06-05
やたらと集まる回数は増えたものの、まったく誰とも会わない日だってないわけじゃない。
幼馴染と屋上さんが両方とも部活でいないときは、家には誰も来なかった。
昼過ぎにマエストロからメールが来る。久しぶりに会わないかという内容。
せっかくなのでサラマンダーとキンピラくんも呼んで、ファミレスで会うことにした。ファミレス超便利。
実際に会ってみると、話すべきことがないことに気付いて唖然とする。
「今日まで何してた?」
「寝てた」
「息してた」
「うぜえ死ね」
こんな感じ。暴言を吐きつつも集合してくれるキンピラくんはどう考えてもツンデレです。
男四人で向かい合って沈黙する。
暇を持て余していた。
普段だって何かを話しているわけではないのだが、久しぶりに会ったせいか、何かを言わなくてはならないような気になってしまう。
とはいえ、話すことは何もないので、
「暇だな」
「うん」
こんなやりとりを繰り返すばかりだ。
ふと、ユリコさんに誘われたバーベキューの話をするのがまだだったことを思い出す。
彼らは三者三様の反応を見せた。
「肉あるか?」
「あるんじゃない? バーベキューだし」
「ならいく」
サラマンダーは三大欲求に正直だ。
「女いる?」
「いるけど、おまえその発言はどうなんだよ」
マエストロも三大欲求に正直だ。
「俺、休み中は起きれるかわかんねえから」
キンピラくんも三大欲求に正直だった。
欲の権化。
ある意味男らしい。
「行けたらいくわ」
三人は魔法の言葉で話を終わらせた。
しばらく沈黙が落ちる。
みんな、会話なんてなくてもいいと思ってるのかもしれない。面倒になって考えるのをやめた。
友達ってそういうもんだろうか。話すことが何もなくて、会話が途切れても、不安に思わない関係。
だとすると、沈黙を不安がってしまう俺は、いったい彼らをどう思っているんだろう。
ひょっとしたら気を遣いすぎているのかもしれない。もうちょっと図々しくなってみようかな。
そのあとは、考え事をしながらマエストロの独り言に耳を傾けて時間を潰した。
「分かるか? 俺は彼女が欲しいんじゃない。ただ女の子にちやほやされたいんだ」
マエストロはいつだって欲求に素直だ。
◇
家に帰ると、妹はいなかった。友達とどこかに遊びに行っているのかもしれないし、一人で買い物にいったのかもしれない。
やることがないので、部屋に戻って課題を進める。少しずつではあるが、終わりが見えてきた。
それでも、暑さのせいでなかなか集中できず、結局ベッドに寝転がってだらだらと時間を潰すことにした。
ごろごろと転がる。
最近、周囲がずっと騒がしかったからか、ひとりでいるとなんとなく手持ち無沙汰な感じがする。
暇。
「ひーまー」
口に出してみる。
退屈が増した気がした。
「うあー!」
暑いので無意味に叫ぶ。
よけい暑くなる。
何をやっても逆効果、という日もある。
妹は日没前には帰ってきたが、俺の落ち着かない気分はちっともなくならなかった。
なんだか落ち着かない日。
こういうこともある。
夕食を済ませた後、妹とリビングでだらける。
「なんかないの?」
妹も妹で暇を持て余している様子だった。「なんか」といわれても困る。
映画でもかけようかと思ったが、大抵のものはもう観てしまっていた。
仕方なく『2001年宇宙の旅』をかける。妹は開始三十分で眠ってしまった。
途中で最後まで見るのを諦める。時間を浪費している気がした。
ひどく蒸し暑い。寝るかという時間になっても、なかなか睡魔がやってこなかった。
夜中にベッドから起きて台所に下りる。冷蔵庫を開けて、麦茶をコップに注ぎ、いつものように飲み干した。
落ち着かない気持ちのまま、ふたたびベッドに潜り込む。
実際に眠れたのは、結構な時間が過ぎてからだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます