「未定」黄金林檎と幼児の話


 竜も龍も必要ない。

 獅子も羽根馬もいらぬ。

 ただ欲しいのは林檎だけ。

 たったひとつのあまい林檎。

 それがこの世にあるならば――。



00 ゆめのはじまり

 よちよちと歩く後姿を追った。

「テラス」

 五歳になったばかりの女の子は立ち止まる。手の中の物を地面に置くと、ゆっくりとラレオーを振り返った。

「どうした? 勝手に果物食ったら怒られるぞ」

「ちがーう」

 不満げに唇を尖らせると、重そうに再び何かを持ち直した。真ん丸な黄色の物体。見たことのないものだ。

「なにこれ?」

 しゃがんで触れるとほどよいやわらかさだ。匂いもさわやかだ。ラレオーは首を傾げる。

「どこで見つけたんだ?」

「これはねー、ゆめの中で手に入れたのよー」

「ふうん」

 つついてみるが、本当に笑いたくなるほど真ん丸だ。果物のようだが、人工物にも見える。

「これを土の下にうめるのよ。そうしたらいいことがあるの」

「ふうん。……手伝うか?」

 にっこり笑うテラスはゆるゆると首を振ると、自分でやるの、と言った。

「家の中に戻ったらちゃんと手を洗えよ」

「うん」

 テラスの頭をわしゃわしゃと掻き乱すと、ラレオーはテラスに背を向けた。ふんふんと鼻歌を歌いながら、幼い子どもは果樹園の森に潜っていく。



01 デコマイの果物販売計画

 お得意先の孤児院で最近とてもおいしい果物が採れる。お裾分けとしてもらったそれはデコマイの手のひらくらいの大きさで、真ん丸で黄色い。

 見たことのないものだなあと思うけれど、味は林檎に近かったのできっと亜種なのだろう。勝手にそう結論づけて、デコマイは本日再び孤児院を訪れた。

 理由はそのとってもおいしい林檎に関する話である。おいしい林檎を院の皆で食べるのはもちろん構わない。でもほかの皆にも食べてもらって笑顔でいっぱいにするのはもっといいと思う。

 ということで勇み足で話に行ったのだが、微妙な顔をされた。

「デコマイ、貴方も金に塗れる気ですか」

「ええー……どんな認識なんですか、それ。僕はただ沢山の人に食べてもらえたらきっと笑顔が増えるだろうなあと思っただけですよ」

 対面した院長は渋い顔をする。デコマイとしては言われる通り金儲けも欲しいところだけど、院の未来にとっても悪くないと思っている。それに根こそぎ奪うようなことはするつもりもない。

「ひどいなあ」

 大げさに肩を落としてみせると、院長はやや考えた末に条件を提示してきた。

「では、テラスを説得してみればいいのではないですか? あの果物を手に入れたのはテラスです」

「テラスですか……」

 デコマイの顔に苦味が走る。

「あなた、テラス苦手ですもんね」

「苦手ってわけじゃあないんですよ。ただ、そうただ、あの子の方が僕を避けるんですよ。ええ、ええ、そうなんです」

 滑らかな舌に焦りが混じる。けれど院長は涼しげに笑うだけだ。

「そうですか。じゃあ、頑張って捕まえてください」

 予定が狂った、とデコマイはボロイ天井を仰いだ。この天井だって、うまくいけばきれいにできるのに。


 がっつり落ち込んで出入り口で地面に蹲っていると、肩を叩かれた。デコマイはテラスと相性が悪い。というかいつも嫌な顔をされる。だからデコマイも苦手になる。まさかテラスじゃあるまいな、と振り向くとラレオーが居た。

「……なんだ、ラレオーか」

 ホッと息を吐くと、首を傾げる青年が居た。

「デコマイ何やってんだ」

「テラスに勝つ方法を考えてた」

 ラレオーは孤児院で育ったひとりだ。今は院を出ているはずだが、よく世話に来ているようだ。彼ならばデコマイも話しやすいのだが。

「なんだそれ」

「あの林檎だよ。売ったらどうかと思ってさ。院長はテラスを説得出来たらいいよっていうんだ」

「……はっはっは!」

 言葉を理解すると思い切りラレオーは笑う。

「お前が避けられてんのはその言動




02 アステールの願いの話

03 エルピスの絶望と希望の話

04 隣人たるプルーシオンたちの言い伝えの話

05 ラレオーとその家族の生活の話 


06最後かな? ゆめのとちゅう


 果樹の森の中に立っていた。

 これは夢だな、とラレオーは考えると思い切り伸びをした。木漏れ日にやわらかな風が吹いていて、気持ちがよい。大きな欠伸をしたラレオーがいつの間にか舟をこいでしまったのも仕方がないことだろう。

 夢の中で夢を見る。不思議なことだが、ラレオーには特にそう思えなかった。

 ラレオーは夢の中の夢の中でもうたた寝をしていた。大きな木の下で寝ころぶ。草を踏む音がして、顔を上げる。

 逆光に照らされて相手の顔は見えなかった。ただラレオーは相手が誰かわかっていて、静かに視線を向けた。

 強い風が一陣吹いて、相手が何かを問いかけた。ラレオーは服をはたいて立ち上がる。相手はじっとラレオーの姿を観察するように見ていた。特にその視線を気にすることもなく、ラレオーは答える。

「そうだな、うちの末妹にも幸せな世界が欲しいな」

 相変わらず顔は見えないままだが、相手は頷いたようだった。

 満足したように踵を返す背中を、ラレオーは大きく伸びをしながら見送った。


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不老不死の林檎を求める人々のあれこれ。

オチは林檎は幼子に地面に埋められました。

■テラス=ギリシャ語で「奇跡」五歳児幼女。夢の中で黄金の林檎を手にした奇跡の子。しかしそれは埋められ、後に美味な林檎の木になる。

■アステール=ギリシャ語で「星」エルピスの幼馴染で預言者。勘のよい女性。少しぶっきらぼう。

■エルピス=ギリシャ語で「望み・希望」魔術師で錬金術師。研究大好きだけど懐事情の問題でいろんなもの作ってる人。

■ラレオー=ギリシャ語で「鳴る・語る・話す」テラスと同じ孤児院で育った青年。今は院を出て、町の中で御用聞きしてる。院にはよく遊びに行く面倒見の良い兄ちゃん。

■デコマイ=ギリシャ語で「受け入れる」

■プルーシオン=ギリシャ語で「近くに・隣人」異民族のこと。隣人でありながら隣人ではない彼らを指す。


_________________


ここまで作っておいて、なんで作ったかは覚えてるけど、なんでこんな話になったかが覚えてない。残念なことに。

黄金林檎はとりあえず不老不死とかそんなので考えた気がする。そしてそれを皆が欲しがるけどもテラスが応じない。そしてラレオーが夢で願ったからテラスのもとに林檎が送られたという話。ラレオーがあったのは多分神様。

正直めちゃくちゃ忘れている。

誰か補完してくれ。マジで忘れている。

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