第11話 迷子から始まった大騒動




 俺が迷子になってしまった……。


 まずいな。道がわかんない。


 ……地図があるんだった。

 忘れてたよ。


 早速スキル【地図】を使って、野宿場所へ戻る。


 歩いていると……。


「聞いたか?!ドラゴンが現れたぞ!!」

「まじかよ?!逃げろぉー!!」


 と、大声が。


 ……?


 ドラゴン?


 なーんか……なぁ……。


 何かが引っかかる。


 首を傾げていると、


「早く逃げるんじゃそこの若者っ!!」


「な、なんでですか?!」


「ドラゴンが現れると、そのドラゴンに挑戦する魔物が現れるんじゃっ!!この街に来たから、逃げないと巻き込まれる!!逃げるんじゃ!!」


 ええー?!

 なにそれ!!


 夜だからか、パジャマのようなものを着用したまま逃げてる人が多い。


 すごい悲鳴が街のあちこちから。


 で、ちょっと「ん?」と。


 俺が立っている位置から、建物の間を介してちらりちらりと何か見えるんだけど。


 なんか見覚えあるな、と思ったらリューだった。


「ええええええええ!!!!!!!!」


 なんで街にいるんだよ?!


 慌ててリューのところに行ったら、もうすでに一体の魔物とドンパチやってて。


「どうしよう……」


 すでにこの辺には人はいない。

 助けは呼べない。まあ、呼べてもなにもしようがないから同じか。


 困っていると、上空から飛行できる魔物が次々やってきた。


 やべ、一回逃げよ!!

 このままだと俺がやられちまう!!


 走ってこの場を離脱しようとしたら、


 ……うわっ!!!!


 行手には、猪のような魔物や……あれはもしや、グリフォンっすか?!なんでそんな凄そうな奴がいるんだよっ!!

 とにかく、そいつらに行手を阻まれる。


 やばいやばいやばいやばい!!


 どうしよう?!


 ちゃんとあの時逃げればよかったぁーーーー!!!!!!!!!



 俺を敵と認定してジリジリと追い詰めてくる魔物たち。


 リューには助けてもらえないし、こうなったら!!!!!!


【透明化】〜。


 発動させる。


 ……。


 いや、敵は俺を見失って「どこいったあのクソガキぃ!!」ってなってるけど、


 ヘタレか俺は!!!!!


 こう言う時こそ自分で自分の身を守らなきゃいけないんだろ!!(謎の闘争心)


 俺は透明化を解き、真っ向から魔物たちと向き合う。


 再び俺をロックオンした猪魔物バージョンは、すごいスピードで俺に向かってくる。


 わ、ヤベェ、どうする?!

 もう一回透明化するか?!

 またヘタレモードに。


 ああ、もうだめだ。

 そう思って目を瞑った瞬間。


「ガキィィィィィン」


 は?


 なんで?!


 猪魔物バージョンはなぜか俺の1mほど手前でナニカに吹っ飛ばされた。


 俺は原因がわからず数秒固まる。

 だが、チャンス。


 今だ!!


 俺はすかさず、適当に雷を落とすイメージで雷魔法を発動。次の瞬間。





 爆音とともに、魔物全体が消え去る。……正しくは、細かい塵を残して消え去った。


 え?


 ええ?


 えええ?


「なんで?!」


 まさか一発で全員死んじゃうとは思わなかった……。

 リューじゃないし、足止めしてその間逃げることができればいいって思ってたのに……。


 自分のやったことに手足が震える。

 グリフォン含む数十体の魔物倒しちゃったよ……。


 しかも、ちょっとした雷を落とすイメージで魔法を使ってあれだから、もしかしたらもっと強い魔法が使えるかもしれない。


 歩く発電所になれる……。


 っていうか、黒焦げになったりしないの?おかしくね?

 消え去ったんだけど。


 異世界だからいいか。

 ……うん、いいや。



 あーあ、せっかくだから肉の回収したかったなー。

 食えそうなものあったじゃん。



 でも、気になってることが一点。


 なんで猪魔物バージョンがこっちに向かってきた時、ナニカに吹っ飛ばされたように感じる。


 俺のスキルなのか?


 そう思ってスキルの画面を見ると、大当たり。


【全方位バリア 異世界人強化版】の文字が。


 ああー、これだわ。これで間違いない。これしかない。


 効果を調べることにする。鑑定をつかて調べてみる。


【全方位バリア 異世界人強化版】

 敵(害意のあるもの)の攻撃を、物理・魔法問わず全方位から受けずに済む。

 異世界人強化版なので、有効期限、ダメージ上限一切無し。


「…………」


 沈黙しかない。


 なんなんだこのチート。


 っていうか通常版だと有効期限もダメージ上限もあるのかよ。


 もうわけわからん。


 しかも、ダメージを受けてもなんとかなってしまうスキルが揃ってる。


 なんだこれ。


 天国の神の加護とか、超高度治癒魔法、自動危機回避、体力や魔力の自動回復など。


 なんなんだこれ。


 身を守れすぎだろ。


 のんびり生活を望んだだけでこれ?


 まあ、後からどんどん付け足されてる状況ではあるけど。


 って言うか魔力とは?


 なんだろう、魔力がなくなれば疲れるとか?単純に魔法が使えなくなる?

 なんにしろありがたい気がする。


 まあ、それはいいや。


 で、リューの方を向けば、結構苦戦してるようで。


 まあ、流石に50体近くの魔物に囲まれたら、あんな風にもなるわな。


 ……ちょっと助けようか。


 竜巻で、リュー以外の魔物を吹っ飛ばすイメージを浮かべながら風魔法を発動。


 いけるか……?!


 リュー、当たったらごめんな。


 数秒後。


 50体以上いたはずの魔物は細かく散り散りになって忽然と消えた。



 うん?


 またか?!


 リューもポカンとしている。


 またしても威力が強かったらしい。

 ちょっと手助けするつもりだったのに、俺が全部倒しちゃった。


 っていうか散り散りってなに?


 細かい破片が散らばってるんだけど。


 なんで?


 吹っ飛ばすイメージでいったのにな……。


 まあ、いいか。


「ガァァァ!!!!」


 訂正。全く良くなかった。


「な、なんで追いかけてくるのさ?!」


 今度は念話でリューが、


『お前ぇ、俺の獲物横取りしたなぁぁぁ?!』


「横取りじゃねーって、助けてあげようとしただけじゃんかっ!!!」


『お前が全部全部倒しちまったんだろうがぁぁ!!!!』


「ごめん、ごめんって!」


『地の果てまで追いかけてやるわぁぁぁ!!!!!!!!』


「ウギャァァァァ!!!!!!!!」


 叫びながら逃げるもんだから、なんだなんだと街の人たちも見てくる。


 やばいっ、なんとかして誤魔化そう、旅にくっついてきた、一応の俺の連れだってことがバレたら、この街から追放、そして出禁へと追い込まれかねない。


 とりあえず街の外を目指して突っ走る。


 街の門を出ても、リューは追いかけてくる。


 この状況じゃ、バイクも使えない。


 仕方ない、【透明化】だ。


 発動させると、リューは俺を探してあっちに行ったりこっちに行ったり。


 さて。ここからどうしよう。


 このまま逃げてもいいけど、それはそれでもっとダメな気がする。……その、ね。人間的にっていうか。

 そもそも逃げれるかも謎だし。


 これは透明化したことで逆に詰んだパターンかもしれないぞ……。


 よし。仕方ないので、透明化を解き、続けて土下座。これでどうだっ!!


「すんませんでしたぁぁぁぁぁぁ」


『ゴラァァァ!!』


 やっぱり怒ってるー!!


 すぐ気付かれた。

 どうなってんだあいつの目は。


 あ、やばい、突っ込んでくるっ!!!


「ガキィィィィィィン……」


 あ、そうだった、バリアあるじゃん。


 鬼ごっこで使うとチートじゃねーか。


 やる機会ねーけどな。


 って、違う違う。


「すまん、ちょっと助けるつもりが、力入れすぎちゃいましたっ。お詫びにステーキいっぱい焼くので許してください!!!」


『言ったな?ステーキだぞ?』


 バッチリ聞こえてるー!


「わかったわかった」


 なんとかリューの怒りを収めるのに成功。


 そして一旦野宿場所に。


 まあ、その後、大量にステーキを焼くことになったけど。


 約束だから仕方ないけど、それにしても食い過ぎだろってくらいにステーキを食いまくっていた。


 でも、俺レストランに行く前にしっかり食わせたはずなんだけどな……。


 まあ、いいか。


 とりあえず、街がその後どうなったか気になったので、満腹になって寝てしまったリューとテントに【透明化】をかけて、リューを寝かしてから街に向かうと。


「英雄だぁー!!!」

「わー!!!!!!!!!!」

「すごかったぞー!!!!!!」

「守護神じゃー!!!!!!」

「ありがとー!!!!!!!」


 すごい歓声で迎えられた。


 どうなってんだこれ?


 ***


 周りにいた人に聞けば、俺はドラゴン(リュー)含む魔物を退治して街を守った英雄になっているらしい。


 聞くときに、「あんた何も知らんのか」的な感じで見られた。

 いや、退治したつもりないし。

 なんならさっきまでそいつ(リュー)にステーキ焼いてたし。


 俺からしたら、俺こそがこの騒動の元凶でもあるとわかってるわけで、複雑な心境だ。だってリューは俺の連れだし。

 なんか、申し訳ない気分になってくる。


 それに加えて、人からすごく注目されてしまった。


 俺ののんびり生活どこ行ったんだよ。


 めちゃくちゃ人が集まってきたので、早々に退散することにする。


 さっさと街を出て、途中で透明化して、野宿場所に走って、テントに潜り込んで速攻寝た。


 ***


 翌朝、ちょっと買い物してさっさと旅を再開しようと考え、いつもより早起きをして朝食を取って野宿セットを片付け。リューをカバンに押し込んで、出発。


 まだ人の少ない道を歩き、早朝に空いてる店を探して、にんじんなどを補給。


 いやー、しかし……。


 早朝が故に人が少ないとはいえ、すれ違う人全員にお礼を言われる。

 疲れるよ……。さっさと行こう。


「あ、ハンモックも欲しいな……」


 どこかに売っているだろうか。


 街を回って探す。


 数分歩き回って、開店しているそれらしい店を見つけ、無事ハンモックを購入。


 もちろん店員に感謝の言葉を告げられる。


 いや、嬉しいっちゃ嬉しいけど、疲れる。


 有名人などの心境を垣間見た気がする。


 買い物を済ませたので、さっさと出発だ。


【透明化】・【無音化】を使って、バイクに乗る。


 さあ、行くぞっ!!


 まだ見ぬ場所を目指して、バイクを走らせる。




「ところでさ、リュー」


『なんだ?』


「なんで魔物ってドラゴンに挑戦するんだ?」


 ちょっと詳細が知りたい。

 大体なんでか分かってるけどさ。


『そりゃあ、ドラゴンが1番強いからだ。腕に覚えがある奴が挑戦してくる。しかもドラゴンなんて滅多にいないからな、一度魔物に合えば大騒ぎになる。ドラゴンを倒すために必死になってきやがる』


 昨日みたいになっ。


『まあ、要は魔物最強決定戦みたいなもんだ』


「ふーん。最強になればいいことあんのか?」


『まあ、いいことはそんなにない。が、ドラゴンは魔物最強から落ちたことがないからな、倒せば一躍英雄よ』


 なんか魔物も複雑な関係なんだな。


『俺がいる限りドラゴンは最強だけどなっ!!』


 うん。知ってる。


 めちゃくちゃ強いじゃん君。


 なんで俺に付いてきてんのか不思議になるくらい。


 まあ、いいか。考えても仕方ない。


 頭から忘れて、次の場所について思いを巡らせながら、バイクで草原を駆け抜けていく。


 ***


 リューと圭太(ケータ)が旅を再開させた直後。


 セントラル・シティのど真ん中にある、王城の中の最上階、王室にて。


 ウォーターウェイ・タウンより、一通の知らせが速達で届いた。


 それには、ドラゴンと多数の魔物が現れ、二発の魔法でドラゴン以外を殲滅したこと、ドラゴンは街の外に誘導したこと、殲滅した魔物の中にはグリフォンも含まれていたことなどが記されていた。


「読んでくれ」


 王様–––––––––ロイ王が、そう声を発した。


 そして、手紙を持ってきた速達員が、読み上げた。


 その内容を聞いたロイ王は。


「そのものはどこへ?」


 と、問う。


 家来が答える。


「情報によりますと、今日ウォーターウェイ・タウンを発ったのを目撃したとのことです。行き先は不明ですが、北の門から出て行って、そこからは不明だそうです」


「そのものを連れて来て欲しい。騎士団、頼めるか?」


「「「「は!!」」」」


 騎士団の人たちが返事をし、王室から出て行った。


「どのようなものか、気になるのう」



 この時から、圭太・リューと騎士団が、壮絶な鬼ごっこを繰り広げる……!!!


____________________________________


読んでくださりありがとうございます。



『「鬼ごっこで使うとチート」なバリア』(本文参照)がもしかしたら役に立つかもしれません。










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