第23話 絶対に助けると決めたんだ!

 アイ スティアードを食らったキシ。

もう残された時間はない。

さっさとレイをもとに戻さないとキシの命が危うい。


(どうすればいい。考えろ、考えろ……)


 ダラダラとキシの口からは血が流れる。

しかし、キシは落ち着いて解決策を探る。



(―――あれはツノ? そうか!)


 レイの頭にはツノが生えていることに気がついたキシ。

怪しく青白く光る―――それはまさにキシと同じ鬼のツノだった。


(あそこに一発入れば……)


 そうと決めたら、あとは実行するだけ。

しかし、キシは圧倒的に不利だ。

倦怠感に勝たないといけない。


「何が身体の具合が悪いだ。

これに勝たなかったら、レイを助けることが出来ねぇじゃねぇかよ!」


 キシはみんなに知らしめるように大声で叫び、自分に言い聞かせた。

恐らく、次で最後の攻撃になる。

一発で成功させなければ、もうキシの命はない。


「おらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 キシの最後の攻撃が始まった。

全身全霊をかけて、レイに突っ込む。


「あははは!」


 かかってこいとでも言うような笑い声をあげたレイは、瞳孔が細くなり、まるで野獣にでもなったかのような様子を見せる。

 そして、レイもキシに向かってきた。


どごぉぉおぉぉん!!!


 2人の拳が当たると、簡単に人をぶっ飛ばすような、巨大な衝撃波が走る。

 キシはレイの拳が当たったと同時に、反対の手でレイの手を掴む。

レイはキシから手を離そうとするが、なかなか外れない。


「レイ、俺はお前を―――命をかけてでも守ってやるよ!」


「――――っ!」


 一瞬、レイの表情に変化があった。

それはキシの言葉に少し驚いた表情だった。






◇◇◇






「――――ここ、は?」


「き、キシ君! やっと目を覚ましてくれたのね!」


「――――ディアス、さん?」


「そうよ! あぁ、無事で良かったわ!」


 アースィマはボロボロと大粒の涙を流していた。


「あ、そうか。レイと戦ってて、それで―――」


「そうよ。あなたたち運が良かったわ。」


 あのキシとレイの激戦は、キシがレイの鬼の角に強烈な一打を与えたことで、キシの勝利となった。

 だが、アイ スティアードの影響でさらに身体が蝕んでいった。

レイを背中に乗せながら長い道のりを歩いていたが、意識がどんどん薄らいでいき、街の入口で倒れ込んでしまった。


「そこに偶然、冒険者が通ったらしいの。

状態異常があったのはすぐに気づいたらしくて、急いで状態異常回復薬を使って治してくれたのよ」


「そう、ですか―――そうだ!」


 キシは自分のことよりも心配している人物がいる。

アースィマはそれを読み取ると、涙を拭って微笑んだ。


「早くあの子の所へ行ってあげて。隣の部屋にいるわよ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る