第27話 依頼

 久々のカレーを食べたあとは、恒例の除霊だ。

今回はとある豪邸からの依頼だった。

 実は、キシはレイの為にと除霊を依頼としてすることは出来ないだろうかと、受付嬢に相談したのだ。

さすがに受付嬢が除霊依頼を作るということは出来ないので、わざわざギルドマスターのところまで案内してくれたのだ。


「君が噂になっている新人くんだね。僕はこのギルドのマスター、ライースという」


「俺はカゲヤマ・キシと言います。マスターにご相談があって参りました」


 ライースはキシが思っていたよりかなり若かった。

金髪で黄色い瞳、身長もかなり高い。


「じゃあ、話に入る前に。キシくんの歳は?」


「18です」


「僕より若いんだね。ちなみに僕は22だよ」


「えっ22歳なんですか? その歳でギルドマスターやってるのか……」


「よく言われるよ」


 ライースは微笑すると、キシに椅子に座るよう促す。


「さて、じゃあキシくんの話を聞くとしよう」


「では――――」


 キシはまずレイのことを話し始め、その後除霊のことを話した。

キシはもしかしたら亡霊が原因で生活に困っている人々がいるかもしれないと考えたのだ。

 もしこれを依頼にすることが出来れば、報酬金を受け取ることができる。

そしてそれはギルドにもレイにも利益があるということだ。

 事前にレイに提案したが、最初は躊躇していた。

あくまで自分の趣味だという理由で。

 しかしキシは、


「レイ。これは人の役に立てることができるんだぞ?」


 人の役に立てる、その言葉にピクリと反応するレイ。

レイは役に立つという言葉に弱かった。

勢いよく椅子から立ち上がると、


「それなら……わたしやる!」


 その目はやる気に満ちていた。


「その意気だ!」


 キシは親指を突き立て、


「じゃあ早速ギルドに相談してくるよ」


 といって颯爽と宿舎を出ていったのだ。


「なるほど……除霊魔法という聞いたことの無い魔法を使える少女か……実に興味深いな」


 ライースは顎に手を当てた。

確かに、たまにビダヤの住民から不可思議な話が持ち込まれることがある。

 勝手に物が動いたとか、誰もいないはずなのに物音がするなど……。

ライース自身もこの事例は正直信じてはいなかった。

キシが言ってることだって嘘かもしれない。

 しかしキシはある日突然現れ、あの有名なエル・オーウェルさえ圧倒した経験がある。

 そして今は高難易度の依頼を易々とこなしまた、駆け出し冒険者や低ランクの冒険者がするような依頼も多く受けることでも有名で、広い年層の冒険者から信頼されている。

 キシが嘘を言ってるようには見えなかった。


「もし信じて頂けないのなら、実際に見せて差し上げましょうか?」


「えっ?」


「その方が信用できますでしょう? 百聞は一見にしかず、ですよ」


「どういう意味だ?」


 しまったとキシは思わず口を抑えた。

ここは日本ではないので、伝わらない言葉もたくさんある。

特にことわざは全くと言っていいほど通じない。


「と、とにかく話だけ聞くより実際に見てみた方がいいってことですよ」


「ふむ……分かった。では、わたしとギルドにいる優秀な魔法鑑定の者を連れて、少女に会ってみるとしよう」


「有難うございます!」


「場所と時間の指定は君たちに任せるとしよう」


「なら明日の夜中、中央の広場で集合でも良いですか?」


「構わないよ」


 キシはライースと握手を交わすと、ついでに依頼も受けた。

 今回選んだのは清掃依頼。

空き家の状態が酷く、今にも崩れそうなので片付けて欲しいというものだった。


「あ、やっと終わったんだね」


 ギルドから出ると、そこには何故かレイがいた。


「レイか、どうしたんだ? こんなところに来て……」


「その、わたしも冒険者登録しようかと思って……」


「えっ、レイが?」


「うん、ダメ?」


「ダメじゃないけど……。急にどうしたんだ?」


「キシってビダヤで有名な冒険者なんでしょ?」


「えっと、まあそうかな?」


「わたし、もっと色んなこと知りたいの」


「―――――」


「わたしは自分の失われた記憶を取り戻したい。そして、もっとキシのことを知りたいの!」


「―――――覚悟は出来たんだな?」


「うん!」


 レイは硬い決断をした目をしていた。

この子は日に日に変化していることを実感させられた瞬間でもあった。

思わず熱いものが込み上げてきた。


「キシ?」


「レイは本当に頑張り屋さんだな。泣きそうになるぜ」


「―――――?」


「分かった。俺も一緒に行ってあげるよ」


「本当? やった!」


 キシはレイを連れて、再び受付へと向かった。

いきなり幼い少女を連れてきたキシに受付嬢はジト目だったが、キシは否定して何とか説得することが出来た。


「この子出身が分からないんですけど大丈夫ですかね?」


「大丈夫ですよ。冒険者は元々孤児だった人も多いので出身が分からない人も多いんですよ」


「なるほど、そうでしたか」


「じゃあ早速カードを発行しますね」


 受付嬢は白紙の冒険者カードを取り出し、レイの前に差し出した。


「そのカードに手を3秒間かざしてください。するとあなたのステータスが表示されますよ」


「は、はい」


 レイは恐る恐るカードに手をかざすと、カードが光り出す。

3秒後、冒険者カードに文字が浮き出てきた。


「な、なんだこれ……」


 そこには見たこともないようなことが書かれていた。

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