5・滲む文字
夕焼けの光が窓から差し込んできた。
壁掛け時計の秒針はしかと毎秒時を刻んでいた。春の風が窓ガラスをガタガタと揺らす。
洗濯物を取り込んだり食器を洗わなければいけないが、どうしても続きが気になってしまう。元恋人からの手紙の
二枚目を手前に持ってき、また読み進める。
「――かったね。
あの時は弁解の余地も与えずに振ってしまってごめんなさい。もっと、しっかり話を聞けばよかったって思っています。
あの後、君の親友くんから詳しい事情を聞かされました。悪いのは君だけじゃなかったんだと、知りました。
間違った情報で君を罵った事も後悔しています。本当にごめんなさい。
私は春からまた新しい境地で頑張っていきます。君もこれからも、頑張ってください。
応援しています」
あいつ、代弁してくれたんだ。
そう最初に思った。
読んでいると二箇所ほど文字が滲んでいた。
多分、形状からして涙で紙がふやけたのだろう。
新しい境地……。俺はいつもと変わらず一人暮らし。
読了し右下に書かれた名前を見る。
そこには、見慣れない名字に書き換えられた名前が綴られていた。
読み終えた手紙を封筒に入れ、肩の高さにある窓をゆっくりと開けた。目を瞑って大きく息を吸い新鮮な空気を体内へ循環させる。
そして噛みしめた唇を緩め、一言呟いた。
「おめでとう」
2:06 観葉植物 @house_plants
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