第2話 ……俺って結構ヤバい奴?




 そうしてリューと一緒に旅することは決まったわけだが……。


「ここどこ?街って近くにある?とりあえず旅に必要なものとか揃えたいよ?」


 俺は死んで天国に行った時点で、死亡直前の服装で、そのまま異世界に飛ばされたから現代日本における服装なんだよな。ちなみに普通にTシャツに上着と、ジーパン。この世界の人たちが基本どんな服装をしているのかわからないけど、普通の物語の異世界転生なら、格好を変えるのはお約束だよな……。


『あ?多分南にずっと進むとある』

 小さくなったサイズのまま俺の肩に乗ったリューが答える。


「……え?どれくらいかかる?」


『俺だと三日三晩ノンストップで飛べば行けるな。俺は結構速いからそんなもんだけど、他のドラゴンなら五日くらいかかるんじゃねえかな?人間が普通に徒歩で移動するなら二週間はかかると思うぞ』


「ま、まじ?」


『嘘ついてどうすんだ』


「マジかよ……。遠いな……」

 困ったな……。あ!


「乗せてってよ、背中にさ」


『は?やだよ。しんどい』


 綺麗な即答。だよね……。


 どうしよう……。交通機関もなさそうだし……。


『もう素直に歩こうぜ?時間の無駄』


「そうだね……」


 歩きか……。あーあ、俺はバイクさえあればどこへでも行けるのに……。


「ん?待てよ……?」


 今、俺は現在、異世界現代日本における俺の持ち物、「服」を持っている状態だ。俺は死んだ時、バイクとバックパックが体に触れていた状態だった。ということは、服以外に例外がないならば、死んだ時点で触れていたはずのバイクとバックパックは、俺の持ち物でもおかしくないのだが……。


「でも、無いしな……」


 あれ?異世界だと、アイテムボックスとかあるかも!その中にもしあれば……!

 いや、アイテムボックスなんてあるかもわからないし、仮にあってもどうやって出すか分からない。


「なあ、リュー」


『あ、なんだ?早く行こうぜ?』


「アイテムボックスってわかる?」


『うん?アイテムボックス?なんかごく稀に持ってるやついるな。物が大量に入るやつだろ?』


「それだと思う。どうやって出すか知らない?」


『なんか右手振ったら薄い白い板みたいなのが出てきてるところを見たが、それか?』


「それかも!よーし!」


 何か入っていることを信じて!


 俺は、右手を軽く振った。


 …………。


「ねえ、リュー、ほんとにあってるの?」


『合ってるよ!』


 あ、あれか?「アイテムボックス」って唱えながらじゃないと出ない?


 よし……!


 俺は、心の中で「アイテムボックス」と唱えながら、右手を振った。


 …………。


 言葉が違うのか?なんだろ……。

「ボックス」か? おりゃっ。違うな……。

「アイテム」? えいっ。これも違う……。

「開けごま」? そいっ。違うか。


 そんな感じで、数分間悩み続けて、


「もしかして、「メニュー」か?」

(行くぞ……。「メニュー」)

 ブンッ

 もう何度目かも分からないほど、心の中で言葉を唱えながら手を振っている。


『これはこれで面白いな。あははっ』


 リュー。笑うんじゃねぇ!こっちは必死なんだぞ!


 ヴォン……


「え!?やった!」


 結局、「メニュー」と唱えながら右手を振ると、よくありがちな光でできた板のようなメニュー画面がでてきた。


「はー、疲れた」


 早速メニュー画面の内容を見てみる。


「基本情報」「レベル・ステータス」「スキル」「アイテムボックス」といった文字が並んでいた。


『おお、初めて内容を詳しく見るけど、すげーな』


「うん」


 まず、上から見ていく。

「基本情報」をタップすると、新たな画面に変わって、

【基本情報】

 名前:ヤザキ ケイタ

 年齢:18歳

 種族:異世界人

 職業:


 という画面が出てきた。


 職業のところだけ空白だけど、当然か。


 次は「レベル・ステータス」だ。

【レベル・ステータス】

 レベル:1

 体力:99999999(MAX)

 攻撃:10000

 防御:10000

 敏捷:99999999(MAX)

 魔法力:99999999(MAX)

 魔法防御力:99999999(MAX)



 ……は?


『……は?』(念話で伝わってきたリューの声)


『「な、なんだこれぇ!!!!!」』(俺とリューの叫び声)


 なんだよこのぶっ壊れスキル……。

 体力敏捷魔法力魔法防御力、まさかのマックスとは……。

 ってか最高値99999999なんだ……。


『お前やばい。やばすぎる。最高の賢者でもこんなステータスの野郎はいない。何か一つでもMAXなら崇められるんだぞ。600年ほど生きてるが、そんなの俺もまだ1人しか見たことねぇ』


「え!?リューってそんなに生きてるの!?」


『は?そっち?ってか「え!?」なんて俺のセリフだ!お前のステータスの方が驚きだ!そもそもがドラゴンは長寿なんだよ!8000年くらいは生きるよ!俺もまだ若い方だ!』


 そうなんだ……。じゃなくて。


 俺のステータスやばすぎる……。どうしよう。パワーセーブみたいなのも覚えた方がいいかな……。

 っていうか絶対このぶっ壊れステータス原因神様だよね。

 一応ありがたいので神様に感謝。神様ありがとう。


『あともう一つ言っておくとな、人からは普通に画面見えるからな。現に俺も見えてるだろ?だから人前ではあまりメニューを開くやつはいない。隠すんだ。自分の強さや弱点を知られないようにな。しかも個人情報ダダ漏れだからな。ちなみに言っておくが「鑑定」は他人の「メニュー」が見れるスキルじゃないからな。そのものや人の情報、例えば心理状態や犯罪歴、あとは病気とかの体の状態なんかを見れるだけだ。俺が驚いてるのはそのせいだ。俺の「鑑定」もなかなかだがな。そこまでは見れない』


「そうなんだ……」

 そっか……。隠すの大変だな。自覚してるけど、俺って忘れっぽいからな……。すぐ忘れて人前でメニュー開きそう。


『お前はただでさえすげえステータスを持ってるんだから、余計気をつけないとダメだぞ』


「おう。わかった」

 マジで気をつけないとな。目立つのは嫌だし。のんびりしたいだけだからな。王様に呼ばれるとかいう感じのめんどいイベントが起きかねない。

「この国のために力を貸してくれ!」

 とかありそうじゃん。どこまでもついてきて説得されそうじゃん。

 俺ののんびり旅よ……。

 ん?そのための敏捷MAXなのか?なるほどな。逃げるためか。


『ていうかな、お前自分のステータスの高さがやばすぎることを自覚しろ。一般人なんてな、全ての種類のステータスが100〜300ほどだぞ』


「え?マジで?」


 じゃあ俺攻撃と防御が10000だけど、それでもすごいのか……。マジかよ……。


「パワーセーブとか覚えた方がいいかな」


『そりゃあな。絶対覚えないとな。』


「やっぱり?」

 怪しまれるもんね。俺みたいな異世界人は。あくまで一般人としてのんびりしたい。

 まあ、方法とかは後でいいや。


 スキルだスキル。何気にこれも結構楽しみだったりする。いや、でもとんでもない内容が来るんじゃ……。


 予感は当たっていた。

 画面の「スキル」の部分をタップする。画面が切り替わる。

【スキル】

 スキル

「鑑定 異世界人強化版」

「錬金術」

「天国の神の加護」

「全方位バリア 異世界人強化版」

「千里眼」

「幸運」

「超高度治癒魔法 異世界人強化版」

「自動危機回避」

「体力自動回復 異世界人強化版」

「魔力自動回復 異世界人強化版」

「レベルアップ簡易化」

「威圧」

「透明化」

「無音化」

 以下、取得済みの簡易取得魔法。基本技から応用技まで意識のみで使用可能。

「雷魔法」「体術」

「火魔法」「攻撃力強化」

「水魔法」「防御力強化」

「土魔法」

「風魔法」

「光魔法」

「影魔法」

「剣術」

「槍術」

「弓術」


 固有スキル

「平和主義」

「旅特化型ステータスアップ」



 見た瞬間俺もリューも目が点になる。


「『は?』」


 ナンダコレ。


『こっちもぶっ壊れてたか!!』

 リューが叫ぶ。


「……みたいだね」


『ウガァァ!なんてこった!』


 リューが吼えた。

 いや、俺だって叫び出したい。


「やっぱり?」『とんでもねえよ!!』


 あーあ。本気で隠さないと。大変だぁー。


『異世界人強化版の鑑定ってなんだよ……ってかお前鑑定あるのか……』


「え?ちょっと試してみよう。どれどれ?」


 ジー ←俺がリューを見つめる音(?)


 スキル「鑑定」は、基本対象となるものをじっと見つめると、自動で発動するスキルである。普通スキルは詠唱で使用できるものであり、「鑑定」は人に気づかれずスキルを使える。


「ブフォ!」


『うわっ!汚い!!』


 俺は思わず吹き出してしまった。理由は、


「なあリュー、鑑定って相手のステータスは見えないんだよな?」


『そ、そのはずだ。少なくとも俺はな』


「見えたんだよ……」


『は?』


!!」


『え''』

 リューも絶句している。


「お前も大概とんでもないステータスだな。ドラゴンだから当たり前か」

 そう、リューはリューでステータスが凄かった。


『う、嘘つくな!!見えるわけが……』


「ほんとだって!攻撃9929100、防御7589030、「敏捷」は「スピード」になってたけど9999367だった。他もなかなか……」


『わー!わーわー、も、もういい!信じる!信じるよ!!』

 リューは慌てて俺の話を止めた。


『とりあえずやばいってことはわかったよ……』


「やっぱりやばい?」


『やべえよ。「鑑定」だけじゃねえ。なんだよ「錬金術」って。金作れるのかよ』


「え?やってみようか」


 その辺に落ちていた鉄屑を拾って、拾って……。


「ねえ、どうしたらいいんだろ」


『お前なぁ。はぁ』

 リューはため息をついた。


『詠唱ってわかるか。さっきの「メニュー」みたいに心の中で唱えるんだ』


「なるほど……。やってみる」


 再び目の前の草に意識をむけ、「錬金術」と心で唱えながら鉄屑をもつ手に力を込めてみる。すると……。


『うわぁ……マジかよ……』


 目の前の鉄屑が、黄金に変わってしまった。


「うん、もう使わない。絶対使わない。」


『そうだな。その方がいいな。だが……』


 言いたいことはわかっている。


「他もいろいろやばいん……だよね?」


『ああ、もうわけが分からん』


 ドラゴンがこう言うくらいだから相当なんだろうな。

 リューのスキルもそのうち見たいな。


『もうお前のスキルについては何も言わん』


「うん、もうこのことについては触れない。」

 その方が平和。平和大事。


『その方がいいな。』


「でも、もう一つだけ」


『なんだ?』


「意識するだけでスキルって使えるんだね」


『ああ、相当の修行を積めば、な。お前は規格外だから知らん』


「俺も知らん」


 やっぱスキルも神様だよね。

 これはありがとうというべきか、やりすぎだよというべきか……。

 いずれにしろ、天国の神様はこの世界に思いっきり干渉できるわけだ。

 すげぇな……。


 最後にアイテムボックスだ。


 これが一番楽しみだ。

 もし何も入っていなかったら、もう頑張って歩いて街に行こう。ステータスMAXの「敏捷」も手伝ってくれるだろう。

 だけど、もしバイクやバックパックが入っていたら……。

 俺の旅はグッと楽になる。



 期待しながら俺は、「アイテムボックス」のところをタップした。


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読んでくださりありがとうございます!感想やアドバイスありましたら是非お願いします。質問や意見も是非。

次話からもよろしくお願いいたします。











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