第2話 テルミドールの大反動

『解せぬ…。』

「どうしたのちゃん美優?生魚みたいな顔をして?」

『どんな顔のことよ?新鮮っぽいって事?』

「あ、間違えた。生ゴミみたいな顔をしてだ!」

『流石に失礼過ぎるだろぉっ!』

「落ち着いて!ほら!大好きな岩塩だよ!」

『うがぁぁっ!なんで私が岩塩好きだと思ってんのっ!』

「ちょっ!岩塩投げ飛ばさないでよっ!」

『なーおー(泣)。聞いてよーーー!』

「音楽を???」

『愚痴を!!!』

「どうしたの?何があったの?おーよしよし♫」

『あやす感じが癪だけど、まぁ聞いてよ。今日期末のテスト返しだったじゃん?』

「な、いや、数学28点じゃないしっ!」

『何言ってるの?もっと勉強しなって…。』

「国語も24点じゃないしっ!」

『なんで今日補習受けてないの!?』

「英語も42.195点じゃないし!」

『なんでフルマラソンしてるのよ!』

「え、私の点数が低過ぎて怒ってるって話じゃないのか!?」

『後でお母さんに怒られなねー。』

「じゃあ、何が解せないの?この前4丁目のラーメン店が潰れて、その土地に新しいラーメン店がまた出来たこと?」

『違うけど、確かに思ったよね。なんでまたラーメン店建ってるの?って。しかも同じ豚骨ラーメン専門店っていうね。』

「それも違うんだ。じゃあ何に納得いかないの?」

『だから、話を聞いてよ!』

「あいみょんは?」

『音楽は聴くなーーー!』

「さては、世界史のテストのことかなーー?」

『急に当てないでよ。頭おかしくなりそうよ。』

「ちゃん美優、なんか世界史の先生と揉めてたもんね。」

『そうなのよ。私、世界史がね98点でね。』

「わ、私の…。私の…。私の、4倍だと?」

『24.5点の方が凄いと思うよ。何が起きたの?』

「苗字だけ書いて、名前書かなかったら0.5点引かれたの。」

『アホだなー…。』

「で、97.5点のどこが不満なの?」

『私は苗字も名前も書いてるわっ!』

「何を先生と揉めてたの?」

『今回のテストでさ。問題の答えに"テルミドールの反動"ってあったじゃない?』

「あっ…。った。…のよ?」

『バグらないでよ。あったの!…。でね、そこを私は"テルミドールの大反動"って書いたの。そしたら間違ってるって言われて2点引かれたの。』

「まぁ、ほぼ正解だね。事を大きくしちゃったけど。」

『でしょ!事を大きくしただけなの!内容的には同じでしょ!?』

「いや、事を大きくしたから内容も違うと思うけど。」

『マルくれても良いと思う訳よ!なのにあの頭でっかちはーーー!』

「でもほら、良くないんじゃない?"本能寺の変"だって事を大きくしたら"本能寺の大変"になるし。」

『どこに"大"を付けてるの!』

「"桶狭間の戦い"だって、"大桶狭間の戦い"になるし。」

『うわ、一気に言いにくくなったな!"大桶狭間の戦い"って。』

「でしょ?何のことを言ってるのか分からなくなるでしょ?」

『世界史24.5点の人に言われるとなんか納得できないなぁ。』

「四捨五入したら、100点だから。」

『どこを四捨五入したの!?20点か0点だよ?』

「まぁ、これからはテルミドールの反動って書けば良いじゃん。」

『次、テルミドールと出会う機会があるのかなぁ…。』

「納得した?」

『解せぬ…。私の100点が…。』

「もおー。ちゃん美優はこれだから。ってあれ?あそこの新しく出来たラーメン店から出てきたの、世界史の先生じゃない?」

『ほんとだ。奈緒、あそこに落ちてる岩塩借りるよ?』

「え、いいけど何に使うの?」

『あの頭でっかち。どれくらい頭硬いのか確かめてくる。』

「ちょ、ちゃん美優!?ちょっ…。うええええええ!?!?!?」



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