03-02
休み時間、ふと気になってキンピラくんに話しかける。
「キンピラくんって童貞じゃないの?」
「死ね」
キンピラくんはとてもフレンドリーだ。
「クラスメイトとして知っておきたいじゃん?」
俺は彼が童貞と踏んでいた。なんか仕草から童貞っぽさが滲み出てる。かっこいいけど。
なんだろう。童貞だけど不良、的な空気。
「童貞じゃねえよ」
キンピラくんは不愉快そうに続けた。
「仲間が欲しくて必死だな、チェリー」
せせら笑うキンピラくん。
見下されてる感じ。
ぶっちゃけ、キンピラくんの不良っぽい態度はあんまり怖くない。マスコット的ですらある。
デフォルメされたチビキャラが煙草吸ってるような雰囲気。
「そっかそっか。キンピラくんは大人だったのか」
適当に返事をする。
「おまえ信じてないだろ」
彼は語気を荒げた。
「信じてる信じてる」
軽口を叩く。彼は毒気を抜かれたように溜め息をついた。
「で、相手は誰だったの?」
「……俺、おまえのそういうところすげえ嫌いだわ」
キンピラくんに嫌われた。
あんまりいじくりまわすのも可哀相なので、そこそこで切り上げる。
◇
昼休みに、屋上で屋上さんと話をする。
屋上で屋上さんと話をする。奇妙な語感。
屋上さんはツナサンドをかじりながら言った。
「好き」
「は?」
深く動揺する俺をよそに、彼女は俺の胸の中に飛び込んできた。「ぽすん」と漫画みたいな音がする。
なんだこれ。
なんだこれ。
エマージェンシー。
「私のこと、嫌い?」
屋上さんが俺の顔を見上げる。美少女。
「嫌いじゃないけど」
思わず目をそらす。どこからかいい匂い。柔らかな感触。
彼女は俺の背に腕を回してぎゅっと力を込めた。
胸が当たる。
なんだこれ。
「じゃあ好き?」
「好きっていえば……好きだけど」
「じゃあ好きって言ってよ」
「ええー?」
どう答えろというのだろう。
「四六時中も好きって言ってよ!」
サザンっぽい要求をされた。
どうしよう。
「あ……」
脳が混乱している。甘い匂いに脳を侵される。どうしろっていうのよ? 頭の中で誰かが言った。やっちまえよ。頭の中のなおとが言った。
「愛してるの言葉じゃ足りないくらいに君が好きだ」
消費者金融っぽい雰囲気の返事をした。
そこで、チャイムが鳴った。
「はい、授業終わり」
夢だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます