第12話 少女の仕事の手伝い3

 部屋から出ようと、キシはレイを連れて扉を開けると、アースィマがいた。


「昨晩はお楽しみだったようですね」


 とニヤニヤしながら言った。

レイとキシは顔を真っ赤にしながら慌てて手を振って否定したが、なかなか信じてくれなかったという。




◇◇◇




 キシたちは前回訪れた墓場へ来ている。

除霊魔法をレイから教えてもらうためである。


「じゃあまずは、印の結び方を教えるね」


 キシは説明を受けながら、レイの指の動きを真似る。

最初に見たレイの除霊魔法の印象が強すぎたせいか、印の結び方も難しいかと思っていたが、案外簡単だった。

 左手の甲を上に向け、人差し指と中指を立て、残りの指は握る。

次に、人差し指の右横を上に向け、胸の辺りまで持ってくる。

そして、右手の人差し指と小指を、左手の人差し指と小指で握り、残りの指は手のひらの上で握る。

これで完成だ。


「そして、頭の中でここにいる亡霊達を天に返してあげる感じのイメージを持って発動させれば魔法陣を展開させられるんだけど……

キシの場合は持ってる魔力量が少なすぎて発動できないから……」


 とても丁寧で分かりやすい説明だが、最後の説明で軽く傷ついている人物がいるのはここだけの話だ。


「まずは鬼化してからだね」


「わかった」


 キシは鬼化を発動させる。

鬼化は大気中のマナを吸収しまくる特性があるため、それを利用して魔力を補う。


「じゃあ、早速やってみよ!」


「オッケー!」


 レイとキシは指で印を結び、頭の中でイメージする。

すると、数m先に魔法陣ができ始め、徐々に広がり始める。


(おぉ、すげぇ!)


 キシは初めてなのでゆっくりと魔法陣が広がっているが、レイはかなりのスピードで広がっていく。

 これで見たのは2度目だが、やはり凄いと思ってしまうのだった。




◇◇◇




 10分後、2人は寝っ転がっていた。

キシが鬼化を使っても魔力の供給が微妙に追いつかない状態だったので、除霊魔法はかなり魔力を消費することが分かった。

 あの時、レイが汗をかいて肩で息をしながら、大の字になって倒れたのも納得出来た。


「それでも、よくあの時20分も続けられるのが凄いと思うわ」


「なんか褒められると照れちゃうよ……

でも、ありがとう」


「たぶんレイはその事をそうでも無いって思っていると思うけど、絶対誇りに思った方が良いよ」


「うーん、自分はキシの言う通りそうでも無いことだと思ってるけど、キシがそこまで言うんだったらちょっとだけ誇りに思ってもいいのかな……」


 レイは微笑んでいたが、まだ納得してないような顔をしていた。

レイは他の魔法を習得しておらず、今まで除霊魔法しか使ってこなかったからだ。

納得できないのも無理はない。


「さてと、そろそろ宿舎へ戻ろうか。

レイは動けるか?」


「ごめん動けないや……

またおぶらせて貰ってもいい?」


「お易い御用だ!」


 そう言うとキシは、レイを背中に乗せるとゆっくり歩き出した。

 しかし、実際はレイは歩くことが出来たのだ。

それでも歩かずにキシにおぶらせてもらった理由……。

それは、キシの背中は温かくて、とても安心するからである。

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