05-06


 翌日、サラマンダーとマエストロが我が家にやってきた。

 部屋に招き入れる。ごろごろと退屈な時間を過ごす。


「課題やってる?」


「やってない」


 俺は嘘をついた。


 三人でゲームをする。

 すぐに飽きた。


「どっか行こうか?」


「暑い」

 

 ですよね。

 妹が友達と遊びに行ってしまったので、昼は自分たちでどうにかしなければならない。

 昼過ぎに腹を空かせてファミレスに向かった。


 後輩と遭遇する。


「最近良く会いますね」


 後輩と同じ席に着いた。


「ドリンクバーを奢ってやろう」


「あざす。いただきます」


 後輩はくぴくぴとジュースを飲んだ。


「おまえ酒強そうだよね」


「めっちゃ弱いです」


 親近感が沸く。


 とりあえず昼食を注文した。

 三人とも後輩とは知り合いだったので、話は弾む。


「いやー、暑いすね、最近」


「そうでもないだろ」


「そうですか?」


「そうでもない」


「そうでもないっすね」


 会話はいつでも適当だ。


「休みに入ってから毎日暇で仕方ないんですよ、ホントに」


「じゃあ俺と遊ぼう」


「いいですよ」


 あっさりオーケーされた。

 逆に困る。


「え、なにその。俺デートとか何着てけばいいかわかんないしあのあれ。ごめんなさいこの話はなかったことに」


 思わず初デート前の中学生並に動揺する。

 後輩はからから笑った。


 その後バカ話で盛り上がりながら食事をとった。

 後輩からCDを借りる約束をした。約束があるのは素敵なことです。





 家に帰ると幼馴染と妹と謎の少年がいた。


 謎の少年。


「誰?」


「親戚の子」


 幼馴染が分かりやすく説明してくれた。どうやら夏の間だけ遊びに来ている親戚の子らしい。

 子供同士の方がいいだろうと面倒を任されたらしいが、さすがに歳の離れた異性との接し方なんて分からないという。


「それがなぜ俺の家に?」


「男の子同士の方が遊べるかと思って」


 そんなわけがない。

 子供の面倒なんて見たことないし、充実した子供時代を送った記憶なんてないし、ましてや友達なんていなかった。

 少年に充実した夏のすごし方を提供しろと言われても荷が重過ぎる。


「協力するから!」


 幼馴染に懇願される。

 妹にジト目で睨まれる。

 罪悪感。何も悪いことしてないのに。


「分かった。おい少年、カブトムシ捕まえにいくぞ!」


「だるい」


 シニカルな少年だった。


「一人でゲームやってるからいいです」


 ……なにこいつ。


「……タクミくんはインドア派で」


 タクミくんと言うらしい。


 扱いに迷っているうちに、沈黙が落ちる。


「あ、そう。えっと、じゃあ、なんかジュース飲む?」


「いただきます」


 それっきり会話がなくなった。

 ピコピコとDSに向かい合うタクミくん。


「何やってんの? ゲーム」


 彼はあからさまに面倒そうな表情をしながらゲーム画面をこちらに向けた。


 俺の持ってる奴だった。


「対戦、しようゼッ!」


 強引なテンションで誘う。


 負けた。


「……あっれー?」


 あっさり負けた。

 完膚なきまでにやられた。

 3タテだった。


 今度は妹が対戦を挑む。

 なぜか勝利した。


「……あれ? こいつなんか俺と妹で態度違わない? ね、おかしくない?」


「子供だから、子供だから」


 言いながらも、幼馴染の目は俺が弱いだけだと言っているようだった(そういえば妹には勝ったことがない)。

 負けられねえ、と思った。


「おいタクミ! てめえもう一回だ!」


 鼻息荒く勝負を挑むが、連敗記録を塗り替えただけだった。

 その後、夕方まで彼と勝負を続けたが、かろうじて接戦までは持ち込めても結局敗北した。


「ちくしょう! 今度来たときには叩きのめしてやるからな!」


 タクミくんは苦笑していた。


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