第10話 夢を夢で終わらせない
「空を飛ぶ夢を見ました。」
『へえ、良かったわね。』
「ちゃん美優ぅぅーーー!」
『うるさいわね。静かにしなさいよ。』
「あ、ごめん…。じゃなくてっ!私空飛ぶ夢を見たんだよ!」
『へえ、良かったわね。』
「ちゃん眉ぅぅーーー!」
『眉じゃないわ。美優よ私。』
「あ、ごめん…。じゃないんだって!」
『テンション高いわね。』
「高いのはテンションだけじゃないぜ⭐︎」
『あら、そう。』
「いやいや、ちゃん美優?今日冷た過ぎないっ!?」
『他人の夢の話に興味湧くと思う?』
「だって空飛んだんだよ私!」
『そうね、そのまま大気圏まで飛んで身体ごと消滅すれば良かったのに。』
「ハハハ、おかしなこと言うね!夢で死ぬわけないじゃん!」
『じゃあ現実で殺してあげるわよ。』
「私、そんな悪いことしたっ!?」
『どうせ、"現実でも空を飛びたい!"とか言い出すんでしょ?』
「夢を夢で終わらせない!!!」
『アミューズメントメディアのCMみたいね。」
「違うんだよ!違うんだよ!ちゃん比喩!!」
『美優ね。表現技法になってるから。』
「空飛ぶ夢だよ!これって大変なことだよ!」
『どう大変なのよ。』
「空を飛ぶ夢ってね。精神すり減らされて現実が苦しい。逃げたい。どこか遠くへ行きたいって気持ちが強くなった時に見るんだって。」
『急に興味深い話になったわね。』
「つまり私に非常事態よ!」
『質問だけど、私は逆に高いところから落ちる夢をよく見るんだけど。それってどうなの?』
「良い夢だね!現実でも地に足ついてる証拠らしいよ。つまり、リアル充実してる的な。」
『ほんと?私リア充だったんだ!?』
「そして私はメンタル異常者!!さあ、助けて!!!」
『精神科行きなさいよ。』
「もうね、ここまで来ると現実でも空を飛んでやろうと思いますよ。」
『結局空を飛びたいんじゃん。』
「この自由な空を飛びたいの!ペンギンのように!」
『ペンギンは空を飛ばないわよ。』
「ファーストペンギンって言葉があるのに?」
『関係ないわよ?』
「うそーーー?ファーストペンギンって鳥類の中で一番最初に空を飛んだのがペンギンって意味の言葉じゃないの!?」
『違うわよ。最初にリスクの踏み台になる、生贄的なことよ。』
「それも違うと思うけど。今度調べときます。」
『まあ、そこまで飛びたいなら、飛べば良いじゃない。バンジージャンプとか。』
「おおっ!良い案じゃないか!」
『命綱凧糸で。』
「無理があるよっ!!」
『うるさいわね。くたばってよ。』
「もう少しオブラートに包んでよ!」
『くたばってよ。』
「今日はオブラート忘れてきたんだね!」
『私も今日に限って変な夢見て、ずっとイライラしてるのよ。』
「それで今日、私に対して冷たかったんだね。」
『奈緒に対してはいつも通り接してたよ?』
「うわ、泣きそう。」
『泣きたいのはこっちなのよー。』
「情緒が変だね?高齢者のチャリの漕ぎ方くらい乱れてるね?」
『よく分かんないけど。』
「初夜のベットくらい乱れてるね?」
『その例えは良くないなぁ。』
「どんな夢を見たの?ちゃん美優はどんな夢を見てしまったんだい?」
『なんかね。朝起きるじゃん?眠い中、朝食済まして化粧して制服に着替えて、さぁ出発だぁ!って玄関の扉開けたら…。目が覚めたの。』
「起きてから家出るまでの一連の流れが夢だったんだ?」
『そう。ほんとタチの悪い夢!損しかない!夢を夢で終わらせないで欲しかった。』
「アミューズメントメディアのCMみたいだねっ!?」
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