第14話 ギフト




 俺は街から出て、森に入った。

 やりたい事とは、剣術と弓術の力を確かめることだ。

 アイテムボックスから購入した剣をだす。

 とりあえず振ってみるのだが……。


「あれ?思ったより重いか……?」

 自分が思う、振り回せる剣の重さより重いこの剣。


「買う剣ミスったか……」

 もっと軽い剣を買うべきだったと今更ながら後悔する。


 これじゃ戦えないぞ……。


 そんなことを思っていたら……。


『天国の神からのギフトが届きました。補正を開始します』


 だいぶ(?)おなじみになってきたあの声

 またかーい。


 ギフト? 補正?と思っていたら、俺の剣が急に輝き出した。

 びっくりして思わず手放してしまう。


 しばらくすると、輝きはおさまった。


「?なんだったんだ、今の……」


 そう言いながら、落とした剣を持ち上げると、違和感が。


「? ……軽い?!」


 もう一度振ってみる。


 スパァァァァァン!!


「……はへ?」


『は?』


 音に驚いたリューも含め、何が起こったか分からなかった。


 のだ。


 誰が?


『お前だ』


 で、ですよね……。


 いや、待て!!補正とは?!


 調べるためにまず剣を鑑定。


〈神が強化したソード〉


「きょ……強化ぁ?!」


 驚きながら続きを読む。


 ・このソードは、元はシードレアの武器屋で売られていた最高級の剣である。それを天国の神がさらに強化したのでこの世界最強の剣となっている。

 ・それなりの技量の者が持てば一撃でドラゴンを倒すことができる。誰でもワイバーンなら倒せる。

 ・空振りするだけで爆風による攻撃が可能。



「『…………』」


 俺とリュー、しばし絶句。


 そして、

「なんてことしてくれたんだ神様ァァァァァァ!!!!」

『なんだこれー!!』


 こう一言。


 そりゃ巨木も切れちゃうよ。


 やりすぎだっつの。


 もう一度振ると、数メートル先の巨木がバッサリ。


「えええええ……」


 こりゃあ弓しか使えなくなったぞ。


 気軽にこんなの振り回したら被害がとんでもないことになる。


 アイテムボックスに封印。


『な、なんでじゃぁ』


 ん?なんか聞き覚えのある老人の声が……。

 気のせいか。


『お前、剣絶対に俺に向けるなよ……』


「なんで?」


『一撃でドラゴンが倒せるって、おかしいだろうが!』


「あー。腹たったら向けるかも」


『やめてくれぇ』


 リューを脅す方法が見つかった。


 ***


 天国。


「な、なんでじゃぁ」


 こう声を発した天国の神様はそのままソファの座り込んだ。


「使わんのかい……」


 この人こそケータの剣をとんでもない剣にした張本人である。


「助けてあげようと思っただけじゃのに……」


 この神様、ケータが何を望んで異世界に行ったかすっかり忘れてしまったらしい。


 ***


 次は弓だな。


 アイテムボックスから弓を出す。


「あ」


 矢が無い。


 ……作るか。


【物質創造】と【物質形状変化】を使ってせっせと矢を作っていく。


 気がついたら百本以上できていた。


 もういいか。


 矢を弓につがえる。


 キリキリと引き絞り、放す。


 ヒュンッ


 空を切り裂く矢の音がして、コッと木に当たる音。


「狙い通り!」


 思ったように飛んだので、次の矢をつがえようとしたら。


『天国の神からのギフトが届きました。補正を開始します』


「『ま、またぁ?!』」


 剣と同じように弓が光る。


 補正するところなんて無いっつの。


 光が収まった。


 もう一度矢をつがえ、引き絞る。


「あれ?」


 先ほどより軽く引けることに気がつく。


「おお、これはいい」


 矢を放す。


 ズォォォォォン……。


 明らかに異質な音。


 あ、やばい、と思った時には手遅れ。


 先ほど矢を当てた巨木を貫き、大穴を開けた。


「神様なんてことしてくれてんだぁ!!」

『こっちもやべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』


 こちらも鑑定してみる。


〈神が強化したボウ〉


 一瞬ボウってなんだ?と思ったが、「弓」の英語だとわかる。

 なんか日本語と英語が混ざっていて、わかりにくい時がある。


 ・このボウは、元はシードレアの武器屋で売られていたかなり良い弓である。それを天国の神がさらに強化したのでこの世界最強の弓となっている。

 ・それなりの技量の者が、ドラゴンの硬い皮膚をしっかり貫通して心臓を一撃で破壊できる。ワイバーンなら誰でも倒せる。ただし、当てないといけないので、取り扱いは難しい。


「『…………』」


 速攻で封印。


「ォォォ…………」


 神様の嘆き声が聞こえた気もするが、完全に気のせいだ。うん。



 ああ、無駄な買い物してしまったかもしれない。

 売却しようにもできないよこんなの。


 もし売却したら……。

 なんも知らん奴が中古でこの武器買って、めちゃくちゃなことになる。うん、おしまいだ。


 結論。永久封印。


 やることがなくなってしまったので、ちょっとだけ魔法の制御の練習をして、宿に戻る。


 お金もないし、今日はゆっくりしようっと。


 ***


 宿に戻ったらまず、昼飯だ。

 美味しいシーフードパスタを食堂でいただいて、部屋に戻る。


「あ、何しよう……」


 現代日本みたいにゲームはないし、第一電気が普及していない。

 テレビもない。


 何をしようか悩んだ挙句、寝ることにする。


「おやすみー」


『待てコラァ!!』


 リューに突き飛ばされる。


「な、なんだよ……」


『メシッ!!』


「あ、すまん」


 すっかり忘れてた。


 先ほど剣と弓を使ってみたあの森に戻る。


 キッチンカーを展開し、料理を開始。

 リューの分だけ作ればいいので、結構楽だ。


 大きいフライパンでとりあえずステーキを焼く。

 やっぱりステーキは楽だ。


 焼き上がった特大ステーキをリューにあげてから、何を作ろうか考える。


 結果、レッドビッグピッグのコマを使って、母がよく作ってくれた炒め物を作ることにする。


 母を思い出して、現代日本のことを考えながら作った。

 ちょっと涙が出そうになった。


 ただ、涙を流してる場合じゃないほどリューはたくさん食べるので、一生懸命作る。


 コマ肉は無くなった。


 満足してくれたのか、食べ終わって寝てしまったリューを見ながら、どうせならと時間があるうちに、時間のかかる料理を作り置きしておこうと思う。


 ビーフシチューや、角煮など、普段は作れなさそうなものを作っていく。


 特にビーフシチューは、ウォーターウェイ・タウンで食べた絶品のそれを思い出しながらじっくり煮込む。



 気がついたら夕方。


「そろそろ戻るか」


 宿に戻って、夕飯の前に風呂に入ることにする。


 風呂から出たらちょうどいい時間だった。


 リューに、作った大量の角煮をあげて、一応いつでも外に出れるよう窓を開けておく。


「外出てもいいけど、騒ぎ起こさないでよ」


『りょーかいりょーかい』


 本当にわかってるのかなぁと思いながら食堂へ。


 今日も海鮮物をたくさん食べる。


 刺身があって、思わずめちゃくちゃ食べてしまった。


 ちょっとだけ腹が痛くなってきた。

 流石に食べすぎたか……。



 部屋に戻る。

 食べてからすぐ寝るわけにもいかないので、アイテムボックスの整理をすることにする。


 1時間ぶっ続けでアイテムボックスの整理を続け、


「そろそろ寝るか」


 眠りについた。


 ***


 目が覚めた。


「今何時だ……?」


 寝ぼけ眼でアイテムボックスからスマホを取り出し、時刻を確認。


「や、やややややややばーい!!」


 現在11:59。


 今日は買取査定終了の日。

 冒険者ギルドに行かないといけない日だ。


 しかも


 まずい。


 もう昼だ。


 なんでこんなに寝てしまったんだという自分への怒りと、よくこんなに寝れたなという不思議さを感じながら、着替えて、身支度を済ませ冒険者ギルドに走る。

 あ、リューいない。まあ、いいか。


 さて、こんな時こそ【地図】だ。地図を見ながらめちゃくちゃ走ると、すぐに着いた。


 今は12:10だ。


 まあ、昼だな。


 ギルドの建物の中に入ると、


「ケータ様ですねっ?!こちらへ!」


 んん?!

 なんだなんだ?!


「ギルドマスターとの直接取引です」


 なんでやねん。

 またかい。


 思わず関西弁。


 前回の取引と同じような部屋に通される。

 中のインテリアは少しだけ派手な感じに変わっていたが。


「お待ちしておりました。ギルドマスターのウィンです。よろしくお願いします」


「あ……、はい。よろしくお願いします。ケータです」


「どうぞ、おかけください」


 大きな椅子に座るように促される。


「早速取引の話なのですが……」


「……」


「ケータ様のお持ちいただいた買い取り品は、どれもこれも良い状態です。特に、一体のゴールドビッグピッグはここ数年見ない品質の良さです。よって、買い取り金額を484600イェンとさせていただきたいと思いますが、よろしいですか」


 十分すぎだ……。

 めちゃくちゃお金が入った。


「お願いします」


「では、こちらが買い取り金です。どうぞご確認ください」


 一応、きっちり揃っていることを確認する。


「ありがとうございました」


「こちらこそ、良いものをありがとうございました。またのご利用お待ちしております」


 ギルドの建物を出て、一旦宿に。


 リューは部屋でめちゃくちゃ怒って待っていた。


『遅いっ!!腹へった!!』


「す、すまん……」


 慌てて作り置きステーキをあげる。

 もう無くなった。

 また焼かないとな……。


 さて、お金も手に入ったことだし、港の方でお昼ご飯にしようかな。


 そう考えて海のほうに向かう。


 思わず目に入ってきた綺麗な海を眺める。


「おお、綺麗だな……」




「ウワァァァァァァァァァァァァァァァ」


 突如叫び声が。


「なんだ?」


『ウルセェ奴だな……』


 声の方に顔を向ける。


「なっ…………!!」


 思わず絶句。


 そんな俺を見て、ただごとじゃないと感じたリューもカバンからほんの少しだけ顔を出して外を見る。


『おおう……』


 リューも結構驚いている。


 海面から顔を出しているヤツに。


「まるでメガロドン……」


 小さかった頃に読んでいた図鑑の絵を思い出しながら俺は呟いていた。





 これも一種のギフト?!

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