第18話 三銃士

 北海道の内陸側の小さな町。

と言っても、国道が通っているため、人、特に車通りが多い。

 そんな街に1人の男子高生がいた。


「―――♪」


 耳にイヤホンを付け、口ずさんでいる。

彼の名前は影山岐志。

目付きが悪いのが特徴の、普通の高校生だ。


「あ、おーい!」


 誰かが呼ぶ声が聞こえた岐志は、後ろを振り返る。

すると、真っ先に駆け寄ってきたのは、金髪でハーフの美少女だった。


「お、ラン。おはよう」


「Goodmorning岐志!」


「めっちゃ発音いい!」


 そして、遅れて身長の高い、ひょろっとした体型の男子高生が2人のもとに来る。


「おはよう岐志」


「おはよう。相変わらず眠たそうな顔だな」


「別に眠いわけじゃないんだけどね……」


 斎藤晃、カネラ蘭。

岐志の幼稚園からの幼馴染である。

 蘭は父親がスペイン人である。

そのため、スペイン語を話すことが出来る。そして、蘭の父親は世界各地を転々としていたため、色々な言語を話すことが出来る。

 ちなみに蘭はフランス語、英語を話すことが出来る。

 3人は家の場所も近いため、小さい頃から良く遊んでいた。

砂遊びをしたり、水遊びをしたり―――。

 しかし、幼馴染でも昔とは違う点。

それは、


「とりま朝っぱらから、イチャつくのやめてくんね?」


「えっ!?」


「What!? ダメなの岐志?」


「なんか腹立つんだよ」


「「―――童帝が言う言葉だ」」


「うっせぇ!」


 そう、蘭と晃は恋人同士なのだ。

岐志の協力があって2人はカップル成立したわけだが、1人だけ恋人がいないボッチ少年は――――。

童帝という言葉に、とても敏感に反応してしまうのだった。


「誰だよ、俺が童帝という言葉に敏感になるとか言ったやつ」


「「知らなーい」」


「絶対お前らだよな?」


「「――――さぁ?」」


「―――――」


 いつもこのような会話から始まる3人だが、普段は仲が良く、放課後は3人の中の誰かの家で遊んだり、休日はゲーム大会、あるいは都会に行って娯楽施設で楽しんだり――いつもこの3人は一緒なのだ。

 しかし、岐志は深い闇を抱えている。

それは、授業が終わり3人で下校している最中に、必ず話すことだ。


「ねぇ岐志。今日どうする?」


「昨日は蘭の家だったから、今日は晃ん家だな」


「分かったわ」


「じゃあ俺お母さんに連絡しておく」


「すまねぇ」


 そう、岐志は自分の家に帰らないで、蘭か晃の家に泊まるのである。

その理由は、岐志の両親である。


「ただいまー」


「お帰りなさい。あ、岐志君遠慮なく上がって」


「すいませんお邪魔します」


「おう、おかえり」


「あ、お父さん帰ってきてたの?」


「あぁ、思ったより早く終わったからな。

岐志君久しぶりだな」


「お久しぶりです祐樹さん」


「ゆっくりしてけよ」


「ありがとうございます」


 岐志はお礼を言うと、そのまま晃と一緒に2階の部屋へ。

荷物を置くと、1階のリビングに戻る。

 テーブルの上には料理が乗っている。


「めっちゃ美味そう!」


「さぁさぁ!いっぱい食べてちょうだいね」


「「「「いただきまーす!」」」」


 ちなみにこの4人、見た目の割には大食い。

晃も、その父の祐樹も、母の茜も、そして岐志も。

 数分もすれば祐樹も、


「ご飯おかわりしよー」


「相変わらず早いですね」


「いっぱい食った方が体にいいからな!」


 そう言うと、祐樹はキッチンへ向かい、白飯を大きな茶碗に装った。

 みんなが食べ終わるまで、笑い声や話し声が絶えることはなかった。

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