05-01



 ある日、妹に贈った写真立てに、二枚目の写真が入っていることに気がついた。


 何が写っているのかを聞こうかと思ったが、あんまり詮索するのもおかしいだろう。

 気にかかっても聞かずにいたのだが、


 まさか彼氏か。ツーショットか。


 と思うとなんだかやりきれなくなったので、やっぱり実際に聞いてみた。


「彼氏?」


「違うから」


 違うらしい。

 じゃあ何が写ってるの? と聞いても答えてくれない。仕方ないことではあった。


 幼馴染に電話でそのことを相談すると、反応は淡白だった。


「写真立てにどんな写真を入れたって、妹ちゃんの自由じゃない?」


 まぁそうなのだけれど。

 ちょっと気になる。


「もともとはどんな写真入れてたの?」


「家族の」


「へえ」


「俺は写ってないけど」


「……なんで?」


 単に操作の仕方が分からなかったので、自分で撮るしかなかった。

 それに、なんで俺が写ってないんだろう、と考えるたびに、そのときの状況を事細かに思い出せるのではないかと思った。

 思い出的なものを保存するにはちょうどいい感じがする


 幼馴染は呆れたようだった。


「それってさ、たぶん……」


「たぶん?」


 彼女はそこで言いにくそうに言葉を区切る。安楽椅子探偵が何かを言おうとしていた。


「……やっぱり、なんでもない」


 私が言うことじゃないし、と彼女は言った。


 すごく気になる。

 が、問い詰めても答えてはくれないだろう。

 ままならない。


 そんなふうにして学期の残りはすごい速さで消費されていった。あっというま。

 最後の部活の日に、予定表を渡される。特に何があるわけではないが、他に予定がない限り部活には出ようと思っていた。

 なんだかんだで学校は嫌いじゃない。特に、夏休みの学校の、あのひんやりとした感じ。


 どことなく空気が軽やかになっていく。

 夏休み、という感覚。開放感。

 それだけで周囲が違って見えた。新鮮に見えたし、色鮮やかに感じられた。

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