第13話 海辺の街に




 門を通った先は、レンガでできた建物が並ぶ海辺の街。

 現在は夕方に近づいてきた頃。ちょうど3時ごろで、この世界でもおやつの時間として、カフェに入る人や、家に入って軽食を取ったりする人が多い時間だ。

 多くの人がカフェで休憩を取っているのが見える。


 スキル【地図】によると、この街は「シードレア」というらしい。

 この名になった理由は不明。

 この街はまだいいが、街の名がなんか適当な感じがしないでもない……。

 今更な感じはするが。

 セントラル・シティとか、ウォーターウェイ・タウンとか……。

 なんか設定だけ手抜きされたゲームのように感じてくる。


 しかし、名前なんてどうでもいいというのも正直感じる。

 のんびり過ごせればいいのだから。


 そろそろ家も欲しい気がする。のんびり家庭菜園なんか作ったりしたいな……。


 それは置いておいて。

 冒険者ギルドの建物を探して歩く。

 こういう時は、どうしてもじゃない時以外はスキルの地図は使わない。

 自分で探した方が楽しいに決まっているし、面白い店も見つかるかもしれないからだ。


 数分歩くと、セントラル・ノース・シティにあったものと同じような冒険者ギルドの建物にたどり着いた。


「はぁ、着いた……」


 結構歩いた。

 ほとんどの建物がレンガで出来ているせいで、どこを歩いても同じ景色に見えてしまう。

 もしかしたら冒険者ギルドの建物すらもレンガでできているのかと思ったが、そんなことはなかった。

 普通に石や木でできた建物だ。


 中に入る。

 冒険者ギルドの建物は全て同じ造りをしているようだ。

 迷いなく買取の窓口に着いた。


 流石にバハムートは恐れ多くて出せないが、他のレッドビッグピッグなどの魔物を買取に出した。もちろん肉や食べられる部位はなるべく戻してもらう方向で。

 もったいないし、めっちゃ食うし。

 だが、めちゃくちゃお願いされたのでレッドビッグチキンだけは肉をいくらか売ることにした。


 だが、これだけでもかなり驚かれた。

 まあ、Tシャツにズボンの装備もつけていない、全く冒険者でない風貌で、武器も持ってなさそうな野郎がこんな魔物出したら驚かれるわな。出した魔物は大体討伐難易度が高めだし。

 まさか旅の連れ(リュー)が獲ってきたなんて言えないし、仕方ない。

 だが……。バハムートもあるんだよな……。出したら卒倒されそうなので出さないけど。でも、いつか売ろうとは思っている。


 そんな感じなのですごく疑わしい目を向けられたが、肉が受け取れないとどうしようもないので、前と同じように言い訳をして納得してもらった。


 明後日の昼ごろに肉などを取りに来る約束をして、冒険者ギルドの建物から出る。


「流石に装備は揃えた方がいいのかな……」


 毎回驚かれるのはめんどくさいし。


 剣ぐらいは買ってもいいか。


 なんせ、スキルに【剣術】やら【槍術】などがあるからな。

 とりあえず剣でも買ってみるかな……。


 そう考えた俺は、武器屋を探して歩き始める。


 さっき見つけた気がするな……。こっちか?


 見当をつけてそちらに足を向ける。


「あ、あったあった」


 しばらく歩いて見つけた。

 看板にすごーく雑な文字で「武器屋」って書いてある。


 結構重たいドアを押して、店内に入る。


「いらっしゃい!」


 すごく体が大きい店員さんに話しかけられた。


「どんな武器を探してるんだ?」


 予算は……100000イェンかな……。

 一応300000イェンくらいは残ってるけど、そこまで武器にお金をかけたくない。


「剣を探しているんですけど……」


「ほう!ならこっちだな!この辺に剣がある!」


 おおすげぇ。


 金属でキラキラしてる。


 ……あれ?

 1番高いので150000イェンか……。


「品質は保証するぜ。だが、もっと強いのを求めるなら冒険者ギルド直営の武器屋に行った方がいいぞ」


 へぇー。まあ、別に使い倒すわけでもないつもりだし、いいか。ちょっと予算は超えるけど、これにしようかな……。


「これでお願いします」


「は?!まじで言ってるのか?!値札見たのか?!」


 失礼な。


「大丈夫です。これでお願いします。お金はありますので」


「わ、分かった」


 しっかりお金を払い、剣を受け取る。


 店を出ようとした時に、目に入ってきた。


 弓が。


 弓、いいな……。援護には役立つな。


 なんならなんかあった時、リューと共闘するなら弓の方が酷使するかもしれない。っていうか、絶対剣より使う。


 ちょっと弓も見てみる。


 弓は高いので60000イェンちょっと。


 お金……。


 いいや!買っちゃおう!

 どうせ明後日はお金入るだろうし。


 最初は武器にお金をかけたくないとは言ったものの、やっぱりいいものを買った方がいいし。


「これも買います!」


 もう店員さんは固まるしかなかった。


 ***


 武器を買えた俺は、どうしようか悩む。


『腹減ったぞー』


 念話でリューがこう一言。


 現在は4時過ぎくらい。


 今日はおやつ食べてないもんな。ちょっと遅めのおやつにするべく一旦街を出て、近くの森に入って、ちょっとしたパンケーキを焼く。

 ちょっとしたとはいいながらも、リューには超大型のパンケーキを頑張って焼いた。


 おやつを食べ終わり、もう一度街に入る。


 リューは再び寝た。


 さて。


 俺はもうそろそろやってみたいことがある。


 宿に泊まることだ。


 っていうかそもそも風呂に入りたい。

 と、いうことで、良さげな宿を探して歩き回る。


「あ、ここいいな」


 看板に風呂付き、食事付きと書いてある。


 いいねいいね。

 ここにしよう。あとはお金の問題だけどな。


「いらっしゃいませ」

 受付のおばあちゃんだ。


 老舗の雰囲気がすごい。

 いかにも代々続けてきましたよという雰囲気がする。


「とりあえず2泊したいんですけど……」


「1泊20000イェンですから、40000イェンいただきます」


 なんか高い感じがしてしまった。

 すっかり忘れていたが、現代日本と比べても当てにならないんだった。


 お金は足りているし、ここで決定だな。


 前払い制なので、2泊分のお金を手渡し。


「ではこれが鍵になります」


 鍵を受け取り、部屋に向かう。


 すごくワクワクする。

 久しぶりにベッドで寝るな……。


 俺の部屋は最上階の三階だ。

 もちろんエレベーターはないので、階段を登って三階まで登る。


 俺の部屋は三階の1番奥にあった。


「すごく出かけにくいじゃねぇか」


 文句を言ってしまったが。


「あ、すげぇ!!」


 部屋に入って荷物を置いて、窓から外を見ると、絶景が広がっていた。


 ちょっと傾斜のあるところに立地しているこの宿の、俺の部屋からは、この街が一望できる。

 実質五階の高さから街が見下ろせる感じだ。

 この街に三階建て以上の建物はないので、余計に景色がいい。


 綺麗な海も見えて、俺が払った金額と釣り合ってない気もしてきた。

 かなりラッキーだな、俺は。


 ま、この部屋から外に出るのは結構大変だから、そんなもんなのかな。

 納得した俺は、とりあえず必要なものを持って、外に出る。


 目的は海鮮物を仕入れること。


 海の近くにある市場に向かう。


 市場に近づくにつれて、潮の匂いがすごくなってくる。


 市場にはたくさんの海鮮物が売ってあった。


 日本のスーパーにありそうなものは揃っているし、結構高級な魚も売っていた。

 もちろん貝や蟹、わかめなんてものもきっちり揃っている。


 そして何より、どれもこれもやたら安い。


 マグロがまるまる一尾で20000イェンちょっと。

 なんでやねん。

 思わず突っ込んでしまう。


 流石に安すぎだろ。


 ズワイガニも特大のくせに5000イェン。


 鮭も一尾300イェン。


 おかしいだろ。


 もちろん買えるだけ買い込んだ。

 魚から甲殻類、海藻まで。

 ここで買わないといつ海鮮物買えるか分からないしな。




 ……結果もうお金がない。

 流石に買いすぎたか……。


 お金がなくなるってやばい。

 やっぱり安心感みたいなのがある。


 ていうか、宿が前払いでよかったよ。

 めちゃくちゃ助かった。

 もし後払いだったらお金足りなくなってた。

 断言できる。


 買い物を終え、宿に戻る。


 お待ちかねの風呂だ。


 リューに風呂入ってくると言ったら、『俺外行く』と。

 絶対に騒ぎを起こさないことを約束し、送りだす。

 ご飯も適当に魔物を狩って食べるんだとさ。

 いつでも帰って来れるように窓は開けておく。

 なんか半分ペットみたいになってきた。

 いいのかな。

 いいか。


 部屋に備え付けの風呂に。


 大浴場が恋しいが、仕方ない。


 しっかり体を洗って、湯船に浸かる。


 いつもは魔法でシャワーを作り、それで体を洗って済ませていたので、湯船が嬉しい。

 のぼせるまで湯船に浸かっていた。


 風呂から出て、着替えた後は、飯の時間だ。


 宿の一階のレストランに向かう。


 海鮮物をたっぷり楽しむ。


 美味しく食べ終わった後はもう寝るだけだ。


 久しぶりのベットだー!!


 ダイブしてベッドに飛び込み、速攻で眠りについた。


 ***


 翌日、帰ってきていたリューに、作り置きしていたステーキを出してやる。


 そう、作り置き制度を始めたのだ。


 もうこの街にくる一週間前には始めていたのだが。

 なんらかの事情で料理ができない時のために作り置きしておいて、それを食事にするのだ。

 今日は俺はレストランで食べるので、作り置きのステーキを出してやったというわけだ。


 レストランで朝限定のバイキングを楽しんだ後は、俺にやりたい事があるので、必要な荷物を持って宿を出た。


____________________________________


読んでくださりありがとうございます。














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