第5話 リューの雷魔法




 翌朝、起きて、水魔法を使って顔を洗い、まだ寝ているリューを起こす。


「おい、リュー!!おーきーろー!!」


『グゴォォォ!!』


 プチッ!!


 仕方ない、念話を使おう。


『おいっ!リュー!!』


『ビギャァァァ!!』


 変な声を発しながらリューが飛び起きた。

 さっさと起きないからだ!!


 リューがテントから出ていったので、全ての野宿の道具をアイテムボックスにしまった。


 そして、朝ご飯の準備だ。


『昨日の四角いやつ食いてぇ』


 ああ、食パンね……。


「昨日お前が食い尽くしたからもうないんだわ」


『な、なにぃー!!』


 いや、なにぃーって……。

 俺も食いてぇよ……。


 と、思ってたら、


『スキル【異世界物取り寄せ】を取得しました』


「は?」


 いつしかのあの声が聞こえた。

 また神様か。


 暇なのか?

 助けてくれるのはありがたいけど、絶対ずっと見てるだろ。


 っていうか、このスキルなんだよ。ただのチートじゃねぇか。

 いや、すでに俺自体がチートか。


 ま、まあいいや。


 使ってみよう。


 スキル【異世界物取り寄せ】と、心の中で唱えると、目の前にインターネットの検索バーのようなものが出てきた。

 更に、その検索バーをタップしたら、またまた目の前に、今度はキーボードが出てきた。


 これで入力するのか……?


 とりあえず、「食パン」と打ち込む。


 すると、たくさんの種類の食パンがずらっと並んだ画面が出てきた。


「……?」


 いつも使っていた食パンをタップしてみる。


[マネーが不足しています]っていう表示が出てきた。


「え!?」


 なんだよ、無料で出てくるんじゃないのか。


 じゃあ、どうすればいいんだよ!!


 マネーってこの世界のお金のことか?


 ならば納得だ。俺は現代日本の通貨しか持ってないんだからな。


「リュー?」


『なんだよ……。腹減ってんだよ、早くしろ』


「それはもうちょっと待って。なぁ、この世界にお金ってあるのか?」


『おかね?あるぞ?都市部に行くと、1時間おきに「ボーンボーン」って音が鳴るんだ。あれ、うるさいんだよなぁ。俺はいらねぇと思うぞ』


「それは釣り鐘のことな。時間知らせるやつね。俺が言ったのは違う。店に行って、それで物を買うんだ」


『ああ、お金か。あるぞ』


「ほんとか!?」


『ああ。単位はイェンだ。10イェンで、ゴムみたいな菓子が買えるぞ。子供が買ってるのを見て、俺も食ったことがあるが、ゴムに似た食感だった』


 リューがプラスアルファで情報を教えてくれる。

 イェンって、円みたいな発音だな。ってか、この世界にも10円ガムって存在するんだな。


「どうやったら手に入れられる?」


『はぁ?そんなもん働くしかないだろ』


 ま、当たり前か。


「どうしよっかなぁ……」


『なんでもいいから飯!!』


「お、おお」


 リューから催促が来たので、さっさと作ってしまおう。

 だが、リューを満足させられるだけの材料がない。


「どうしようか?材料がないんだけど」


『ウウウウウッッッ!!!!!!』


「?」


『ウルグアァ!!!!!!!』


「うわっ!!」


 ドガァァァァァァン!!!!!!!!!


 この辺一帯を揺るがす程の大音量と共に、リューが放った雷魔法が落ちた。


『腹、減ったぁぁぁぁ!!!!!!!』


 え!?

 その怒りでこの威力が!?


 絶対リューとは喧嘩しないようにしよう。


 なんで、そんなことを?

 そう思っていたら、雷魔法を打った後のリューの行動で疑問が晴れた。


 魔法を打ったリューは、雷の落ちた方に飛んでいった。数十秒後、大量の獲物を抱えてリューが戻ってきた。大体15匹(頭・羽)いる。

 ……なんか凄そうなヤツいる。……いる。


 ドサッと全てを地面に置いて、こう一言。


『これで!飯!!作れぇ!!!』


「は、はいっ!!」


 もうこれしか言えない。


 とりあえず、リューがとってきた獲物を一つ一つ鑑定していく。

 全部で4種類。


〈ゴールドビッグピッグ〉

 金色のビッグピッグ。激レア。大変強力。肉は一級品。とても美味しい。皮は、ものすごく高く売れる。倒すには、強力な魔法が必要。皮は硬く、剣では切れない。また、HPはとても高く、なかなか倒せない。万が一エンカウントした場合は、逃げることが推奨されている。


「な………」


 声が出ない。なんてもん獲ってきたんだ。

 普通のやつは取ってこれねぇのかよ!!まだ見たことないんだけど!?

 っていうかレアなのによく遭遇するね。

 ……レアっていったい。


 つ、次だ。


〈ブロンズビーフキャトゥル〉

 ブロンズ色の肉牛。結構レア。かなり強い。肉はかなり美味い。皮はそこそこの値段で売れる。強い攻撃で倒せる。ただし、HPがものすごく高い。


 …………。


「ナ、ナニコレ」


 こんな色の牛なんているんだ。しかも、HP高いって書いてるのに、リューは雷魔法一発で倒したわけで……。

 つ、強すぎるぞリュー。


 もういいや。次。


〈レッドビッグチキン〉

 赤いビッグチキン。レア。レアなだけで、強くはない。ただし、HPだけがものすごく異常に高い。加えて、ものすごくすばしっこいので、倒すのは不可能に近い。肉はとても美味しい。羽はものすごく高く売れる。


 …………。


 もう驚けない。


 リュー、強すぎるよ。


 ってか、今更だけど、「ビッグピッグ」とか、「ビッグチキン」って、名前に「ビッグ」ってあるけど、「ビッグ」じゃないやつも多分いるよね。普通のやつ。

 まあ、いいや。


 次!!


〈ワイバーン〉

 スーパー激レア。滅多に出会えない。また、ものすごく強い。HPも戦闘能力も高い。エンカウントしたら、すぐに逃げることが推奨されている。肉はものすごく美味しい。最高級の肉の一つ。皮を始め、すべての部位が高値で売れる。



「は!?はぁーーーー!?」


 色々突っ込みたい。


 まず、スーパー激レアなのに、よくこんなところにいたね。大体、リューが獲ってきた物全部レアなのに、密集しすぎだろ。謎だよ。

 そして、よく倒せたな。強いんじゃないのかよ。

 しかも、ワイバーンなんて、結構知られた名前だよ。現代日本でいたときも、聞いたことや、見たことや読んだこと、いっぱいある。まさか本当に見ることになるとは思わなかったけど。


 結果、ゴールドビッグピッグは3匹(なんでだ)、ブロンズビーフキャトゥルが4匹、レッドビッグチキンが7匹、ワイバーン1匹だ。


 改めて見ても圧巻だな。すげえことになってる。


「どれを使おうか……」


 ワイバーンとかは後に取っておきたいな。

 よし、たくさんあるし、レッドビッグチキンにしよう。


「ビッグ」とはいえ、レッドビッグピッグよりは小さい。

 こりゃ、2人分だと一回で一匹かなぁ。

 ま、いっか。さっさと作ろう。


 ***


 俺はレッドビッグチキンを使って、テリヤキチキンやら、唐揚げやら、思いつく限りの鶏肉料理を作っていった。リューは作ったそばから平らげていく。

 俺も作りつつ食った。我ながら美味かった。


「よし、食い終わったし、街入るか」


『おう』


 飯食ったら機嫌良くなった。面白いやつ。


 全ての食器や調理器具をアイテムボックスに片付け、俺とリューは門に向かった。


 森を抜けると、すぐそこに門があるわけだが、


「なんかこの森から音がしたんだぞ!!」

「雷が落ちたんだ!」

「誰かいるんだきっと!!」


 先程のリューの雷魔法が騒ぎになっていた。


「やらかしたな、リュー」


『おう……』


 まだ俺たち自身には【透明化】と【無音化】を使っていたので騒いでいる人たちには存在が分かられなかったが、もし迂闊に出ていっていたら、とんでもないことになっていたな……。

 絶対バレてた。


「こりゃ、透明になったまま門潜った方がいいかもな」


『そうだな』


 まだ騒いでいる人たちの横を静かに通り、門をくぐった。


____________________________________


読んでくださり、ありがとうございます。














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