第11話 記憶喪失の少女
「記憶がない?」
キシは聞き間違いだと思い、再度聞いてみたが、レイは首を縦に振る。
「そう、か……」
キシは手を顎に当てる。
この問題を解決したくてもレイの記憶が無いのなら絶対に解決出来ない。
「――――レイはさ」
キシはしばらく考えた挙げ句、最初に出てきた疑問を投げかけることに。
「自分の記憶を取り戻したいって一回でも思ったことある?」
「取り戻したいよ。でも……」
レイは視線を下に向けると、
「取り戻したくても過去を知るのが怖い自分もいて、今は怖いっていう方が強い状態」
「そうか……」
声が震わせながら答えを言ったレイ。
前髪で目が見えなくなるほど俯いてしまっていることから、過去を知るのは怖がっていることは本当のようだ。
過去を知ることは楽しかった思い出もあれば、逆に自分が知りたくなかった事実を知ることになる。
それは、自分の過去を知った瞬間、
自分の存在を自分で壊してしまうのだ。
それは、レイも分かっていた。
自分の過去は知りたくても、知りたくない事実を知ってしまったら……。
「……焦る必要は無いと思う」
レイははっとして顔を上げる。
「まだ覚悟ができていない時に過去を知るのは良くないとは俺でも分かる。
だから、レイは過去を知る覚悟が出来たら俺に言って欲しい。
俺も付き合ってあげるからさ。
1人でやるよりは誰かがそばに居た方が良いだろ?」
そう言うとキシはレイの頭に手をのせ、優しく撫でてあげた。
「――――ありがとう。
まだわたしは過去を知るのが怖い。
だから、時間がかかるかもしれないけど過去を知る覚悟が出来たら絶対言うから。」
1人よりは誰かがいた方が気持ち的にも楽だ。
レイは安堵の微笑みを見せた。
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