第12話 笑顔にさせる世界遺産
「私、クラスで変なあだ名付けられてない?」
『お?気づいたのね?』
「私、現世のクレオパトラって呼ばれてない?」
『呼ばれてないわよ。』
「嘘ー!みんな大丈夫?これから呼んでも良いんだよ!」
『どれだけ自分に自信あるのよ!?』
「じゃあ、なんて呼ばれてるんだ私?」
『カッパドキアよ。』
「河童とギア?」
『どんな組み合わせよ。カッパドキアよ。』
「カッパドキアって世界遺産の?」
『そうよ。』
「つまり、私の美しさには価値があり、世界的に見て保護対象にしても問題ないってユネスコ総会が判断した訳ね!』
『すっごいポジティブな脳みそね!?』
「参っちゃうなー。ハハハ!」
『安心して。違うからね。』
「じゃあどーゆう事??カッパドキアって何さ!」
『奈緒、肌荒れが凄い時があったじゃない?その頬の肌荒れ具合がカッパドキアみたいだったから。カッパドキアってあだ名がついたのよ。』
「はぁぁー!?!?」
『頬が半乾燥地域なのよ。良かったじゃない。名誉あるあだ名よ。』
「どこに名誉があるの!?」
『確かに奈緒は時々何言ってるか分からない時がある。トルコ語かな?って思う時あるわね。』
「嘘つけーい!!!」
『良かったじゃない。カッパドキアって良いところよ。行ったことも調べたことも無いけど。』
「どうしてペラッペラな嘘をつくの!!」
『奈緒に対しては脳を経由しないで言葉を発しているのよ。』
「ロボットみたいな事しないでよ。」
『ロボットでも、もう少し気を使うわよ。』
「でもちゃん美優は確かにロボットみたいな所あるよ?」
『ロボットみたいな所?』
「笑顔が嘘っぽいの!」
『ほほう。具体的に?』
「両親が早く死に、親戚に引き取られた女の子がいました。」
『急に何が始まったの!?』
「その親戚には3歳上のお兄ちゃん的な男の子が居て、両親を失った寂しさを埋めてくれるほど良くしてもらったの。そんな日常が続いていき、その女の子は3歳上のお兄ちゃんをいつしか異性の対象として見始めたのでした。だけど、季節は巡り、お兄ちゃんに彼女が出来ました。勿論、お兄ちゃんの幸せを望んでるから嬉しかったよ。でも、それと同じくらい寂しくて悲しい気持ちもあったの。そして更に季節は巡り、桜舞う暖かな季節。お兄ちゃんの結婚式です。お兄ちゃんが婚約者と教会で誓いのキスをしました。その光景を見て胸が張り裂けそうになった。自分が自分で居られなくなりそうな何かが込み上げてきたの。でも、お兄ちゃんの幸せを喜ばないと…。自分の全ての感情を押し殺したの。そして披露宴が終わって休憩の間にお兄ちゃんに会った。"来てくれてありがとな。"ってお兄ちゃんは言った。"うん!おめでとう。お兄ちゃん。"って私はとびっきりの笑顔で。全ての感情を殺して笑顔だけに力を注いで伝えたの。その時、私はうまく笑えたかな?………
って時の女の子くらい笑顔が分からないんだよちゃん美優は。」
『いや、長過ぎるわよっ!!!』
「長過ぎる???」
『例え話のことよ!こんな事も許されるようになったの!?』
「どうしたのちゃん美優?目を真っ黒にして。」
『誰が真っ黒よ!!!』
「ちゃん美優は感情を時々どこかへ置いて来るじゃん?だから私が刺激して、感情を出させてあげてるの。」
『奈緒が患者のリハビリに付き合ってるナース的なポジションにいるの納得いかなぁーい!』
「いいよ!その調子だよちゃん美優!」
『怒りの感情しか引き出せないの!?』
「あとは上手く笑えればね。ちゃん美優どうしたら笑える?」
『私、別に笑えるわよ。両親殺されていないし、精神安定してるわよ。』
「ニュース番組観て爆笑とかしてない?」
『どれだけサイコなの私!?しないわよ!』
「私、ちゃん美優が心から笑えるように頑張るからね!」
『大丈夫よ。奈緒がまた肌荒れ起こしてカッパドキアみたいになったら、心から笑ってあげるわ。』
「私は笑えないなぁ…。」
『人々を笑顔に出来る世界遺産よ。誇りに思いなさい。』
「どんな終わらせ方よ!」
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