第20話 仲間がいることは素晴らしいこと
「――――懐かしいな」
「あぁ、あの日は未だに覚えてるよ。
ランがキシを連れて、久しぶりにみんなでお菓子を食べた時は」
「ランはあの時、どうしても放って置けなかったの。
もっと早く気づけばよかったんだけど、キシって隠すの上手いから」
「なんか自然と身についてしまったんだよな……。ほんとは良くないけど」
「――――」
「でも、あの時話しかけられて、俺は嬉しかった。2人のお陰で、俺は救われたよ。
―――ありがとう」
キシは深々と頭を下げた。
その姿に少し驚いていたランとヒカルだが、
すぐに微笑むと、
「気にするなよ、俺たちは幼馴染同士だ。
お互い助け合う。
そう3人で決めたことだろ?」
「そうよ、ヒカルの言う通りよ」
そう言うとランはヒカルの手の上に、手を添えた。
髪の色や目の色、容姿も若干違うものの、やはりキシがこの世界に来る前と変わらない2人だった。
それを見たキシは俯く。
「キシ? もしかして泣いてるの?」
「な、泣いてねぇよ」
「いや泣いてるなこれは」
「―――うるせぇよ」
◇◇◇
レイがキシの部屋に来たところで、思い出話は一旦切り上げた。
そして数時間後、ランとヒカルは本当にこの宿舎に荷物を持ってやって来た。
「まじで?」
「うん! 一目でこの宿舎いいと思って」
「うんうん」
「また新しい人が来てくれて嬉しいわぁ!」
アースィマは嬉しい反面、少しいやらしい表情をしている。
理由は明確だ。
「まぁ、そりゃあ仲良しカップルさんが加わりますもんねー」
「えぇ」
「「キシ?」」
「あ、ごめん。
この人この宿舎の主なんだけど、その―――そういう事に凄く敏感な人で……」
「もう敏感とかそういう問題じゃないけどね……」
レイとキシは苦笑しながら言った。
アースィマは涎を垂らしながら、酔ったような表情になっていた。
それを見た4人は思わず溜息をつく。
「こんなだらしのない人もいるんですけど、大丈夫ですかね?」
キシはわざと畏まって言った。
一瞬戸惑いを見せた2人だが、ヒカルが口を開いた。
「あぁ、大丈夫。普段は凄くいい人なんだろ?」
「料理作るのも上手いぜ」
「なら決まりね」
ランとヒカルは目を合わせると、
「「ここで暮らすことにするよ」」
「ふふ、2人とも息ぴったりだね」
思わず吹き出してしまったレイ。
それにつられて、他の3人も笑いだした。
キシに、そしてこの宿舎に、また新たな仲間が加わった。
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