第4話 花粉の季節になると…
「どうしたの?ちゃん美優?そんなにテレビに出ていないのに自分知名度高いと思って日常生活でもしっかり変装して行動するお笑い芸人みたいな格好して?」
『マスクと眼鏡してるだけでそんな言われるかね?』
「どうしたの?イメチェン?それとも万引きして変装して逃げてる最中?」
『友達に万引きって言える神経にドン引きだよ…。』
「え?まさか、イメチェンなの?」
『花粉症なの!!!』
「花粉症!?!?」
『対花粉用の眼鏡とマスクをしているのよ!』
「なるほど。そんな季節かー。」
『奈緒もマスクしてるじゃん!何のためのマスク?』
「え?花粉症だからマスクしてるんだよ?」
『今までの会話何だったの!?怖いよもうっ!』
「ほんと生きづらい世界だよね…。」
『どうしたの?遠い目なんかして。そんな深刻なの?』
「私ってさ、暑いのも寒いのも無理だし。秋と春は花粉でグロッキーだし。」
『地球に向いてないね。』
「でしょ!神様意地悪過ぎない?私をこの世に出荷する時テストしたの?」
『それとも、春夏秋冬に弱点を持つ人間というテストケースを奈緒で行ってるのかもね。』
「そんな、私の人生がテストケースの一つだなんて。悔しいザマス。」
『スネ夫くんのお母さんみたいな語尾になってるわよ?』
「所詮、私は神様の駒なのか。この世界は神様の盤上に過ぎないのか。」
『どうしたの奈緒?ちょっと怖いよ?』
「なら、やってやる。抗ってやる!私は人間!神様の頭脳を超えてやるんだ!」
『ほんと大丈夫?花粉よりヤバい菌に侵されてない?』
「花粉めー!渋谷諸共滅してくれる!」
『なんで渋谷が出てきたのーーー!?』
「渋谷でキャッチのお兄さんが無差別なくらい女性に声を掛けてたのに、私の時だけスルーしたの!」
『うわぁ、それって奈緒がルックス的にそんなに…。』
「それ以上は言うなぁぁぁーーー(泣)。」
『えっと、ティッシュいる?花粉用でたくさん持ってきてるけど。』
「柔らかいの頂戴…。」
『でもさ、花粉なんてみんなかかるし、慣れるしかないよ。』
「アナログから地デジになったみたいに?」
『ごめん。分からない。』
「勉強してる奴ほど、期末テスト当日に"やっべ俺全然勉強してないんだよね。マジ終わったわ!"って言って、ハードル下げてくるみたいな?」
『あ、それ少し分かる。なれないよねーーー。』
「花粉といえばね、昔ね。地域の交流会的なものでキャンプに行ってね。」
『あ、私それ風邪ひいて欠席したやつだね。』
「そうそう。それでね、谷くんって子が居てね。一緒に川で遊んでたの。で、少し目を離したら谷くんのサンダルしか残ってなくて川はなんだか波立っててね。ーーーあ、これ話したい内容じゃなかったや。」
『いや、待って!谷くんは!?ねえ、谷くんどうなったの?』
「そうそう。これはとあるキャンプの時の出来事でね。」
『ねえ谷くんは!?』
「地域の交流会でキャンプに行った時のお話なんだけどね。」
『なんか聞き覚えある始まり方だな!』
「夜はバーベキューだったんだよね。でね、私の席の隣には溺れ掛けてる所を大人に助けてもらった谷くんが居てね。」
『やっぱり溺れていたんだ谷くん!良かったね救出してもらって!』
「でね。谷くんが、よっぽど寒いのか火の近くまで行ってね。」
『溺れ掛けたからね。寒いでしょうよ。』
「そしたら、谷くんの服に火が移ってね。谷くんも、そのまま周りの声なんか聞こえないくらい大慌てして近くの川に飛び込んでね…。ーーーあ、したかった話、この話でもないな。」
『ねえ谷くんは!?花粉症で思い出すのが谷くんの惨事なの!?川に飛び込んだ谷くんどうなったの!!』
「テンション高いなー、ちゃん美優は。」
『真緒が訳わかんない思い出を話すからでしょっ!』
「そうそう。話したかったのはこの話だ。」
『ねえ、さっきの話の谷くんの結末は!?』
「昔ね、私が地域の交流会に行った時のお話なんだけどね。」
『それ聞くの3回目!!』
「谷くんって子が居てね。色々訳あって夜なのに川に飛び込んだんだよ。」
『そこ端折ると、頭イカれてる人みたい聞こえるわね。』
「で、谷くん体中震えて涙も鼻水も垂らしながら川から出てきたんだ。私がね近くに行って"なんで泣いてるの?"って聞いたらね。"花粉症なんだよ!放っとけ!"って怒ってきたの。」
『そこで花粉症繋がるの!?』
「だから、花粉症の季節になると思い出すなー。谷くんのあの顔。」
『忘れてあげなよ。強がって"花粉症"って言ったんだよ谷くんは。』
「そうか、谷くんも神様によって運気のステータスを0にされてこの世に送り込まれた、哀れな駒の一つなのか。」
『良かったね。仲間がいて。』
「ちゃん美優、少し面倒くさくなってない?」
『花粉に比べたら、可愛いもんよ。』
「私のお話、迷惑がってない!?」
『奈緒も渋谷諸共滅べばいいのよ。』
「今日だけで渋谷2回滅んだね。」
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