第3話 喜びと腹ごしらえ、そして出発
さあ、「アイテムボックス」はどうなっているのだろう。
ポチッとな。
【アイテムボックス】
・バイク(異世界仕様)
・ヘルメット
・高性能なカバン
・高性能なジャージ
・スマートフォン(異世界仕様)
・デジタルカメラ(異世界仕様)
・マップ(現代仕様・異世界での使用不可能)
・スーツセット
・青パーカー
・黒パーカー
・
・………。
「なんかめちゃくちゃあるけど、とりあえず」
「やったぜぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
『うわ!?うっせえな!!』
「バイクあったぁぁぁ!!!!!!!」
『言ってたやつか。じゃあ、さっさと行くか。ここに留まってるのも飽きた』
「まぁ、ちょっと待てよ。もう少しだけ、な」
『さっさとしろよー』
リューからお許しが出たので、もう少し見てみることにする。
って、何でリューがいることに俺は疑問を持てていないんだろうか……。
そんなことを思いながら画面をスクロールするのだが。
「ちょっ!!ちょっと待てぇ!!!!!」
『んだようっせえな。誰も逃げようなんてしてねぇよ。一緒に行くっつっただろ』
「いや、違う、そうじゃなくてっ!」
『何だよ』
「俺の持ち物全部あるっ!!」
『はぁ?ああ、お前が異世界にいた時の持ち物ね』
だって、たんすの中に入ってた服も、たんすも入ってたし、キッチンにあった調味料や調理器具に食器まである。冷蔵庫と、その中の食材も。使えるかもわからないカーテンもあるし、ベッドもある。椅子もあるしテーブルもあるし、教科書や参考書だってある。
もう何から何まで俺の持ち物は全てアイテムボックスの中に入っていた。
「これはちょっと予想を遥かに超えてきたな……」
『もういいか?』
「おう」
『さあ、出発と言いたいが……』
「なんだ?」
『お前を待ってたら腹減った。何か食わせろ』
「ええー……。まあ、待たせてたのは事実だしな……。仕方ない」
時間を確認しようと早速アイテムボックスからスマホを取り出す。
……待てよ……?
異世界仕様って書いてたよな……。具体的にはどんな感じなんだろう……。
鑑定を使うと……
〈スマートフォン〉
超高性能の魔法器具。現代日本仕様ではなく、異世界仕様であるため、充電の必要がなく、バッテリーの交換も必要ない。故障することは絶対にない。壊れることもない。
「…………」
何だこの無茶っぷり。訳がわからん。充電必要ないってなによ。
最強じゃねぇか。壊れないし。チートだな。
っていうか、魔法器具なんだ。
電源をつける。なぜかWi-Fiが飛んでいる。
色々怖い。電池のマークはない。
「っと……12:36か……ちょうど昼飯どきだな。いいか、お昼ご飯にしよう」
途中、時間を確認するためにスマホを取り出したことを忘れていた。
『早くしろよ』
「ごめんごめん。ちょっと待ってて」
アイテムボックスを開け、いい食材を探す。
探しつつ、リューに聞く。
「なぁ、食えないものとかある?」
『ない。人間が食う葉や茎、根や実はあまり好きじゃねぇけど」
「ああ、そう?」
そうか、基本的に何でもいけるのか。
とりあえず牛丼でも作ってみるか。
一人暮らしで、自炊も多かったから、牛丼はよく作った。
材料はいつも冷蔵庫にあった。
何より簡単に作れるからいいよね。
パックに入った牛肉、玉ねぎ、ご飯などと、調味料を取り出す。
ご飯は冷凍のものを使う。
ちなみに、食材は異世界仕様でも何でもなく、消費したらそれっきりのようだ。
そこは無限に出てくるとかさ……。
でも、調味料は減らないんだよね……。何でだよ!!基準がわからん!!っていうか仕組みもわからん!!……異世界だからってことで納得しておこう。
さて、と。
ガスボンベ(異世界補正で無限に使用できるようだ)をセットしたガスコンロを出して、鍋を乗せる。
まずは具だ。
そして、玉ねぎ、水(ミネラルウォーターのペットボトルより。なぜかこれも永遠に減らない)、みりん、醤油などの調味料を入れ、火をつけ、温め始める。
同時並行で、冷凍のご飯を、異世界仕様補正でなぜか電気のいらない電子レンジ(もはや電子なのか)で解凍していく。
具の方は、煮汁が沸騰してきたので、火を弱め、火が通るまで煮る。
火が通ったら、火を強めて牛肉をほぐしながら入れる。
出てきたあくをすくいながら、解凍したご飯を器に盛り付ける。リューの分は少し少なめで、具を多くするつもりだ。
具が出来上がったので、火を止め、盛り付ける。
リューは食べるかわからないので、とりあえず自分の分だけに紅生姜を乗せる。
「リュー、できた」
『おう!…………」
「ど、どうした」
『お前さぁ、俺がこれで足りるとでも?」
「…………やっぱり?」
作ってる途中に一回気づいたけど、めんどくさいからとりあえず完成させちゃおうって思って。
でも…………。
「そうは言ってもさ、食材もそんなにたくさんないんだよ。肉は使い切ったよ」
『そうか……ちょっと待ってろ』
「え!?」
リューは一言言い残すと、ものすごいスピードで飛んでいった。
とりあえず、牛丼を食べて待つことにする。
数分後。
豚に似た生き物を抱えてリューが戻ってきた。
「でかいな」
豚に似ているとはいえ、その大きさは桁違いだ。そして少し赤い。
表面は何か鎧のような皮膚で覆われている。
鑑定してみる。
〈レッドビッグピッグ〉
赤いビッグピッグ。レア。肉はかなり美味。皮は高値で売れる。
倒すには、魔法が有効。皮は硬くて剣では切れない。魔法なら、切断が可能。また、HPも高く、倒すのには骨が折れる。
「へ、へぇ……」
リュー、君ってやつは……。
いや、でもリューだから余裕か。ドラゴンだし。
雷魔法一発落としたとかそんなんじゃないか?
で、
「どうすんのこれ?」
『どうって、料理してくれよ』
「できる訳ないでしょーー!!!!!!」
『何で?』
「何でって……このまま焼いてもどうにもならんだろ……。解体もされてないのに……」
『ええー……分かったよ……』
「?」
スパァン!
「うわ!びっくりした!」
見ると、レッドビッグピッグは真っ二つになっていた。
「これならいける」
『早く!』
「ちょっと待てよ」
リューは一口で牛丼を食べてしまった。
足りないわけだ。当たり前だけど。
さて……。どうしようかな……。
ステーキでいっか。焼くだけだし。楽だよ。そうしよう。
そして、レッドビッグピッグを大きく切っていく。俺も食いたくなったから、適当なサイズに一枚切っておく。
そうして、レッドビッグピッグの半分を消費した。皮は売れると書いてたから、皮と、残り半分をアイテムボックスに仕舞う。
そして、市販のステーキソースを取り出す。これほんとに便利。
さて、焼こう。と思ったのだが。
「フライパンが小さい……」
そう、リュー用の大きい肉を焼くには小さいのだ。
しかも、コンロもそれを焼くには火力が足りない。
どうしよう……と悩みながら、先にとりあえず俺の分のステーキを焼く。
……あ。
錬金術でどうにかなるかな……。
無理か。あれは金属を貴金属に変えるものだからな……。
と思っていると。
『スキル【物質創造】を取得しました。スキル【物質形状変化】を取得しました』
謎の女の人の声が聞こえて、発狂しかけた。
「びっくりしたぁ。スキル追加って何?別に俺何も……」
あ。
そうか、多分神様だ。
ありがとう神様。
そう心の中で言うと、早速【物質創造】を使う。
どうしよう。とりあえず、フライパンは鉄でいいか。
一旦鉄を創造する。
すると、鉄の四角い塊が手のひらに乗っていた。
「よし、じゃあ、これを……」
フライパンの形にしていく。
「できた。……でも、取っ手がいるなぁ」
『まだかよぉー。腹減ったぁー』
リュー、だんだん口悪くなってる気がする。気のせいかな。
ま、いいや。
取っ手のために、樹脂を作る。
どんな感じかよく分からなかったので、今のフライパンの取っ手の材質を意識してみた。
「で、できたぁ」
思い通りにいった。
それをスキルを使って取っ手に変形させて、
「完成!!」
さて、次は火だ。
木材を創造して作り出し、形状変化させて薪にする。
で、火が通りやすいように組んでいく。
そして、大きいコンロのようなごとくを作っていく。
ちょうど火が当たるくらいの高さに調整し、完成だ。
そこにフライパンを乗せ、
「さあ、焼くぞ!」
まず薪に火魔法で火をつける。絶対使い方間違ってると思う。
火がついたら、フライパンに油をひき、ステーキソースを駆使しながら次々とレッドビッグピッグの肉を焼いていく。我慢の限界となったリューに、焼いては渡し、焼いては渡しの構図を数分間続け、ちょうど肉がなくなったところで、リューがお腹いっぱいと言い、肉を焼くのは終わった。
俺もしっかり食った。
普通に高級豚肉のようで美味しかった。
また食いたいな。
『食った食ったぁ。異世界人が作るメシってこんな美味いのな!』
リュー、君今まで肉を生で食べたことしかないだけだと……。ま、いいか。
それにしても……。
「ふいー、疲れたぁー。昼にステーキは重いかなと思ったけど全然だな。しんどい。運動になった」
もしかしたら創造と形状変化のスキルを酷使したことも関係してるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。
おかげで結構食べたけど動けそうだ。
『さ、飯も食ったし、行こうぜ。』
「行くか」
アイテムボックスからバイクを出す。
「へへっ。これがあれば!……待て。待てよ……」
これも異世界仕様だ。と、言うことは。
「やっぱり!」
ガソリンの補給必要なしだ。
「やったぜ!!もう俺は自由だぁ!!」
『うるさい。さっさと行くぞ』
「いや、これは結構重要だ!!」
『もう知らん』
リューはそういうと、ゆっくり南へ進み始めた。
「待てよ!」
俺もバイクに跨って追いかけ始めた。
リューがスピードを上げた。
俺もスピードを上げる。
バッサバッサバッサバッサ
ブルルルルルルルルルルルルルルッ!!!!!
『速いなそれっ!!』
「だろっ!!」
2人(1人と一頭)の旅が始まった。
この先に何が待ち受けているかも知らずに……。
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読んでくださりありがとうございます。
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