守れ!アレルギー反応

鼻がムズムズしてくしゃみ連発。

花粉症とは認めていないものの、おそらくそれに近しい症状を発症しているのだろうという事実は否定できない。


アレルギーが発症する詳しいメカニズムは知らないけれど、環境変化やら体調やらアレルギー物質の摂取量やら色々な要素がからみあって、自身の免疫機能が頑張っちゃう状態と理解している。


鼻のかみすぎでヒリヒリしようとも、人体の免疫機能はきっと重要で偉大なんだろう。


だから人類は免疫機能を排除することなんてことは考えずに、鼻セレブというソリューションを選ぶ。


ところで最近、職場のとある先輩に対して目を見て喋れなくなるという異常事態が発生した。


職場における私は、比較的打たれ強く、瞬間的な暴言や圧力ではへこたれない精神構造になっている。


その先輩も私のそんな性格を知っていて、昭和を引きずった所謂ブラックな思想と言動でもって、理不尽で強引なプレッシャーをかけまくるのが常だった。


しかしある日、突然。

私の理性とは裏腹に、その先輩の存在を完全に無視するような態度をとるようになってしまった。


目の前で名指しで話しかけられて、返事をしなければいけないと分かっているのに、声が出せない。視線もあわせられない。


実に立派で包み隠しようのない、お手本のような無視である。


我ながら最初は焦ったが、これが何故だかどうにもならない。


明らかに異常な態度を取る私に、その先輩は意外とすぐに戦意喪失してくれて、ひと月ほどで私に一切話しかけなくなった。


(攻撃的な人は実のところ弱虫というのが真実の一面なのだなと変に実感してしまった。)


この面白い体験について、自分の心を守るためのアレルギー反応なのだろうと理解している。


ここ半年、自分の職場でのポジションが変わり色々と思い悩むことが増えていて、少し気持ちの余裕が減っていた。


そこにきて先輩の変わらぬ暴力的なプレッシャーを何度も浴びせられることで、このままでは自分の健全な精神に支障をきたすと免疫機能が判断し、抗体がつくられてしまったのだ。


先輩アレルギーに対して一度できてしまった抗体は無くなることなく、今も活発に私の精神衛生を守ってくれている。


ありがとう、先輩抗体X。

そして何かごめんなさい、先輩。

ケンカしながらも10年以上仲良くやってきた可愛い後輩から急に完全無視される側の気持ちを考えると切ないけれど。


アレルギーだから仕方ない。



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