第3話 体重計様は見ている

「昨日さ、体重計に乗ったらさ。背筋がズズーッとしたんだよね。」

『ズズーッて何?ゾッとしたんじゃなくて?』

「いやね、ほんと麺つゆに絡めて食べるのが美味しくてね。」

『そうめんの話をしているの?』

「ちがう。ちがうって。最近贅肉が少し付いてきたなーって思って。あ、生姜取って。」

『最後の何?麺つゆに生姜溶かしてそうめん食べようとしてるよね?』

「違うって、天かすも入れてぶっかけうどんを食べたいの私は!」

『ほんと何の話?迷子なんだけど!?』

「ぶっかけうどんって少し卑猥だよねー。結局、冷たいのか温かいのか。よく分からないじゃん?」

『ねえ私帰っても良い?』

「違うんだよちゃん美優!私はね、少しお腹が出てきたかなーって…。」

『ああ、太ってきたってことね。』

「太ってないもん!!!」

『そんな、いきなり大声出さないでよ。」

「太ってないもん!!トトロいたもん!!」

『最近、見切り発車過ぎない?なんでもねじ込み過ぎるよ。』

「体重計に乗ったらさ、私の期待を裏切るんだよ体重計のヤツ。」

『多分、奈緒が体重計様の期待を裏切ってるんだよね。"なんだよ、思ってたより重くなってるな。さっさと痩せろよ饅頭が!"って体重計様怒ってるよ?』

「体重計様、口悪くないっ!?」

『奈緒が体重計様の口を悪くしたのよ。』

「どうしたら機嫌良くしてもらえるかなー。」

『痩せるべきだね。』

「ちょっとぉっ!まるで私が太ってるみたいな言い方じゃん!」

『体重計様に"痩せろよ饅頭が!"って言われてる時点で自覚してよ!』

「"饅頭が!"なんて言われてないし、そもそもちゃん美優の妄想でしょっ!」

『いやいや、体重計様は言ってるよ。"この饅頭。脂が多いな。小籠包にでもなるつもりか?"ってね。』

「それ、体重計様の気持ちじゃなくて、ちゃん美優の感想だよね?」

『いや、体重計様の気持ちだよ!』

「何故頑なに否定するの!?」

『とにかく、これ以上体重計様を怒らせないように豚肉は断つことね。』

「イスラム教徒みたいな…。」

『そのツッコミはどうかと思うわよ。』

「でも、それだけで痩せれる訳ないじゃん?いや、痩せないといけないくらい太ってないけど!」

『必死ね。』

「だって、太ってないもん!私、太ってないもん!あんたはだぁれ?トトロ?トトロって言うのね?」

『トトロみたいな体型で何を言ってるんだか。』

「ちゃん美優!!!怒るよっ!!!」

『まぁまぁ、落ち着いて。カレーでも飲む?』

「そこまでのレベルじゃないわいっ!くそーぅ!悔しぃぃっ!」

『運動でも始めなさいな。体重計様も気長に待ってくれるよ。』

「でも、体重計様に"こいつまだ痩せないのかよ?何回乗っても変わらないんだよ。鏡見てみろよ。"ってネチネチ思われるのも嫌なの!」

『体重計様は人じゃないんだから、別に気にすることないでしょ。』

「分かってないよ!ちゃん美優は!体重計様は私を見ているんだ!そして夜な夜な私の前に現れて、"今日も体重計の針は昨日と同じ数字を指してたけど、ワレほんまやる気あるん?"って話しかけてくるんだよ!」

『なんで体重計様、エセ関西弁なのっ!?』

「なんで、こうなったんだろう…。世界が私を太らせたんだ。」

『世界に八つ当たりし出したよ…。』

「そうめんが美味しすぎるのがいけないんだ。毎日二、三人前当たり前のように食べて。」

『原因それじゃん!!!!!!』


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る