を嘆いている場合ではない。
じっと蜘蛛を観察する。こちらを見ているばかりで動こうとしない。様子見か……?じりじりと距離をとりながら考える。
このまま戦って勝てるかどうかだが、まず勝てないだろう。鍛えたの脚力だけだし。走り込みだけだし。たとえ全力でキックしたとして、素人キックじゃ足をなくす可能性が高い。足がなくなってしまえばイコール死が待っている。
私に勝機があるとすれば、逃げることのみだろう。生きていればこちらの勝ちという、これが試合に負けて勝負に勝つという奴ね!
鼻息荒くそんなことを考えながら蜘蛛を観察し続けるが、一向に動く気配がない。
ふと思いつく。もしかして、お腹がいっぱいで興味が無いとか……??だったら生き延びるチャンスはある!
希望はどんどん確かな光になり、動かない蜘蛛を見つめながらさらに後ずさる。
蜘蛛を見つめながら後ずさるなんて、かつて運動音痴であった私がしてはならなかった。そう思ったのは全てが終わったあとだ。
最初は体のバランスを崩したのかなって呑気にも思ったのだが、視界の端に細長く光るそれを見つけて絶望を抱く。
間違いなく蜘蛛の糸である。
さすがファンタジー世界。前の世界の蜘蛛とは違うらしい。足を引っかけた瞬間、蜘蛛の糸が意思を持ったかのようにシュルシュルと私の体を拘束しだす。逃げる間もなく雁字搦めに縛り付けられ、これなんてエロゲー?そう思った私を誰か全力で殴ってください。
余裕の表情で近づいてくる蜘蛛に、来世は覚えとけよ!なんて念を飛ばしながら意識も手放した。
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