第21話 魔法の唱え方

「そういえば―――」


 レイは何か思い出し、キシに話し始めた。


「キシって普段モンスター相手に戦う時、いつも素手なの?」


「ん、そうだな」


「それって―――キシの持っている魔力量が少ないから?」


「……大正解」


「でも鬼の力を持ってるなら、それで補えば良いんじゃないの?」


「それが出来れば苦労はないんだけどな。

確かに身体能力は上がるし、大気中のマナを吸い取りまくる性質はある。

だけど魔法を使うと、次の日頭痛するし、身体が言うことを効かなくなるんだ」


「え―――じゃあ除霊魔法を使った後なら、余計頭痛するとか……」


「あ、いや。除霊魔法は不思議なことに頭痛はないんだ」


 それを聞いて、レイは安堵の溜息を吐いた。

もしかしたら、また迷惑になっているかもしれないと思ったからだ。


「そこまで心配する必要は無いよ」


「なら良かった」


 キシはレイの頭に手を優しく置いた。

レイはキシに元気いっぱいな笑顔を見せた。

それを見たキシは優しく微笑む。


「でもなんで除霊魔法はならなくて、普通の魔法なら頭痛がして、身体が動かなくなるんだろう―――あ」


「何か分かったのか?」


「あくまで予想だけど、魔法詠唱してない?」


「魔法詠唱? 魔法を放つ前に言うやつか?」


「うん、それ言ったあと魔法放ってる?」


「うーん、確かにそうかもな」


「それだよ!」


「どういうことだ?」


「魔法詠唱って言うのはね、魔法を放つために形をイメージさせやすくするためなの。

だけど、魔法詠唱は言葉にも魔力は籠るから、結局は魔力の無駄遣いなんだよね」


「へ、へー」


 この子はどこまで魔法について知っているのか。

毎回、魔法について博識なレイの説明は聞いているが、一体どこでそんな情報を得ているのだろうかとキシの頭の中で無限ループし続ける。


「わたしがキシに教えた除霊魔法のやり方分かるよね?」


「えっと―――印を結んで、その後除霊をするイメージ―――あ、そういう事か!」


「そういうこと!」


 レイはキシにグッドサインを出した。

 魔法詠唱は魔法発動前にも魔力を消費する。

なら言わなければいい。


「放つ魔法の形を想像するだけでいいのか!」


「よく出来ました!」


 レイはキシに盛大な拍手を送った。

そして、キシは何故か自慢げにして高笑いをした。 

 その場のノリと言うやつだ。


「ちょっと試してみるか。場所を移動しよう」


「どこがいいかな……」


「あの草原にするか―――レイは大丈夫か?」


「え、何が?」


「あ、いや、なんかレイにとってあの場所って―――やっぱ違うところにするか」


「大丈夫だよ―――確かにあまりいい所ではないけど、キシと出会った場所でもあるし……」


「――――」


「ある意味、色んな思い入れのある場所だね」


「そう、だよな」


「とりあえず、そんなこと考えても何も無いし、早く行こ!」


「お、おう」


 レイはキシの袖を掴んで、草原の方へ走る。

しかし、心の中では何か突っかかるものがあった。

それをキシは気づかないわけがなかった。




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