05-07
夜、炭酸が飲みたくなってコンビニに行く。
妹と一緒に家を出た。アイスを切らしたらしい。
帰り際、一人で歩く後輩を見かけた。
どこへいっていたのかを訊ねると、適当に町をうろついていたのだという。
「女の子が夜道を一人で歩くんじゃありません」
コンビニ帰りに送っていくことにする。
「送り狼の方が怖いんですけど」
何かを言われていたが気にしないことにした。
妹を先に家に帰して、後輩の家を目指す。
歩いてみると結構距離があったが、さりとて遠すぎるというほどでもない。
「あ、CDですか?」
後輩は手を打ち鳴らして言った。
「そう。ついでだから」
別に慌てるほどの用事ではないが、次にいつ会えるかも分からないのだ。
「携帯のアドレス教えてくれれば話が早くて済むのに」
「鳴らない携帯なんて持ち歩きませんよ」
「だから俺が鳴らすというのに」
後輩は気まずそうに苦笑した。
彼女の家につく頃には、周囲は薄暗くなっていた。
それでも、その家の大きさはよく分かった。
「でけえな」
「広いだけですよ」
広いのがすごいと言っているのだが。
なんかやたらとでかい家だった。
後輩は気にするでもなく広い庭を通過していく。日本的庭園。飛び石。和、な木々。
和。
なぜだか萎縮する。
後輩は俺を客間に取り残して部屋から出て行った。
どうしろというのか。
落ち着かずに周囲を見渡してみる。
余計落ち着かなくなった。
そういえば幼馴染以外の女子の家にあがるなんて人生で初めてだった。
緊張する。
不意に扉が開いた。
後輩が戻ってきたのかと思ったが、違った。
『ちい姉』だった。
彼女は変な顔で俺を見た。驚いているようにも見える。
言葉もなく扉が閉められる。
なぜ?
もう一度開けられる。
奇妙な間があった。
「……なんでいるの?」
どこかで聞いたことがある声だと思った。
見上げる。
赤い眼鏡。下ろした髪。
「……あれ?」
屋上さんだった。
「お邪魔してます」
挨拶をする。
「……はあ」
互いにわけも分からず見つめ合う。素直におしゃべりできない。
「なぜ屋上さんがここに?」
「私の家だから」
混乱する。
でもすぐに分かった。
――妹が二人。
――姉と妹がひとりずついる。面倒見がいい。頼られ体質。
「……あー」
気付く。
ありえない偶然だった。
少しして屋上さんの背後から後輩がやってくる。
「何やってんの? ちい姉」
ちい姉=屋上さん、だった。
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