第13話 美人にまつわるエトセトラ

「私ってハーフじゃない?」

『うん。ニューハーフに見えるわ。』

「性別変わってるよ!!!ちがうの!私ってほら、ハーブじゃん?」

『脱法なの???』

「違う違う。なんか最近やたらと外人に道を聞かれるんだよね?」

『それはお気の毒に…。』

「でしょ!!良い迷惑だよ!」

『よりにもよって奈緒みたいな英語も日本語もできない人間に聞いちゃうなんて。』

「あれええ?気の毒って外人に言ったのか!?」

『麻薬やってる人間に道を尋ねるなんて。』

「ハーブやってないわいっ!」

『でも、なんでまた奈緒に聞くんだろ。』

「私が美しからね!自然と皆んなが私のことを追ってるんだよ!」

『何言ってるの?』

「怖いなー。美しいは罪。それにこんな言葉があるよ。」

『どんな言葉よ。』

「美人薄命…。ほんと怖い言葉よ。」

『奈緒には関係ないわよ。』

「どーいう事!ちゃん美優ぅぅぅぅ!!」

『ブス長寿って言葉があってね。』

「美人薄命の対義語!!!?」

『まぁ、ブスとは思ってないわよ。』

「じゃあどう?私ってどう?」

『ちょっ…。圧が凄いんだけど。』

「ねえ、ちゃん美優!はっきり言って!!!私って、ぶっちゃけ可愛い???」

『うーん…。』

「はっきり言って!ね!」

『うーん…。うぅーー…。うーん。うーん……。そーいえば昨日バラエティ番組でさー…。』

「話逸らすほど困る質問だったかなぁぁぁーーーーーー!!!」

『まぁ、奈緒は長生きするわよ。』

「どーいう事!?もう、そーいう事だよね!泣くよ!!!」

『女性のお笑い芸人の中に入ったら、かなり上位だけどね。』

「褒めてるの?分からないよ!」

『それにほら、奈緒には良いところ沢山あるから。』

「それはどこですか!私の良いところを言ってみてよ!言って私を満足させて!」

『ちょっ…。圧が怖いって。』

「探してよ!就活8ヶ月目で血眼になって企業探ししてる就活生くらい必死になってよ!」

『そこまで必死には出来ないかなぁ。』

「私の良さって何!このままじゃ私は私が分からなくなるよ!」

『うーん。話しかけやすい外見してるところ。』

「話しかけやすい外見って何よ!!!」

『福笑いで適当にパーツ当てはめた感じの顔ってことよ。』

「うわぁぁぁぁんっ!」

『冗談よ!冗談。奈緒は可愛いわよ!』

「ほ、ほんとに…?」

『うん。外国人もこんな可愛い女性放っとかないわよ。』

「そ、そうだよね!千年に1人の廃材だもんね!」

『逸材じゃなくて良いのかしら…。』

「でも、外人私の事を見て、少し笑うんだよね。」

『ねえ奈緒、覚えてる?私たちが初めて会った時のこと。』

「突然どうしたのちゃん美優っ!?」

『幼稚園の頃、私が絵を描いてたらさ、"何を描いてるの?"って奈緒が言ってきたよね?』

「うーん、覚えてないよー。」

『私、まだ友達も居なくてさー。何となく奈緒は声を掛けてきたんだろうけど、私はそれが、すっごく嬉しくてね。』

「うん。」

『あ、この子、顔が面白い。福笑いで適当にパーツ当てはめたような顔してる。って思ったんだよね。』

「あれ?私の美談かと思って聞いてたら、あれ?」

『多分、この子はみんなから好かれる。福を呼ぶんだなって思ったわよ。』

「後付けしたでしょ!!!」

『外人が何故、奈緒を笑うかなんて考えちゃダメよ。』

「だって気になるんだもん!」

『気にしちゃダメよ。傷つくだけよ。』

「傷つくって何!私の顔見て笑われてるの?面白い顔だから声を掛けやすいってことなの!」

『深淵に踏み込んじゃダメよ。世の中には知る必要もない事があるのよ。』

「そんなに私の顔は深刻なの!!!?」

『いや、アイドルレベルよ…。』

「騙されないよ!私知ってるもんね!アイドルって95点の美女もいれば赤点ギリギリの31点の女性もいるもん!』

『アイドルに失礼じゃない!?』

「ちゃん美優が私に失礼なの!!!出会った時から思ってたの!?福笑いで適当にパーツ当てはめたような顔だなーって!」

『そんな事ないよ!奈緒は…。奈緒は…。……奈緒は…。そーいえば昨日バラエティ番組観てたらね…。』

「話逸らす程反論に困る質問だったかなぁぁぁーーー!!!」

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